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210話 本番直前

 お化け屋敷を後にしてから、二年の教室へと向かおうとしていると、目の前の集団から視線を感じる。


 今までは美少女コンテストで優勝したリア様や、勇者として有名なカリンへの視線だったのが、どういうわけか今回は俺に向いている気がする。


「あの〜、すみません。クロノさん、ですよね?」


 おっと、視線だけではなくめちゃくちゃ話しかけられたんだが。


 そういえばと思ってチラッと近くの教室を見ると、一年Eクラスと書かれている。なるほど、そういうことだな。


「人違いではないでしょうか? それでは」


「そうですよ。この人がクロノです」


「リア様!?」


 華麗に流して立ち去ろうとすると、リア様が肯定してしまう。その顔はどこか誇らしげであった。


「うわ〜、やっぱりそうですよね! 握手してもらっても良いですか?」


「えっ、あっはい」


 こういうのが恥ずかしいからスルーしようと思ったんだけどな。そう思いながら握手を交わす。


「あっ、あれクロノ様じゃない?」


「ホントだ!」


 その時、1年Eクラスの教室から出てきた少女達の集団が見えた事で逃亡を決意した俺はリア様とカリンの手を取る。


「クロノ?」


「ここは危険です。逃げましょう」


 そうしてその場から脱出するのであった。




 ♢




「はあ、思わぬ所に罠があったな」


 まさか付き人である俺が追われることになるとは人生とはよく分からないものである。


「まあ普通にクロノって選考試合でも優勝してるんだし、闘神祭でもあれだけ活躍してるんだから目立ってなかった今までがおかしいだけだけどね」


「そうか?」


 近くにリア様にカリン、ライカにガウシアというやたらと強い輝きを放っている人ばかりいるから、ただの使用人である俺が目立たないのは当たり前だと思うんだが。


 それに勝ってはいるがそこまで派手な力の使い方をしていないから、なんか地味だけど強い奴みたいな扱いを受けている気がする。


「もっと自信を持って良いのよ。クロノは凄いんだからさっきも堂々と皆と握手してあげれば良かったのよ」


「さっきのは恥ずかしいので嫌です」


「え〜、せっかくクロノが注目されて嬉しかったのに」


 嬉しいことを言ってくれる。だが、慣れていない上に横に主が居ながら俺だけがあの扱いを受けるというのは納得がいかないのである。


「とりあえず次のとこ行こっか」


 そんなカリンの言葉で俺達は次の目的地へと向かう。それから色々な所を周って、学園祭2日目を終えるのであった。



 ♢



 学園祭三日目。いよいよ、メルディン王立学園の一大イベントの一つである学園祭も終わりが近づいてきた。生徒たちの中にはそれを悲しむ声が多い。ここ一年Sクラスでも祭りの終わりを寂しがる声が聞こえてくる。それと同時に、自分たちの出番が近づいてきたことへの高揚感も伝わってくる。


 まさかの自分たちがこの学園祭の締めを担っているのだ。より一層気が引き締まるというものである。


 朝から集まったメンバーたちは抜かりなく最終確認をしていく。講堂を一つ貸し切った状態でリハーサルも行う。いつ始まっても良いと言わんばかりの万端の状態でその時を待っていた。


「クロノ。少し良いかい?」


「いいぞ。どうした?」


「ちょっと渡したいものがあってさ」


「? 分かった」


 衣装担当の生徒たちに魔神の衣装を着せられていた俺のもとにクリスが来てそう言う。やってほしいことって何なんだろう? 不思議に思いながら衣装担当の生徒たちから離れてクリスのもとへ向かう。


「それで渡したいものって?」


「そのさクロノって最後魔神の封印を再現するためにジオンが氷漬けにするだろ?」


「ああ。滅茶苦茶、不服だけどな」


 一応、ジオンの繊細な能力さばきによってかなりの空間を保ちながら薄い氷の膜でドーム状の氷を作ることで封印を演出するらしいが、中は結構寒い。本当に氷漬けにされるわけではなく、中はかまくらみたいになるところまだマシかもしれない。


 こいつだったらやりかねないからな。


「ハハッ、申し訳ないね。それで一応、本当に凍らされないように私の能力が込められたペンダントを渡しておくからもしもの時はこれを使ってくれ。君の能力だと派手に氷が飛び散ってしまうだろうからさ」


 そう言って青色の宝石が付いたペンダントを手渡される。


「一応、魔神がつけてても違和感がないと思うから。一番つらい役だとは思うけど、よろしくね」


「分かった」


 最悪、体の周りに破壊の力を纏わせようとも思っていたがこれがあるなら要らないな。破壊の力を纏っているとふとした瞬間にセットを破壊しかねないから少し心配だったんだよな。


 そう思っていると皆が集まっている方からやたらと色めきだった声が上がる。俺もそちらを見て瞬時にその理由を悟る。


「ああ。やはりリア様はいつ見てもきれいだ」


 そこには女神と見まがうほどの美貌を持った王女姿のリア様がいたのであった。

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