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19話 放課後

 あの後、本気のライカと実習という名の訓練をしようとしたところ、ギーヴァ先生に実習場が壊れるから止めろと言われ、結局のところライカは戦闘モードではなく、いつもの気だるげな感じで実習をすることになった。


「むぅ、久しぶりにクロノと戦えると思ったのに」


 基本の組み手をしながらライカが文句を垂れる。


「仕方ないだろ。完全に乗り気だった俺が言うのもなんだが、あれで戦えばここの実習場は間違いなく吹き飛ぶ。ていうか死人が出る」


 先程のライカの姿を見てちらほらとあのSランク冒険者の雷姫だと気づいたものがいるようだ。


 ちらちらとこちらを見てくる視線を感じる。


「そういえば不思議に思ってた。クロノはどうして能力を隠す?」


 バチバチッと少しだけ雷が纏われた拳が飛んでくる。


 俺は軽く片手で受け止めながら答える。


「別にそこまで真剣に隠そうとは思ってない。だからこうしてライカの相手も渋々引き受けたわけだし」


 Sランク冒険者というのは世界にも10人しかいない程の類まれなる能力の持ち主たちだ。その中でもライカは強い方で、確か能力強度は100万を超えている。能力強度の順位だけで言えば、二桁のそれも上位の存在だ。


 ライカの正体が分かった今、あの雷姫が自分とやりあえると言っていたあの男はいったい誰だという話になってしまうため、本気で実力を隠しているのならば引き受けるはずがない。


 そもそもSクラスにも入らないだろう。


 俺は何も弱いと思われたいわけではなく、あくまで黒の執行者であることがバレなければそれで良いのだ。これはライカに対してもそうだ。


「隠してないなら本気を出せばいい」


「それには他の事情が関わってくるんだよ。大きなお世話だ」


 お返しとばかりに少し強めのパンチを放つ。


 ライカは雷を纏った腕で俺の拳を受け止める。


 そのまま徐々にヒートアップしていき、軽いウォーミングアップのような組手からバチバチの戦いへと発展していく。


「フフッ、楽しくなってきた」


 辺りに雷が迸っていく。


「おいおい、少し力を出し過ぎじゃないのか?」


「大丈夫。抑えてる」


 全然大丈夫そうに見えないんだが。


 恍惚した表情を浮かべながら神の如き速さで放たれる拳や蹴りに即座に対応してガードしていく。


 そのあまりの激しさに実験場の床が削れていく程であった。


「ちょちょ、ちょっと待てえい!」


 気付けばかなりヒートアップしてしまっていたらしい。ギーヴァ先生ですら近づけない程の惨状となり、またもやストップがかけられてしまう。


 それから俺とライカは混ぜるな危険ということで見学をさせられることとなった。次からは別の者と組ませると言われて。


 ライカは少し不服そうだったが。


 見学といえど、暇であったので俺はリア様とガウシアの方を見る。


 あちらは普通に訓練として成り立っているようで、ちゃんと能力同士の戦いになっている。


 その近くでクリス王子の姿が見える。実習の相手はあの白髪の少年だ。彼はどうやらアークライト家と同じメルディン王国の公爵家らしくクリス王子とも仲が良さそうであった。


 自己紹介の時に言っていたが、確か名前はジオン・ゼオグラードだったかな。俺と同じく実力を少し隠している雰囲気があったので入学試験の時から気になっていた人物だ。


 戦いは至って普通だな。ただ、クリスが能力を使っているのに対し、ジオンが能力を使う気配は無い。


 それからは暫くリア様とガウシアの戦いを見届けていると、実習の時間が終わった。


 ♢


「ふ~っ、初授業がやっと終わったわね~」


 今、本日の全ての授業が終わり、リア様と二人で帰っているところだ。相も変わらず俺は一歩後ろを歩いている。ガウシアは少し用事があると言って先に帰ってしまい、ライカは依頼に行くと言ってさっき別れた。


 別れ際、後で話があると言われたので少し嫌な予感がする。


「それにしてもライカがあのSランク冒険者の雷姫だったなんて驚いたわね。そんなの言ってこなかったし」


「彼女は普段の姿と戦闘時の姿にかなりのギャップがありますからね。分からなくても仕方が無いかと思います」


「そうよねー」


 すっかりお疲れのようだ。午前のガウシアとの実習訓練が響いていらっしゃるのだろう。


 それから少しお話をしていると、すぐに女子寮に着いてしまう。


「なんだかいつも一緒に居たあなたと別れるのは何回やっても慣れないわね」


「私もです」


 できることなら女子寮の中で暮らしたいが、それをしたら確実にお縄についてしまうので泣く泣く男子寮に戻っていく。


 部屋に戻ると、特にやることも無いのでライカが来るまでの暇つぶしとして手加減の練習をする。


 ぶぅんと俺の拳を纏う透明な波動。これがすべてを破壊する破壊の波動。『破壊者』の能力だ。


 いつもこうやって力を抑える練習をしているのだ。この成果もあって入学試験時には測定器を壊すことなく、かつ0を出さないという成果を出すことができた。


 かなりの時間、能力を出し入れして手加減の練習をしていると、コンコンと窓を叩く音が聞こえる。


 シャッ。


 カーテンを開くと、そこにはライカの姿があった。片手をちょこんと上げてくる。


 窓を開けて、ライカを中に入れようとすると、首を横に振って断られる。


「聞かれたくない話。ここは少し不安。付いてきて」


「? 分かった」


 俺は疑問に思いながらもライカの後を付いていくのであった。

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