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149話 とある連絡

「皆さん、来てくれたのですね」


 ベッドの上に座りながらガウシアが言う。先程まではちゃんと寝ていたのだろう。目が少し赤くなっているのが分かる。


「申し訳ありません。来ていただいたというのに体調を崩してしまっていて」


「そんなこと気にしないで安静に」


 謝るガウシアにライカが身を案じて言う。すると何故だか横でメラメラと煮えたぎるような気配を感じる。


「私が殿下の身を一番に心配しているというのに……取られた取られた」


 何やら呪詛の様な物が聞こえてくるが病人の前でそんな不吉なことをする者はいないため恐らく気のせいだろう。さあ、気のせい気のせい。


「わざわざ来ていただいてありがとうございます。大したおもてなしもできませんけど、ゆっくりしてくださいね」


「おもてなしなんて気にしないで。こっちが元々ガウシアが心配で押しかけちゃったんだから」


「そうだよ。リアとライカが無計画で突入しただけだからガウシアが気にする必要は無いよ」


「カリン? 突入したのはあなたも(おんな)じなんだからね? 同罪よ」


「うふふ、まあそうだけどね」


「私は無計画じゃない。ギルドカードがあった」


「ほぼ無計画じゃねえか」


 俺達がそんなやり取りを繰り広げていると、ベッドの方から笑い声が聞こえてくる。


「フフフッ、皆さんのやり取りが久しぶりに見られて嬉しいです」


 ガウシアへのお見舞いそっちのけで会話していただけなのに図らずともガウシアを笑顔にさせられたことで場が和む。


「……殿下が私以外に微笑みを向けていらっしゃる。なんて、なんて、美しいんだ」


 先程と同様の呪詛が聞こえてくるかと思いきやまさかのお褒めの言葉だっ……あっと、気のせいなんだった。


「盛り上がっているところゴメンね。ガウシア、ちょっといい?」


 そう言って女王陛下がガウシアの耳にゴニョゴニョと何事かを呟き、ガウシアが頷いたところで話は終わる。


「さ、ごめんね。これだけ伝えたかっただけだから。じゃあ皆さん、ゆっくりしていって頂戴ね?」


 そういうと女王陛下は部屋を後にする。一体何だったのだろうか? ガウシアの病気についてか? 少し気にはなるが、それはガウシアと女王陛下との間での問題だから詮索はしない。


「うん?」


 そこで俺のコミュニティカードに連絡が来る。こんな時になんだろう?


「申し訳ありません。連絡が来ましたので少し外します」


 そう言うと俺は足早にガウシアの部屋を後にする。やっとの思いでガウシアの部屋に入れたというのに、とは思うがかけてきた相手が相手だ。無視はできない。


 そのまま誰も居なさそうなところまでくると通話をかけなおす。


「セレン。何か用事か?」


『ガウシア・ド・ゼルンにお見舞いの所申し訳ありません。今のクロノ様に必要なことだと思いましたので連絡させていただきました』


 通話をかけてきた相手はセレンであった。今の俺に必要な事? 魔神教団がらみか?


『魔神教団が能力強度を集めていることはご存じですよね?』


「ああ。ヒルトン様もそれで攫われたんだろう? それがどうした」


『その関連のお話です。実は――』



 ♢



「すみません、お待たせしました」


 飽くまで自然を装って皆の前に戻る。


「あらお帰り」


「お帰りなさい」


「お帰りクロノ。今、ガウシアと夏休みの予定を話してたところだよ。せっかくの長期休暇だし、ガウシアの体調が良くなったら魔神教団の鬱憤も晴らすついでに海にでも行こうかってさ」


「そうなのか。それは楽しみだ」


「近くにちょうどいい狩場がある。私はそこがいい」


 それは流石に無いな。ライカの絶望的なセンスに先程の話が吹き飛びそうになる。


「フフフッ、ライカ。それはまた今度にしましょう。狩場ならいつでも行けるじゃないですか」


「むう、それもそう」


 折れるの早いな。


「クロノもそれで良いよね?」


「あ、はい。大丈夫です」


 リア様に尋ねられて了承の言葉を返す。リア様が行きたいところなら俺が拒否する理由はない。


「ヘルミーネもよろしかったですか?」


「少しお待ちくださいね、殿下。スケジュールを確認いたしますので」


 そう言ってペラペラとメモ帳の様な物を開き、確認し始める。


「すみません。その日は少し用事が入っておりまして」


「あら? 私の親衛隊隊長なのに来られないのですか?」


「はい! 行けますとも! 当然じゃないですか!」


 ガウシアから用事を断ろうとするほど大切な用事だというのにヘルミーネはその一言だけで即刻キャンセルを入れてしまう。俺と同じ境遇の彼女には少し親近感が湧く。


 それから俺達はこれからの長期休暇での過ごし方を日が暮れるまで話し合うのであった。

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