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167話 武具製作

「じゃあ終わるまで待っていてください」


 皆にそう告げると武具と鉱石を持って中へと入る。改めてみるとやはりファーブルさんの工房に置いてあったものと全く同じ物だな。ファーブルさんもグレイスだし古代の最先端の技術を引き継いでいたのかもしれないな。古代の最先端か、意味が分からないな。


「取り敢えず動かせそうだな」


 まずはリア様の剣を仕上げていく。まずはこの剣に使われている物質の純度を上げる。ただ既に形も全て出来上がっており、後は武具としての力を吹き込むだけで済むこの剣をわざわざ砕いて一から精錬という訳にはいかない。


 だからこそこの工房にある機械の出番という訳だ。工房の真ん中には大きな武具が入るくらいの大きさの壷の様な物があり、その横には計測器の様な物が付いている。これは純度を高めてくれる機械で、この計測値を見ながら最も純度が高いところで引き上げる。


 加減は武具士の腕による。ただ、ファーブルさんもこの処理はしていたはずだ。なのになぜ純度がイマイチなのか。それはファーブルさんの持っていた機械がヘルメラを最高純度にするのに適していなかったからだと思う。


「だがこれならば高純度のヘルメラを取り出せるはずだ」


 手に持つ透明な鉱石を見て俺は確信していた。技術力の高い古代の工房であるならば純度の高いヘルメラを取り出すことができたということなのだ。


「まだ……まだまだ」


 リア様の剣身だけを取り外して壷に入れ、1分ほど経ってもなお数値は上がり続けていた。普通の鉱石ならばこのくらいで引き上げるのだが、この鉱石に至ってはまだ時間が必要だ。それから一切の油断も許さない張りつめた空気が流れ始める。


 そろそろか、そう思ってもまだまだ止まりそうにない数値上昇。刻一刻と緊張した時間が流れる中でその時は訪れる。


「ここだ!」


 数値が一瞬にして膨大な値になったところで剣身を壷の中から取り出す。出来栄えは上々。先程までとは比べ物にならないくらいに透明な剣身が出来上がる。


 後は不純物を取り除いた分、短くなった剣にこの高純度のヘルメラを使って形を整えて武具として仕上げるだけだ。


「さてと、取り掛かるか」


 そうして一連の作業を終え、ようやく一本の透明な剣が出来上がる。これを柄に差し、満遍なく力を注ぐことで出来上がる武具。


「名前はどうするか」


 ファーブルさんは生前この剣の事をヘルメラの剣と呼んでいた。これほどの技術が発展した古代ならまだしも現代であるならばこれほど高純度なヘルメラでできた剣は間違いなく世界にこれ一つだけだと言えるだろう。


「よし、こいつの名はヘルメラの剣だな」


 そう告げた瞬間、透明な剣身が途轍もない光を放つ。やがて光が収まると、そこには先程までよりも力がみなぎったヘルメラの剣があった。ただの透明な剣ではなく、その中に強い光を湛えている。


 武具士の中では名前をつけるとともに武具に力を注ぐ。これによって武具としての力を発揮するようになるのだ。


「リア様の剣はこれで終わりだな。後はライカとカリン、ガウシアの武具だが」


 ちらっと時間を見るとこれまでの間にかなりの時間をかけてしまっている。ここらで一回皆に声をかけるべきだろう。そう思った俺が部屋から出ると、カリン以外の皆が部屋の前で倒れているのが見える。


「寝ちゃったみたい」


「そうか」


 ちらりと見回すと皆、その堅く冷たい廊下の上でスヤスヤと眠っている。せめて毛布か何かあればいいんだけどな。


「カリン、これからかなり時間がかかりそうだから皆が起きたら先に帰っても良いって俺が言ってたって伝えておいてくれないか?」


「どれくらいかかりそうなの?」


「多分だけど半日はかかるかもな」


「それは確かにきついね。分かった言っておくよ」


 頼んだ、そう言いながら俺は部屋の中へと戻る。それから半日以上をかけて俺は武具製作を続けるのであった。

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