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20話 ライカの話

 日は完全に落ちており、辺りは真っ暗である。寮の門限は既に過ぎているため、窓から出てきたのだが、いったいこんな時間に何を話すというのだろうか。


 ライカは歩いていくと、寮から少し離れた所にあるベンチに腰掛ける。


 俺もライカに倣ってそのベンチに腰掛ける。


「それで話って何だ?」


 外灯に照らされて、ただでさえ白い肌がより白く見えるライカの横顔を見つめる。


「ずっと不思議に思ってた」


「何をだ?」


「会った時から力を隠してるとこ」


「へえ」


 あの時に力を隠していることすら見抜いていたのか。これは驚きだな。


「それで今日聞いた。どうして隠しているのって」


「ああ、そういえばそんなこと聞いてきたな」


 あの時は突然何を言い出すのかと思った。俺からしても非常に答えづらいものであったからだ。


「その時、本気で隠すつもりは無いけど事情があるってクロノは言ってた。それはつまりある程度までは実力を見せても良いけどそれ以上は見せたくないってこと。合ってる?」


「ああ、合ってる」


 ゆっくりと、まるで何かを探っているかのように話していく。ライカの意図が全く分からないまま、話を聞いていく。


 本当の実力が見たいとでも言うつもりだろうか? そうだとしたら部屋の中ではできないから外に出てきたという理由も納得できる。


「本当の実力は見せたくない、それが正体が知られたくないからだとするなら辻褄は合う。それにあの時、クロノが消えた後、黒の執行者が現れた」


「何が言いたい?」


 意を決したようにライカがこちらの目を真剣に見つめる。


「単刀直入に聞く。クロノが“黒の執行者”?」



 ♢



「なんだか浮かない顔をしてるわね。何かあったの?」


 ライカと話した翌日の朝、俺の様子が変なことにいち早く気付いたリア様が心配そうに聞いてくる。


「いえ、今朝凄く嫌な夢を見ただけです」


 嘘だ。本当は昨日のライカの発言が気になっていただけだ。結局あの後、何とか言い訳をして逃げてきたが、ごまかせているかどうかは不明だ。まさか、ライカがあんなに鋭い奴だったとは思わなかった。


 油断していたな。


「どんな夢だったの?」


 リア様が聞いてくるが、そんな夢は見ていないのでどう答えるか考える。あっ、良いことを思いついた。


「確かあれは私が幼い頃でした。一度だけあるものを見たことがあるのです」


「あるものって?」


 小首をかしげて聞いてくるリア様に俺は薄目を開けてボソリと口にする。


「幽霊」


「いや、やっぱりその話良い! 聞かない!」


 よし、作戦成功だ。


 リア様は心霊系の話が苦手なので深堀りされないということを見越してのこの発言であった。


「そうですか。仕方ないですね。この話はやめておきます」


「そうよ。別の何か楽しい話にしましょ」


 それから俺とリア様は闘神祭の話や学園でのことなんかを話し合いながら登校した。



 ♢



 教室に着くと、既にガウシアとライカが先に来ており、二人で何かを話し合っている。


「おはよう、二人とも」


「あら、おはようございます。リア、クロノ」


「おはよう」


「……うん、おはよう」


 一通り挨拶を済ませ、空いている近くの席に腰を下ろす。


 ちらりとライカの方を見ると、いつもと変わらない気だるげな表情を浮かべている。あいつは基本、あんな感じだから感情が読めない。


 果たして昨日のことはどう感じ取っているのだろうか?


 そんな思いを抱えながら今日も昨日と同じような授業が始まった。


 ちなみに実習授業に際して、俺とライカは混ぜるな危険ということでライカは先生と、俺はリア様たちと3人で実習を行うことになった。


 その時のライカの表情は明らかに不満そうであったが。普段からあんな感じの表情を作ってくれたら分かりやすくて良いのにな。



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