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160話 面白い物

「お話があります」


 そう話を切り出してくるセレンの次の言葉を待つ。恐らく魔神教団についてであろう。


「魔神教団の本拠地が判明しました」


「なにっ!?」


 魔神教団であることは分かっていた。ただ、その内容が魔神教団の本拠地を見つけたというものであるとは思いもしなかった。なにせグレイスや各国の諜報機関が探しても未だ尻尾すら掴ませないほど厳重に情報管理されていたからである。


「世界樹の一件の後、少しアンディの行方を探ってみたのです。この千里眼を使って」


 この世のすべてを見通すと言われているセレンの千里眼。確かにこの能力があれば誰からも見つけられたことのない財宝なんかも一瞬で探し当てることができるだろう。まあ多少、制限はあるらしいが。


「それにしても瞬間移動する奴の動向なんてどうやって探ったんだ?」


「アンディの転移能力も私の千里眼と同じく持ち主の力に応じた制限があります。長距離であることは変わりませんが、流石にここから本拠地までひとっ飛びとまではいかなかったようです。それでその場所を張っていれば分かりました」


 相変わらず恐ろしい奴だ。こんなのが敵に居たらたまったもんじゃないな。ここで改めてセレンの重要性を理解する。


「じゃあ早速このことをジオン達にも伝えないとな」


 そうして俺がジオンやクリスのいる方へと向かおうとすると、セレンから腕を勢いよく掴まれる。


「うん? どうした」


「どうしたもこうしたもありません。ジオン達に伝えて何になるのでしょう?」


「情報を交換しておいた方が良いだろ」


「ですがあなた様が一人で攻略なさった方が効率的だと思われます。あのお姿、傷つけたくない人が周りにいるから全力が出せないのでしょう? わざわざ足枷を連れていく必要はない筈です。かつてのあなた様のように」


 かつての俺のように、か。確かにかつての俺は黒の執行者の力で危害を出さないようにするためにいつも一人で行動していた。それで事足りていたから問題はなかった。ただ、魔神との戦いの時では俺一人で封印まで持っていくことはできなかった。


 戦闘面では互角だったものの人間の俺と奴とでは身体の質が違った。奴は常に回復し続けるのに対し、俺はダメージを蓄積していく。それが積み重なってようやく魔神を行動不能にまで陥らせることには成功したが、同時に俺も倒れて動けなくなってしまった。


 そんな時に現れたのがヒルトン様であった。つまり、魔神との戦いでは俺は一人では解決することが不可能だったのである。


「いや、足枷なんかじゃない。俺はこれまで色んな人に助けられて何とかなってきたんだ。助けは必要さ。現にセレンにも助けられている」


「いえ、私はそんな。褒められても困りますけど」


 妙に照れ臭そうに言うセレンに変わったなと感じる。以前はそりゃ当然みたいな態度だったから余計に際立つな。


「じゃあジオンに……」


「あれ?」


 今度こそジオンの方へと向かおうとした俺にまたもや声がかかる。声の主は振り向かなくとも分かる。黒髪の勇者だ。


「誰かいた気がしたけど気のせいかな?」


「え?」


 ふとそばを見ると既にセレンの姿は見えなくなっていた。カリンが来ることが千里眼で分かっていたからこその神業であろう。俺は類まれなる技術に感嘆しながら誤魔化そうとカリンの方を向く。


「気のせいだな」


「そっか。あ、それとね。海の中にものすごく面白そうなものがあったんだけど見に来ない?」


「海の中? いや、俺は水着じゃないし良い」


「え~、つまんないよ。ほら、水着に着替えてさ、見に来てよ。ホントに面白いんだからさ。それじゃ待ってるからね」


 そう言って俺に決定権を放り出すとカリンは海の方へと走っていく。決定権は託されたと言えど、これは最早強制的に来いよ、みたいな話だよな?


「はあ、仕方ないな」


 どうせリア様が海に滞在なさっている間は動けないんだから魔神教団の話はいったん置いておこう。忌避感はあるが、カリンが面白いというほどの物が何なのかも気になった俺は、ジオンに伝えることも忘れて水着に着替えに行くのであった。

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