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192話 能力融合

「レヴィアタンよ。貴様に言われた通り暴食の魔王の力を持ち帰って来たぞ」


 そう言って憤怒の魔王であるサタンが暴食の魔王の力を吸収した水晶を机の上にトンと置く。


「ふむ。よくぞまあ黒の執行者とやらから逃げられたものだな、サタン」


「貴様から渡された転移の水晶があったからな」


 転移の水晶とは、アンディの聖域の能力から転移だけを抽出し、嫉妬の魔王であるレヴィが作り出したものである。ただ、転移の水晶を一つ作るのにアンディの意識が二日は飛ぶため、大量生産できないのが問題点である。


「これで約束通り俺に暴食の力を付与してくれるんだよな?」


「あー、確かそんなことを言っていた気がするな。だが大丈夫か? お前の場合は人間の下等な能力とは違って暴食の力を付与して消えることはない。通常、一個体が二種類以上の能力を持つなどどうなるか分からんぞ?」


「な~に、魔神様が大丈夫だったんだ。魔神様の一部から生まれた俺が出来ねえわけはねえ」


 サタンのその言葉にレヴィは、はあとため息を吐く。魔神は先天的にそうであったため、後天的に多能力者になるサタンとはまた違うことを知っていたからである。


「まあこの能力は出来るだけ存在力が強い者でないと先のあの化け物のように理性が無くなる。お蔵入りにするよりかは幾分マシか」


 そう言ってレヴィは机の上に置かれた水晶を持ち上げ、歩いていく。


「ついてくるがよい」


「分かったぜ」


 そうしてレヴィとサタンが部屋から出ていく。向かう先は何段にもわたる長い階段を降りた先の地下室。


「そこの椅子に座るがいい」


「ふんっ偉そうに指図しおって」


 そうは言うもののサタンはレヴィに言われたとおりに椅子へと座る。


「早くしろ」


「フフッ、それが頼む側の言い方か。嫌いではないがな」


 嫉妬の魔王の能力は分離と融合。この力を以て魔神復活のための能力強度集めが可能となっている。それが分かっているサタンはレヴィに対して口答えはするものの危害を加えることはない。


 それゆえにレヴィもサタンに対して強大な力を与えるのだ。


「これが成功すれば貴様はあの暴食の魔王よりも更に強力になるだろう。せいぜい頑張るんだな」


「ふんっ、俺のことを誰だと思っている」


 レヴィが手にした水晶の中から暴食の魔王の力が出てくる。水晶から少し出ただけで地下室中に凄まじい勢いの力の波動が押し寄せる。これがあるからこそ、地下室という頑丈な部屋で行うのだ。


「くっ、こいつは曲者だ。補助はしてやれないから自分で何とかしろ」


 そう言うとレヴィは叩きつける様にしてサタンの体に暴食の力を押し付ける。その瞬間、あまりの力に内部を怪我したのかサタンの口から血が噴き出す。


「ぐあああああああっ!!!!」


 サタンの体に取り込まれた暴食の力が内側から食い荒らしていく。それに負けじと憤怒の力も体内で暴れ出し、今にもサタンの体が張り裂けそうになる。


「それではな。妾は上で待っていよう」


 身が裂かれる痛みに耐えきれず苦痛の叫びを上げ続けているサタンを置いてレヴィは地下室から出ていく。


「おい、レヴィ。あの件はどうなった?」


 部屋へと戻る途中、レヴィにそう声を掛けてくる者が居た。シノ・エルザードである。


「あの件? ああ、色欲の魔王の能力の事か?」


「そうだ。あの力を俺に付与してくれるのではなかったのか?」


「まあ待て。今はある奴に能力を付与している。お前はまた後でだ」


「絶対だぞ」


 そう言ってシノがその場から去っていく。その後ろ姿を見ながらレヴィは一人こう呟く。


「人間はいつの時代も変わらぬな」


 遠い日の記憶を思い出しながら、レヴィはシノに背を向けるのであった。


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