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161話 謎の人工物

「こっちだよ」


 水着に着替えた俺はカリンに泳いでついていく。やけに深い所にあるんだな。いつの間にそんな深瀬にまで行ったのやら。特に会話をすることもなく淡々とついていく。


 そういえばこうやって泳いでいるとエルザードでの訓練の日々を思い出す。娯楽のための泳ぎなど何気に初めてかもしれない。


 ある程度遠くまで泳いだところでリア様達の姿が見える。そしてその後ろにはガウシアが生み出したのであろう白い大樹が海の底から生えているのが見える。


「来たわね、クロノ。あら、似合ってるじゃないその水着」


「ハハハッ、ありがとうございます」


 リア様の世辞に礼を返す。


「それで何を見つけたんだ? カリン」


「面白い物だよ。付いてきたら分かる分かる♪」


 カリンはそう言うと海の中をどんどんと潜っていってしまう。


「ずっとあの調子なのよね。何があるのかしら?」


 大樹という名の休憩場所に腰掛けていたリア様もカリンに続いて海の中へと飛び出す。


「私はさっきちらっと見た」


「私達もさっき少し見えたんだが、カリンさんが皆集まってからだって言うからさ。待っていたんだよ」


 いつの間にかクリスもこちらに泳いできていてそう言うと、海の中へと潜っていく。ライカもガウシアと一緒に下へと潜っていく。よくもまあ、こんな深い所を恐怖感もなく潜っていけるなと感心しつつ俺も海の中へと潜っていく。


 暫く潜っていくと水中に何やら透明で大きな球体が沈んでいるのが見える。そこで皆立ち止まっていた。


「ぶぼびば? だべ(凄くない? これ)」


 水中で話しているから何が言いたいのか分からないが、取り敢えずカリンは目の前の物体に対して興奮しているようだ。


「ばびびゅべべば(何言ってんだ)」


 うん、思った通り何も伝わらないな。というか酸素の無駄遣いにもほどがある。


 そうしてカリンが何を言っているのかが分からないまま、説明を続けながらその透明な球体の中へと入ると、突然重力でもかかったかのように海底へと落ちていく。


「ね? 言ったとおりでしょ? ここ、海の中なのに息ができるんだよ!」


 そうして先程まで何も聞き取れなかったカリンの言葉が突然、微かに聞き取れるようになる。意味を有した言葉の集合体となって俺の耳に届くその現象の不可解さに興味を抱いた俺もカリンと同様にその球体の中へと入っていく。


「凄いな。海の中なのに呼吸ができるぞ」


 一体どうなってるんだ? 入った感触は水の泡のようなものだが本来であればこんなもの水圧でぺちゃんこになるか、奇跡的に残ったとしても生物の呼吸によって酸素が消費されて息なんてできなくなるはずだ。


 だというのにどれにも当てはまらずに存在している。確かにカリンが言うようにここは面白い物であった。


「おっと」


「ありがと」


 落下してくるリア様を受け止め、地面に降ろす。そうやって続々と中に皆が入ってくる。


「それにしても結構大きい人工物? ね」


 目の前には透明な球体に守られるようにして覆われた大きな人工物が転がっていた。それもこの時代ではあまり見たことのない類の金属で作られたそれは高い技術力を感じさせられる。


「でしょう? 私、この中にお宝があるんじゃないかなって思うんだ」


「へえ、宝ねぇ」


「カリンさんって意外と子供っぽい所があるんですね」


「意外」


「そう言えば昔からそういう所はあったな」


 俺とライカはガウシアの言葉に同調する。言われた当の本人はあまり気にしていないようで鼻歌混じりに歩いて建造物の入り口を探している。


「それにしてもこんなところにこんな遺物があるとは驚きだな」


「ここはアークライト領ですからね。アークライト家以外では管理できませんので調査隊も放たれなかったのでしょう。殿下が知らないのも当然です」


「そのせいでここら辺、滅茶苦茶強い魔物ばっかだけどね。小さい頃、お父様に連れてこられた時なんてAランクの魔物がうようよ居たんだから。それにしてもこんなものが近くにあったなんて知らなかったけど」


 ガウシアとライカがカリンに対する感想を述べる一方で王族及びそれに準ずる者達は皆、目の前の建造物に対する感想を述べる。確かに今までこんなに大きな建造物が見つからなかったのは不思議だ。


「あ! 入口見つけたよ!」


 カリンの言うとおりに確かにそこには入り口の様な扉が備え付けられていた。錆びついているその扉はこれらが遠い昔から存在することを物語っている。


「せーの!」


 カリンは錆びついて開く機能が無くなっている扉を半ば破壊してこじ開ける。入り口から中を覗くと意外と広々とした廊下が広がっている。それこそ王族の城ぐらいの広さはあるんじゃないかこれ。


 そうして俺達はその謎の人工物の中に入っていくのであった。

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