表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

183/270

183話 黒の執行者?

 訓練が始まり、1週間が経過したある日の事。俺がいつも通り、リア様と共に部隊の訓練場へと向かうと、その道中で何やら人だかりができているのが見える。


「また勇者様が功績を挙げたらしいな」


「敵陣に現れたSランクの魔物を掃討して一か所制圧したみたいだな」


 話題は魔神教団と戦っているカリンの事であった。実はアークライト家よりも先にカリンやライカを含むSランク冒険者たちは魔神教団の根城へと向かっているらしいのだ。


 とはいえ魔物が魔神教団の味方をしているのか。十中八九、色欲の魔王の力だろうな、とアーリアを見逃した過去を悔やむ。あの時はリア様の事で頭がいっぱいでアーリアの事なんて1ミリも頭に残っていなかった。


 そんなことを考えながら歩いていると訓練場へと到着する。中には既に部隊全員が揃っており、各々でトレーニングをしている。


 皆、この一週間で見違えるように成長した。普段は依頼で自分たちよりも強い存在とあまり戦う事はないため、いざ実践形式で訓練をしていると何も教えないままで普通に吸収していったのだ。特にアスナの能力が一番伸びた気がする。


「おっ! お疲れっす!」


 俺達が訓練場へと入るとジンの挨拶に続き、皆が集まり始める。


「おはよう。みんな早かったわね」


「他にやることないですからね」


 冒険者は基本早起きだと聞いていたがそれにしても早すぎる。まだ学園では授業すら始まってない時間だぞ。


「それにあんなこと聞かされましたから。当然やる気も出てきます」


「あんなことって、ああ、黒の執行者の事ね」


 レイの言葉にリア様がそう言って納得する。何それ俺知らないんだけど。


「黒の執行者がどうかしたのですか?」


「聞いてない? つい最近、黒の執行者が戦場に出てきたらしいわよ。前と同じように敵を殲滅したらすぐにどこかへ行ってしまったらしいけど」


 リア様の言葉に俺は首を傾げる。戦場に黒の執行者が? 今回の戦場に一度も出た覚えはないんだが?


「それは本当に黒の執行者なのでしょうか?」


「どうなのかしら? そこは良く分らないわね。元々黒の執行者って何も情報を残さずに立ち去るし」


 それもそうだ。そもそも俺が黒の執行者ということを知っている者でないとそもそもの真偽判定は出来っこない。俺と同じくらい強い奴がたまたま現れた際の格好が黒の執行者のような格好であった場合、それは最早世間的には黒の執行者となるのだ。


 それに俺自身、黒の執行者は俺だと言い張ることはないため、必然的にそうなる。何だろう、別にどうでも良いな。まあでも一応カリンが勘違いして接近した時の事を考えて連絡はしておくか。それとセレンにも調べておいてもらおう。


「黒の執行者ねぇ。クロノって最近どこかへ出かけた?」


「いいえ」


「そう。おかしいわね」


 どうかしたのだろうか。まるで訝しむようにこちらを覗き込んでくるリア様の顔に違和感を抱く。こちらとしては思い当たる節も無いため、首を傾げる。


「取り敢えずこの話は置いておいてそろそろ訓練を始めましょうか。今日も実戦形式にしましょう。私対リア様達で」


 僅かながらに疑問を残しながら今日の訓練が始まるのであった。



 ♢



「セレン、例の黒の執行者について何か知ってるか?」


「いえ、何も。申し訳ありません」


「そうか。良いんだ気にするな」


 セレンの能力からも逃げることのできるほどの実力を持った謎の存在。もういっそのことそいつが本物で良い気がしてきた。


「一週間後から本格的に公爵様も出陣なさる。それまでにある程度情報を収集しておいてくれ」


「畏まりました」


 そう言うと、セレンはその場から消える。いつの間にか嫌な幼馴染という関係から頼れる斥候みたいな立ち位置になっているのってよく考えたら凄いことだよな。


 そんなことを考えながら遠ざかった平穏な日々を思い出すのであった。

ご覧いただきありがとうございます!


もしよろしければブックマーク登録の方と後書きの下にあります☆☆☆☆☆から好きな評価で応援していただけると嬉しいです!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ