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147話 ライカ来訪

 剣をリア様から預かった後、そろそろライカが到着しそうだということで俺達はアンさんの家へと戻った。


 そういえば再会したのに感動しすぎてそのテンションでついカッコつけて自分に打たせてくれとか言ってしまったが、よくよく考えれば工房も工具も何一つとしてないんだけど、どうしよう。


 これで、すみませんできませんでした、とか言ったら許してはもらえるだけど近くにある穴に2週間は籠りたいくらいには恥ずかしい思いをしそうだ。


 何とかなると信じよう。


「それじゃあ私とカリンさんで美味しい晩御飯を作っておくから二人はもう一人のお迎えに行ってあげて」


「分かりました。帰ってきたら私達もお手伝いしますね?」


「うふふ、頼んだわ♪」


 アンさんに言われて俺達は外へと出る。到着した時よりも大分暗くなっており、地面に露出した木の根に引っかかりそうになりながらもライカが待つゼルン王国の入口へと向かう。


「そういえばクロノって道覚えてる? 暗くなっちゃったから私ちょっと自信ないんだけれど」


「私に任せてもらえれば。今までこのような経験は何度かございましたのでしっかりと覚えております」


「安心したわ。ていうかこれじゃあ私必要なくなっちゃうわね」


「そんなことはありませんよ。ライカも私ひとりが迎えに行くよりもリア様が一緒の方が嬉しい筈です」


 そういえば久しぶりにライカと出会う気がする。本当は1週間程度なのだろうが、毎日学校で会っていたから少し会わないだけで軽い懐かしさを覚える。


 昼間は美しい緑との共生を実現させているここは、夜になると一気にその装いを変える。ゼルン王国を包み込む森は中心部にある世界樹による力でより鬱蒼と茂っているため、通常よりもはるかに薄気味が悪い。


「あれ? おかしいな。もう着いたって言ってたんだけど」


「居ないですね」


 入口に着くも、ライカの姿が見当たらない。低すぎて見えていないだけだろうかと確認してもどこにも居ないのだ。


「魔物にでも食われたんですかね?」


「そんなわけない」


 俺がふざけてそう言うと、突如上から声が聞こえる。見上げるとそこには雷を纏い、夜の闇の中で唯一輝いているライカの姿があった。


「……気付いてた癖に」


 ライカは拗ねたような顔をしてヒョイと10mはあろう木の上から飛び降りる。その高さから降りたのか疑いたくなるほどの軽やかな音と共に着地する。


「いや、気付いてなかったぞ?」


「嘘ばっかり。さっき目が合った」


 バレていたか。どうせ上から驚かそうとしているんだろうなと思って黙ってておいてやったのに。


「クロノ?」


「何でしょうかリア様」


 不満げなライカからリア様の方へと顔を向けると、こちらも不満げな顔をしていらっしゃる。あれ? どうしてだ?


「気付いていた癖に気付いていない振りをして私を揶揄っていたんですね?」


 あ、そうか。確かにそういうことになるな。というかライカの悪だくみを成功させようとしていたってことはリア様だけを嵌めようとしていたということになる。うん、言い逃れは出来ないな。


「はい、そうですとも」


 ニコリと爽やかに返す。これが現状の最善手だ。


「行きましょう、ライカ」


「うん」


 華麗なスルー。まさかここまで綺麗に無視をされるとは思わなかった。だがあそこから、そんなつもりなかったです、とか言ってもどうせ同じことになるのは目に見えている。選択肢はとうの昔から無かったのだ。


「というかリア様、道分からないって言ってたでしょう?」


 そう言って二人の後を追いかけるのであった。


 ♢


 ゼルン王国に来て二日目。今日は本来の目的であるガウシアの様子を見に行く。そのためにゼルン王国の中心部に来たわけだが。


「そういえばどうやってガウシアと会うつもりなの?」


 当然の問いがカリンから飛んでくる。


「全く考えてなかったわ。コミュニティカードも繋がらないし、かといって王城にいきなり訪問するにしても入れてもらえるか分からないし。どうしましょう」


 何の策も無ければ、行ったは良いものの中心部に聳え立つ巨大な城を前にして立ち往生することとなる。ここまで来たら流石にガウシアには会いたいところだけどな。


「窓から入ればいい」


「ダメよ、ライカ。そんなことしたら捕まるわ」


 ライカの案は当然却下される。今回、ライカは自身の武具である大槌を持ってきているからそんなことしたら余計に疑われるだろうな。


「一応、城の前に立っている衛兵に伝えに行きますか? ガウシアに会いに来たと」


「そうね、それしかないわ」


 そうして俺達はほぼ無計画のまま城へと向かうのであった。

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