247話 勇者の力
強欲の魔王の子と分断された嫉妬の魔王。攻撃手段がない今、気を付けないといけないのは謎のデバフ能力だね。
近づくだけで力を失うあの攻撃を防ぐことは難しい。でも二人で同時に攻めればそれもきっと防げるはず。
「はあああああッ!」
勇王顕現をした状態で嫉妬の魔王に斬りかかる。するとさっきと同じように魔王はこちらへと手をかざし、その力を発揮しようとする。
でも今回は私だけではない。私の後方に控えていたガウシアが世界樹の力を発揮し、私の前に盾を作り出す。
そして何かが弾ける音が聞こえる。
「ちっ、やはり世界樹の力が邪魔をしてくるか」
なるほど。世界樹の力の前では邪悪な魔王の力は無効化されるんだね。だったら……。
「勝てそうかい? それはどうだろうね」
「なっ……」
私の思考を表情から読み取ったのか嫉妬の魔王がニヤリと笑みを浮かべてそう告げる。
少し驚きながらも私は構わず剣を振りぬく。
しかしその剣の振りかざした先から返ってきたのはあまりにも手応えのないものであった。
「妾の力は相手の力を分離させること。だけどね、時間さえかければ奪った相手の力を使って妾自身を強化することもできる。魔神教団を設立し、能力強度を集めさせたのはそれも理由だったのだ。まあその代わり魔王の力と競合するから妾の場合、他の能力を得ることは出来なかったんだけどね」
地煙の中から現れたのは私の剣を軽々と受け止めている嫉妬の魔王の姿。そして次の瞬間には私の視界はぐるりと回転する風景へと変化していた。
それが私の体が吹き飛ばされたのだと気が付くのにそう時間は要しなかった。
「カリンさんッ!」
凄まじい衝撃音と共に私の体が敵を二手に分断した世界樹の根へとめり込むのを感じる。
普段の私だったら空中で体をひねって衝撃を和らげるところだったけど、それも出来なかった。
「……強い」
嫉妬の魔王は戦闘向きの力じゃないんじゃなかったっけ? こんなのあの時の暴食の魔王と戦った時と同じ……いやそれよりも遥かに強いかも。
「ありがと、ガウシア」
周囲の世界樹が私の体を癒してくれるのが分かる。そしてめり込んだ私の体が自動的に運ばれていき、外へと放り出される。
「カリンさん。奴の力は何なのでしょう? 能力を体から一時的に引きはがす能力だと伺っていましたが」
「私もそうだとばかり思っていたんだけど、どうやら時間をかければ自分の身体能力も強化できるみたい。正直、膂力だけで言えば魔王の中でも一番かも」
多分防御力も魔王の中で一番なのかな? 私の勇王の一撃が軽々と片手で防がれた時点でそれはわかり切ってる。
あとはどう倒すかだけれど……。
「ガウシア。今の私の力じゃあいつの防御を崩せない」
「カリンさんでも無理なのですか!? でしたら私ならもっと無理かもです」
「いや、ガウシアよ。そうでもないぞ」
「あれ? いつの間に居たのですか? 世界樹ちゃん」
「ふざけるでない。我はずっとお前の肩の上におったわい! ……とそんな事はどうでも良い」
そう言うとガウシアの肩の上に乗っている鳥の姿をしている世界樹は私の方を見てくる。
「其方の『勇者』の力もまた我の力で強化できる。以前の勇者にはその儀式があったが、最近はしていなかった故、伝わっていないようだが」
「強化……でもそれって時間がかかるんじゃ」
「うむ。そのためにガウシアがおる」
「へ? 私ですか?」
突然の大役を任されそうになったガウシアが素っ頓狂な声を上げる。
「私の力で果たして魔王を止めることができるでしょうか?」
「無論、可能だ。倒すことは出来ずとも其方の聖なる力は邪悪なる魔王の力を打ち消すことができる。流石に聖女ほどの聖なる力ではないが、少なくとも時間稼ぎは出来るだろう」
世界樹の力を操っているはずなのに聖女ほどじゃないんだ。いや違うか。聖女の方が異常なんだ。
「でも私の力を強化って具体的にどうするの? 時間もないけど」
「大丈夫だ。聖女と違って勇者は強化に時間がかからない。既に力に耐えうる体は出来上がっているからな。ただし、力を馴染ませるために少し苦労するかもしれんが」
なるほどね。リアみたいに体を作り上げるところからする訳じゃないから時間がかかるかどうかは私次第って訳か。
「ガウシア、頼める?」
「もちろんですとも。私の任は世界樹の守り人。守りに関してはドンとこいです!」
誇らしげに胸を張るガウシアを見て私はにこりと微笑む。そして鳥に扮した世界樹の方へと眼差しを向ける。
「あなたにも。頼んでもいい?」
「無論。我の力はそのためにあるのだからな」
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