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156話 人格

「それであなたは一体誰なの?」


 魔神教団が去った後、更なる問題が発生していた。それはガウシアの様子がおかしいという事。どう考えても体を操られている様子に女王陛下は実の娘に対して怪訝な表情を見せる。


「我は世界樹だ」


「世界樹様? 信じられないわね」


 普通ならば受け入れられる筈もないその言葉に女王陛下は更に顔をしかめさせる。そりゃそうだろう。娘を操っているのが自分は世界樹だなんだとふざけたことを言ってきたら誰だって怒るに決まっている。


「女王陛下、すみません。少々離れていてください」


 女王陛下が怒るのと同様、友である俺達が怒るのもまた当然の話である。俺はガウシアの前へと向かうと、自身の拳に破壊の力を纏わせる。


「ダメよ、クロノ。それじゃあガウシアの体も傷つけちゃうわ」


「ご安心を、リア様。精神体をガウシアから追い出すだけですので」


「それなら安心ね。お願いできる? クロノ君」


 女王陛下にも許しをもらってガウシアの体に触れようとした瞬間、ガウシアの纏う雰囲気が変わったような気がした。


「お待ちください!」


「今更ガウシアの真似をしたって関係ない」


 ガウシアの口から放たれた制止の言葉を無視して手を近づけようとすると、横からガシッと俺の手を掴む存在が居た。


「クロノ」


「何だライカ?」


「多分、今の本物」


 本物……言われてみれば表情も先程までの厳かな感じとは違い、いつもの穏やかなガウシアの表情だ。とはいえ、ガウシアであるという保証はどこにもない。


「ライカさんの言う通りね。娘だわ。能力で繋がっているもの」


 ゼルン王家は代々『大樹』という能力を受け継いできている。それもまた世界樹による恩恵だという。完全に同一の能力であるがゆえに波長を感じ取ることができるらしい。


「……すまないな、ガウシア」 


 女王陛下の言葉に納得した俺は力を引っ込め、後ろに下がる。


「いえ、私の身を案じてしてくれたのですから謝る必要はありませんよ」


 いつもと変わらないほんわかとした笑みでそう返してくれる。


「ガウシア。それで説明してもらえる? さっきのは本当に世界樹様なの?」


「今からそのことについてお話しますね。実は……」


 それからガウシアの口から今までに起こった事を話してもらった。まずは突然体調がよくなったこと。そして、体調がよくなったのは世界樹の力が体に馴染むほどに吸収されたからであり、完全に馴染んだわけではないこと。


「それで私自身ではできませんので世界樹様が私の体を使って完全に力を取り戻したとしても馴染むようにしてくれているということなんです」


「なるほどな」


 ガウシアの言葉を聞いて、ふと疑問に思う。果たして体を壊すほどにまで力を渡す必要があったのだろうか。だってそうだろう。それほどの力を渡しさえしなければガウシアがここまで苦労することは無かっただろうに。


「ガウシアは嫌じゃないの?」


「何がでしょうか?」


「だって世界樹から過剰に力を与えられたせいで辛い思いをしているんだよ? それって嫌な気分しない?」


 幼少期に似た経験をしていたからこそカリンは言う。カリンの場合は過剰に力を得る様に強いられたせいで苦労していた、と少し違う背景にはあるがそれでも聞きたかったのだろう。どうしてガウシアが世界樹を嫌いにならないのかが。


「確かに最初は嫌でしたよ。どうして私がこんな目に遭わなければならないのかって。ですがそうしなければならない事情が世界樹様にもあったのではないかとも思うようになったんです」


「……殿下は優しすぎます。もう少し周りを疑ってみたほうがいいと思います」


「フフフッ、ヘルミーネ、なにもこの世のすべての人に対してそう思う訳ではありませんよ。相手が世界樹様だからそう思ったのです」


 長きにわたって国を守ってくれているから、そんな思いがガウシアの中にはあるのだろう。


「そういうことは世界樹様に聞きましょ。ガウシア、世界樹様に変わってもらえる?」


「承知しました、母上」


 そう言ってガウシアが目を閉じる。その数瞬後、ガウシアの纏う雰囲気がガラッと変わる。目を開くと先程の穏やかな表情とは違い、スッと全てを見通しているかのような無の表情。入れ替わったことがはっきりとわかる。


「これは我の責任だからな。ガウシアには本当に申し訳ないと思っている。言い訳みたいに聞こえるかもしれないがそこは許してくれ。これが真実だから」


ご覧いただきありがとうございます!


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