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2話 魔神封印の後

 魔神が復活してからわずか2年、人類は魔神を再度封印することに成功した。この快挙に世界中が沸き立った。


 こんなにも短期間で魔神を封印することに成功したのには理由がある。それは「五つの光」と呼ばれる、五大勢力のお陰であった。


 まずは、軍事大国であるグランミリタール帝国。数々の優秀な能力者たちが魔神の軍勢に怯むことなく立ち向かっていき、多大なる貢献をした。


 次にエルフの国、ゼルン王国。遠距離攻撃を得意とした能力者が多く、魔神の軍勢を遠くから撃退することに成功していた。中でも女王の活躍が凄かったらしい。


 三番目に冒険者ギルド。中でもSランク冒険者たちの働きがすさまじかったらしい。一癖も二癖もあるSランクの冒険者たちが暴れまわれば、魔神の軍勢など一晩で消える程であった。


 四番目はメルディン王国の懐刀にして嘗て魔神を封印した勇者の家系、エルザード家とその分家達であった。特に『竜印の世代』と呼ばれる5人の戦果はすさまじく、それぞれがSランク冒険者の戦果を軽く超える程であったという。


 そして最後、五番目にして最も魔神の軍団を滅ぼした勢力。一説によれば他の四勢力の戦果をすべて合わせてもその五番目の勢力が生み出した数々の戦果には敵わない程だという。短期間での決戦はまさにこの者のお陰であった。


 しかし、それほどの戦果を挙げておきながらその正体を知っている者は誰もいない。ある者は鬼神と呼び、またある者はそれを人類の危機に瀕して現れた神の使いだと呼ぶ。様々な憶測が飛ぶ中で、唯一、全員の意見が一致することがある。


 それは“黒い鎧を着た圧倒的な力の持ち主”だということ。


 その者はふらっと戦場に現れると瞬く間に魔神の軍団を滅ぼし、次の戦場へと向かうという。


 戦いが一瞬で終わり、すぐに姿を消してしまうため、その者を近くで目撃した者は居ない。よって、どんな姿なのか、はたまた人間なのか分からない。


 各国が魔神封印後に血眼になって能力測定の記録を遡ったり、情報を集めたりしても、それらしき人物は一人もいない。


 かくしてその謎の者は『黒の執行者』と呼ばれ、伝説の存在となったのである。






 *





 魔神の再封印からもう2年が経つ。魔神によって破壊された町も段々と修復されてきている今、俺クロノは15歳になっていた。家から追放されたのが11歳の時だから今日で丁度4年になる。


 嫌な記念日だ。


 俺は朝早くに起きると、いつも通りの正装に着替える。実は2年前に飢えて倒れていたところをメルディン王国の公爵家であるアークライト家に拾ってもらい、そこで居候兼使用人を務めているのだ。


 エルザード家があまり世間に顔を公表していないため、長男である俺の顔も知れ渡っていない。転々と居場所を変えていた時はそれが功を奏した。


 アークライト公爵ですら俺が誰だか分からないみたいだしな。


「まずは、朝ご飯の準備だな」


 屋敷専属のシェフが作った朝ご飯をテーブルに運び、お嬢様を呼びにいく。いつもの流れだ。


 この屋敷は公爵、公爵夫人、そしてお嬢様に専属の使用人がついている。いわゆる付き人のようなものだ。こんなのはこの国ではここでしか見たことが無い。


 そして俺は屋敷で唯一のお嬢様専属の使用人である。正直、着替えとかを手伝えないので何故なのか理解できなかったが、後に聞いた話だとお嬢様が公爵様と奥様に頼み込んだらしい。


 嬉しい限りだな。


 コンコンとお嬢様の部屋の扉をノックする。


「リーンフィリアお嬢様、朝ご飯の用意ができました」


「分かったわ。そこで待ってて」


 中からお嬢様の溌剌とした声が聞こえる。


 何故か知らないが呼び出しをしたとき、毎回扉の前で待たされて、一緒に行くことになっているのだ。


 そして少ししてガチャリと扉が開き、艶やかな金色の髪が見える。


「ありがと。それじゃ、行きましょう」


 前をお嬢様が歩き、俺が後ろを付いていく形で広い廊下を歩いていく。


「ねえ」


「どうしましたか?」


「二人の時はタメ口でって言ったでしょ? それに名前もリアって呼んでって」


 何を言っているのだこのお嬢様は。どこの世界に仕えている者にタメ口で話しかけ、愛称で呼ぶというのか。


「生憎ながら私がそれをしますと、首が飛びますので」


「飛ばないわ。私が言ってるんだし」


 そうして同い年の快活なお嬢様を適当にいなしながら共に食卓へと向かうのであった。

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