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164話 特殊な個体

 俺の攻撃を唯一止めた黄色い機械は自身の持つ剣を天井に向ける。少しして機械から発せられた電気が剣へと行き渡り、電気を纏った剣が完成する。


 そして繰り出されるは煌めく一閃。予備動作の一切無いその剣筋がまっすぐに俺の方へと向かってくる。


「さっきのを止めたんだし、もう少し本気を出さないとな」


 ただ、問題はここが未知の場所であるため、むやみやたらに力を解放できない点にある。そのため、俺は徐々に力を解放しながらこいつを捌ききる必要があるのだ。


「クロノ、私も一緒に戦うわ」


 リア様がそう仰って光の鎧を纏う。そうか。何でも破壊してしまう俺の能力よりもリア様が攻撃をしてくれた方が被害は少なくて済む。


「お願いします」


「あら、珍しいわね。まあ許さなくても戦ってたけどね。もう守られるだけは嫌だもの」


 本来であれば付き人としてそして護衛として主人に戦わせるというのはあるまじき行動だろう。しかし、リア様が守られてばかりいることに不満を抱いているのを解消するのもまた付き人としての責務である。


 それに、リア様にはいざという時のために実戦経験を積んでおいてほしいというのもあった。


「では私が守備に徹しますのでリア様は攻撃に集中してください」


 迫りくる剣筋を弾き飛ばしながらリア様に言う。


「分かったわ」


 それと同時に光の剣を作り出したリア様が体勢を崩した機械の胴体に切り込む。


 しかし、その刃先は致命傷を与えることはなく、ただ、機械を後退させるだけに終わってしまう。


「リア様。こいつの装甲はかなり頑丈です。関節を狙いましょう」


「おっけー、ありがと」


 後退した機械に追い打ちをかけるため、リア様が駆けだす。それを見た機械が剣を振りかざそうとするのを横から俺がはじき返す。後は、剣を弾かれて怯んだ機械をリア様が切り崩すだけ。


「はああああっ!」


 光の速さで機械の全身を滅多斬りにする。更に適当に乱れ斬りしているのではなく、ちゃんと綺麗に関節を狙っての攻撃だ。


「終わりよ!」


 最後に放った斬撃が機械の上半身と下半身を斬り分ける。これでもう動けないはずだ。


「やりましたね」


 光の鎧を解いたリア様に駆け寄り、開口一番にそう告げる。今回の敵は少なくともA級の魔物の強さはあった。それに補助付きとはいえ圧勝したというのは大人ですら称賛されるに値するというのにまだ学生の内であるのならば快挙であろう。


「あなたの助けがあったからよ」


 リア様はそう謙遜しつつも嬉しそうに笑みを零す。


「いえいえ、何を仰いますか。学園に来てからのリア様は特に成長が周りと比べて著しいものがあります。先程の敵だってA級はあろうほどの強さはあったわけですから」


 下手をすればS級に手を伸ばしていたほどだ。普通の魔物は武具に能力を付与して戦うなんてしない。うん? 待てよ? 使えるかもしれないな。


「それよりもみんなが心配ね。早くガウシア達の所へ向かいましょう」


「はい」


 そうして俺達は工房らしき場所を後にするのであった。



 ♢



「やはりそっちでも出ましたか」


「そう言うっていうことはガウシア達の所も出たのね? あの機械」


 リア様の問いかけにガウシアとヘルミーネがコクリと頷く。ただ、ガウシア達の方に出たのは黄色い機械ではなく、紫色の機械だったという。


「我の力を扱うガウシアがあの程度に屈するはずがない。ダハハッ!」


 ガウシアの肩にとまりながら高らかに笑う青い鳥。すっかりと性格が砕けてきているな。最初の威厳はどうしたよ世界樹さんや。


「私の所は赤だったよ」


「カリンが一瞬で全部斬っちゃった」


 カリンがそう報告する中で一人悔しそうにライカがぼやく。自分も戦闘に加わりたかったのだろう。


「こっちはジオンが一瞬で凍らせたけどね」


 自分の事ではないのになぜか対抗するようにクリスが言う。クリス達の所に出たのは青い機械だったらしく、氷の能力を使うジオンにとっては好都合だったようだ。


「なんにせよ、皆が無事で良かったわ。書斎の方に向かいましょ」


「あっ、それについてなんですけど。先に私達の方で選別しておいたんですよね」


 リア様の言葉に反応してガウシアが部屋の奥の方へと歩いていき、少しして10冊程度の積み上げられた本達を持ってくる。


「世界樹ちゃんに解読してもらってめぼしいタイトルだけ集めてきました」


「ナイスよ。ガウシア。早速読んでみましょう」


「難しそう。私はパスで」


 ライカの言う通りどう考えても分厚過ぎるその本達を見て、意気揚々とするリア様を横目に俺は軽く絶望するのであった。

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