236話 王女VS魔王
ゼルン王国での魔神族との戦いは激化の一途を辿っていった。その発端となっているのはやはり二体の魔王。
怠惰の魔王と強欲の魔王であろう。
そして対するゼルン王国側は世界樹の力を存分に与えられた番人、ガウシア・ド・ゼルンがその強大な二つの力を一手に戦っているのであった。
「ねえ、あなたの能力、コピーできない。何で? どうして?」
「はああああっ!」
強欲の魔王に降り注ぐ無数の聖なる樹木。
しかし、その動きはあるところで緩慢となり、容易に回避されてしまう。
「僕の力はスロウ。君の能力がどんなに強力でも遅くなってしまえば関係ないよね?」
そう言って怠惰の魔王はゆっくりと上空へ昇り、右手を天に掲げる。
「遅延を生む世界」
怠惰の魔王を中心とした半透明な球体が戦場を覆っていく。そしてその中に居るゼルン王国側の戦士だけ動きが遅くなってしまう。
対する魔神族側は動きに遅延が生じることはない。軽々とゼルン王国の戦士たちを葬っていく。
そして驚異的なことに怠惰の魔王が作り出したそれは戦場の半分近くを覆っているというところにある。
「この世界に居る任意の対象にだけ遅延効果をかけることが出来る。ねえ、どうだい? 全然身動きが出来ない今の気持ちは?」
世界樹の力を扱うガウシアといえども例外なく遅延の力を受け、自由に身動きが出来ないままでいた。
あの時、怠惰の力を受けてもなお動けていたクロノはその力をそもそも破壊していたがために動けていたのである。
それならば能力強度の高さで突破すれば良い訳だが、そのような荒業が出来るのは元々の能力強度がずば抜けて高い上にその能力強度を1000倍にできる勇者とそして規格外な者だけである。
(どうして? 動いて動いて! 皆さんを助けるのが王女である私の役目なんですよ!)
ガウシアの焦る気持ちとは裏腹に体は言う事を聞かず緩慢な動きを保っている。
「はぁぁぁぁぁ、聞いてみたいなぁ! あれだけ可愛がっていたこの可愛らしい騎士さんを目の前であまりにも残忍に殺されたらあなたはどんな嘆きを見せてくれるのかなぁ?」
同じくスロウの力を受けているヘルミーネの目の前に降り立つと強欲の魔王はそう言ってちらりとガウシアの方を向く。
しかし、それに対してガウシアは思うままに言葉を発することも出来ず、ただただ睨みつけることしか出来ない。
その間にもガウシアの操る神聖な樹木がヘルミーネを、そして他の騎士を守りに行こうとするもそれはあまりにも遅すぎるのであった。
「じゃあねぇ、可愛らしい騎士さん」
そう言って強欲の魔王がヘルミーネの首元に目掛けて落ちていた剣を拾って突き刺そうと振りかざす。
ガウシアへ見せつけるようにして。
幼い頃から慕ってくれていた一番の親友。
それが失われそうになった時、ガウシアの体内で自然と力が込みあがってくるのが分かる。
そして次の瞬間。強欲の魔王が振りかざしていた剣は聖なる木の枝によって弾き飛ばされるのであった。
「へえ、驚いたな。まさかこの短時間の間にこの遅延世界で動けるようになるとは」
「……ちっ、つまんないの」
魔王達がそう言う中、ガウシアは一人自分の手をグー、パーしてちゃんと動けることを確かめる。
驚くことに怠惰の魔王が作り出した世界の中でガウシアは自由に動けるようになっていたのである。
「遅くなってすまなかったのぅ、ガウシア」
「ガウシア、お待たせ。私も戦えるわ」
そして姿を現したのは聖女となってリーンフィリアと鳥の姿である世界樹であった。
世界樹がガウシアの肩に止まると、更にガウシアの力が高まっていくのが分かる。
「リアさん、それに世界樹ちゃんも……ありがとうございます」
「ぅおいっ! 我は荘厳な世界樹の化身だぞ? まあ良いけど」
「感謝するのはまだ早いわよ、ガウシア。二人であの魔王をやっつけてやりましょう」
そう言ってリーンフィリアが透明な剣を天空へと掲げた次の瞬間。
凄まじい勢いで光線が飛んでいき戦場を覆っていた半透明な球体をすぐさま消滅させる。
「な、何て力だ。まさか僕の遅延世界が壊されるとは」
「むぅ、生意気。殺したい」
こうしてゼルン王国側に新たなる協力者が現れ、戦いは更に激化していくのであった。
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