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227話 思惑

「「魔神様、お待ちしておりました」」


 未だ宙に浮かび、眠たげに欠伸をする三対の黒い翼を生やした少年の前に二柱の魔王が首を垂れる。

 魔神と呼ばれた少年はゆっくりとそちらへ目を向けると、ニッコリと微笑む。


「久しぶりだね、僕の子供達」


 そう声を掛けられた二柱の魔王は喜びのあまり涙ぐむ。ああ、やっと主君と再会できたのだと。

 普段はいがみ合っている二柱の魔王も魔神の前では大人しいものであった。


「でも、良くないね」

 

 ただ喜んだのも束の間、魔神から途轍もなく冷たい空気が漂ってくる。

 まるでそこだけ気温が急激に下がったかのような温度感。

 それは二柱の魔王が身震いをする事も許されないほどの濃密な威圧であった。

 超常の存在を以てしても隔絶たる存在感を放つ魔神は恐怖で動けなくなっている魔王を見下ろし冷たい声音のまま続ける。


「サタン、君の中からあの子の力を感じるよ。僕言ったよね? 子供達同士で争うのは駄目だって」


 最初の言葉と打って変わったあまりにも冷え切った言葉。

 それは二柱の魔王から言い訳どころか謝罪する声すらも奪い去る。


 そしてそれは静かな怒りを向けられている魔王だけでなく、周囲に居る強欲の魔王の子、エルザードの面々にすら大粒の汗を流させる。


「いったんこの話はまた後でにしようか。今はお客さんも居るみたいだし」


 そう言うと魔神は離れた場所で唯一、仁王立ちで力強く睨み付けているフィーの方を見やる。


「……変わらないね」


「あなたもね」


 そんな会話が為された次の瞬間、その場からフィー、そして赤王の姿すらも消え去る。

 

 魔神はそれに驚く事もなくその場から視線を逸らすと上空に向けて手を向ける。


「さあ、子供達。始めるよ。僕らだけの世界を作るために」


 その瞬間、魔神の少年の体から凄まじい力が溢れ出す。

 大地に新たな生命が生まれていく。一対の翼を生やす人型の者、魔獣型の者、その種類は千差万別だ。


 そして未だなお首を垂れ続けている魔王達の隣に新たなる二対の翼を生やした生命体が五体生まれる。


「今日から君たち七人が僕の長子だ。特に君達二人は一番先輩なんだ。もう他の子をいじめちゃ駄目だよ」


「「はいっ!」」


 次から次へと魔神から全方位に放出された漆黒の力の中から生命体、人間達から魔神族達と呼ばれた異形達が進軍を始める。

 目指す場所はもちろんドリューゲンを超えた先にある人間界。


「レヴィアタン、サタン。僕はこの世界を滅ぼして新しい世界を作り出す準備をする。その間、守っておいて欲しいんだ」


「「御意」」


 そう言うと命令された二柱の魔王が力を発動させ、魔神を中心として異様な気配を放つ宮殿が立ち上がる。

 レヴィがアンディの能力、『聖王』の力、そして攫ったヒルトン・ドゥ・グランミリタールの能力『結晶』の力を分析する事で生み出した結界術であった。


 宮殿の中央に位置する祭壇の上で魔神が静かに力を練り上げ始める。

 やわな結界術であればそれだけで綻びが生まれるだろう力の奔流が宮殿内部で暴れ始める。

 そして二柱の魔王を除く魔王達が飛び去っていく。


「魔神様が世界を滅ぼす準備に入られた! 皆の者! 今一度、憎き人間共を滅ぼす時が来たぞ!」





「お館様。我らはどう致しましょう?」


 目の前に聳え立つ魔神の宮殿を前にしてただ沈黙を保っていたシノ・エルザード。それに話しかけたのは竜印の世代の一人でもあるエヴァン・アイザックである。

 かつて救国の英雄と呼ばれ貴ばれた竜印の世代も残すところアンディ・ベルトーニとエヴァン・アイザックの二人しか当主の下に居ないのだが、それはシノにとってどうでも良いことであった。


 何故なら目の前に『魔神』と呼ばれる超常的な存在が居るからである。


「フフフ、フハハハハハッ!!!! 素晴らしい! 素晴らしい力だ! 黒の執行者など目ではない! これ程の力をいずれ操れるようになるかと思えば心が躍るぞっ!!!」


「お、お館様?」


 普段、一切の感情を見せないシノの感情剥き出しの咆哮はエルザードの兵士たちにとって異常な光景なのだ。


「何をするかだと? 奴等は人間を殺し尽くすつもりであろう? それは我々も含まれている。ならばすることは一つ。復活した魔神を手中に収め、私が、いや、我こそがこの世界を支配するのだ」


 周囲が困惑の表情を見せる中で当主はただ一人高笑いをしながら大地を踏みしめていく。その姿はここまで付き従ってきた者ですら狂気を覚える程であった。

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