245話 大いなる存在
暴食の魔王の時もそうだった。攻撃を加えれば加えるほどその存在は強大化していく。
「フハハハハッ! 全身から漲ってくるぞ! 貴様の力がな!」
体は傷だらけだ。しかしてその態度は不遜なまま。暴食の魔王の時は魔王の中ではそもそも防御力がそこまで高くなかったのに対してサタンは魔王の中でも最強格の防御力を誇る。
多分、吸収できる容量も桁違いに多いんだろうな。
「あれほどの力を受けてもなお立ち上がるか」
「あれほど? いや今のはただの小手調べだ」
どれくらいの力を吸収できるのかを知っておきたかったというのと最初に力を与えすぎるのは良くないと判断しての一撃だった。
まあ言ってしまえば俺の中じゃ抑えた方ってことだ。
「派手に見えるのは単純に能力のせいだな。破壊の力は触れただけで能力強度の小さい物質なんかは消滅させるし」
「おお……特異点というのは素晴らしい能力を持っているのだな」
特異点? そう言えば前も言われた気がするな。
「クロノ」
「はいリア様。どうかなさいましたか?」
リア様の呼びかけに答え、振り返るとそこには妙に顔を曇らせた我が主人の顔があった。一体全体どうなさったっていうんだ!?
魔王なんてどうでもいいくらいの緊急事態じゃないか!
「あいつには私の攻撃があまり効かないみたい。だから私が本体を攻撃するよりもあなたが攻撃した方が良いと思うの」
「なるほどそういう事ですか。それならば問題ありません。リア様はまだご自身の真の力にお気付きになられていないだけですよ」
リア様はまだ気付いていない。麗しく美しいこのお方の中には途轍もなく大きな力が宿っているという事を。
力に目覚めたばかりだから使いこなせていないだけだ。
根拠だって? 俺ですらリア様の能力強度を測り切れていないって言ったら分かるか?
「リア様。私を信じてください。貴方が力に目覚めるまで私が全力でお守りいたしますから」
「クロノ……ありがとう。柄にもなく弱音を吐いちゃった」
立ち直りが早い点もまたリア様の美徳の一つだ。それは決して軽率な判断という訳ではなくちゃんと理知的な考えを持って決断なさっているのだ。それに――
「お主ら。ここが戦場であることを忘れてはおらぬか?」
「うん? 忘れてないぞ」
何を言っているのかこの龍は。普通、敵を目の前にして戦場であることを忘れるはずがないじゃないか――なんかさっき魔王なんてどうでもいいとか言ってた気はするけど。
「お姫様を慰めている所悪いがこれで終いだ」
唐突に発生する巨大な力。俺の視界に入ったのはとんでもなく大きな黒い炎の球体。先程までの大きさとはまるで違う。
それがおおよそ5個くらいは上空に並んでいる。その熱気と引力の凄まじさは俺が今立っている位置からでもヒシヒシと感じる。
「これこそが憤怒の力と暴食の力を掛け合わせた最強の力! 我の力に平伏すが良い! 太陽の墜落!」
今までの吸収した力を全部注ぎ込んだか。元々が攻撃特化の魔王だけあったがゆえにあれを受ければ一溜まりも無いだろう。
間違いなく軽く国家一つは消し飛ぶくらいだろうしな。
「あ、あれほどの力を一体どうせよと言うのか」
「何だ、龍王でも怖気付くことあんだな」
「大抵は大丈夫だが、限度ってモンがあるだろう!」
限度か。まあ確かに目の前の魔王の力は人類の脅威となりうるほどに凄まじい力を持っている。
だが、魔神と戦ったことのある俺から言わせてみればこの程度はまだまだ序の口だ。
そしてそれは俺の隣に立つ御仁にとっても。
「リア様」
「大丈夫よ。もう弱音は吐かないから」
リア様がそう仰った瞬間、俺は地面を蹴り、サタンが放った巨大な太陽に向かって飛び上がる。
「破壊の災禍」
そうして先程とは違い、俺の持てる力全てをかけて破壊の力を放つ。最大出力でこの力を使えば体に支障が出る。今も腕に鈍い痛みを感じる。
俺が放った一閃の破壊の力と禍々しく強大な力を抱え込む太陽が落ちてきたのではないかと錯覚させるほどの巨大なエネルギーの塊が衝突した瞬間、世界から音が消えた。
いや、あまりの衝撃音で脳みそによる処理が追い付いていないだけかもしれない。
とにかくド派手に衝突した二つの力によって生み出された衝撃波で埋め尽くされた空中を一筋の美しい光が横断していく。
リア様だ。
「小娘如きがこの戦いに首を突っ込むでない!」
「悪かったわね、小娘で。でもその小娘の一撃を耐えられなかったらみっともないわよ?」
ヘルメラの剣を天高く掲げる。その剣先にはまさしく聖女の光が湛えられていた。
「聖覇光!」
「悪食!」
暴食の力と聖なる力が衝突する……いや違うな。
暴食の力はリア様の力に触れた瞬間、崩壊していくように見える。
真の聖女の力は魔の力を打ち消す力があるのか?
そういえば以前、魔物の姿になってしまった子供たちを元に戻していたが、あれは聖女の力の一端だったのか。
力だけで言えばサタンの方が上だろう。しかしそれを打ち払うほどの大きな聖の力が補っている。さっきまでは吸収されてたのに……やっぱりうちのご主人様は天才なのかもしれない。
「な、何だこの力は! 暴食の力が効かぬだと!?」
「はあああ!」
聖なる力が触れるたびにサタンの体を蝕んでいく。そして結果的にリア様が放った聖なる光はサタンの全身を飲み込むのであった。
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