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190話 敵か味方か

「誰だお前は?」


 どう見ても種族は人間ではない。後ろに生えている2対の翼と言い、かつての魔神族とそっくりな見た目をしている。


「ふん! わざわざ貴様に名乗る気など無い。そこの死にぞこないに用があって来ただけだ」


 そう言うと俺の横を通り過ぎて暴食の魔王の下へと行く。


「……それはどういうつもりかな?」


「こんなところにわざわざ来たってことはお前も魔神教団の関係者だろ? 暴食の魔王を回収に来たのは容易に想像がつく。せっかく倒した暴食の魔王を取り逃がすわけにはいかない」


 俺は破壊の力を向けたままその男に語り掛ける。


「ふん! 黒の執行者と言えど手負いの者などなにも怖くはない」


「なら試してみるか?」


「いや止めておこう。互いのためにならぬからな。第一、俺がここに来たのはこいつを回収するためではない」


 そう言うと男の周囲を途轍もない濃度の力が纏い始める。この力、もしかしてこいつも魔王か?


「ふんっ!」


 そう言って男が拳を突き出した瞬間、衝撃波が生み出され、それらが弱っている暴食の魔王へと向かっていく。そして暴食の魔王はその衝撃に耐えきることが出来ずその場でパシュンッと弾け飛んだ。そうして飛び散った暴食の魔王の肉片から紫色のオーラが男へと吸い込まれていくのが見える。


 いくら弱っているとはいえあの暴食の魔王を一撃で仕留めるなんて。男が魔王級の実力を持っていることは明らかであった。


「それで信じて欲しいと? むしろ疑いが増しただけなんだが」


「疑いが増したからなんだと言う? あまり俺を怒らせるなよ」


 ギロリとこちらを睨みつけてくる男。先程までとは打って変わったような態度に違和感を覚える。


「おっと、よくない癖が出たか。まあ良い。今はお前と戦う暇はないのだ。では」


 そう言うと男は下に向かって水晶を投げて割る。すると、先程までその場にいた男の姿が一瞬にして消えていた。向こうに同じような能力を使う者でアンディが居る。さっきの男は十中八九魔神教団の一員でアンディの能力を利用した何かしらの道具を作り出したのだろう。


 誰でも瞬間移動できるのはかなり危険だな。まああそこまでの力を発揮するものなんてそんなに生産はしていないだろうから数は少ないだろうが。


 もう周りに敵は居ないと確信して黒の執行者の状態を解除する。今回はかなり破壊の力を使ったため消耗が激しい。能力を解除した瞬間にどっと疲れが押し寄せてきてその場で横になる。


「申し訳ありません、リア様。帰るのが少し遅くなりそうです」


 そう言ってクロノはそのままクレーターのど真ん中で目を閉ざしたのであった。



 ♢



「あの人が黒の執行者だったのね」


 黒の執行者と暴食の魔王によって生み出されたクレーターの外の草陰で寝ているクロノの姿を見つめてそう呟く人物がいる。


「わざわざ黒の執行者に寄せて改造したこのパワードスーツを着ていた甲斐があったのかしら?」


 そう言って頭を覆っている黒の執行者の仮面を脱ぐとそこから長く美しい水色の髪の毛が流れ出る。


「とにかく探していたものは見つけたわ。後はどうやって彼と接触するかだけど」


 そこまで言うと胸のあたりを抑えてその場で膝をつく。


「ただでさえここに来るのに力を使ったのにさっきの怪物のせいで更に無理しちゃったからね。顔は分かったわけだし、いつでも接触できることを考えたら今は帰ろっかな」


 そう言うと偽の黒の執行者はよろめきながらクレーターから遠ざかっていく。その胸に誰も知る由もない思いを抱きながら。

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