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143話 協力者

「公女殿下、今回は助けていただきありがとうございました」


 解放した女性二人を家まで送ったのちにゼールさんから頭を下げられる。


「俺からも言うぜ。ありがとうな」


「私からも。ありがとっ!」


 ゼールさんに続き、ジンもアスナも頭を下げる。ていうかジンに関しては最初リア様には敬語だったってのにいつの間にかため口に変わってやがるな。まあ嘗めきっているという訳ではないからリア様が怒らないなら別に良いけどな。


「いえいえ私がしたことではありませんので」


「なに言ってんの。公女様が居なかったらそもそも屋敷に入る事すらできていないのよ。まあそっちに控えているクロノさんが化け物だったのはそうだけどさ」


 アスナの言葉に三人全員の視線がこちらに集中する。


「てかよ~、ゼールがボロ負けした奴等5人相手に一人でしかも圧勝するなんて未だに信じられねえよ。あんたさ、元々は有名な騎士だったりすんのか?」


「違う」


「だよな~。クロノなんて名前聞いたことねえし」


 冒険者だったことはあるがその時は今よりも能力を使わずにいたから有名であったことはない。強いて言うなら黒の執行者としては有名だったけどな。


「クロノならS級冒険者なんて余裕で行けそうだよね」


「流石にそれは言い過ぎだって。あいつらは正真正銘の化け物だぜ? この国でいる奴で言うと雷姫(らいき)か? 一度だけ戦場であいつの戦いぶりを見たことあるけどよ。Aランクの魔物の群れを持ってた武器も使わずに一瞬で消し飛ばしてたんだぜ?」


「そ、それはちょっと次元が違うような……そう言えば今思い出したけど、確かアークライト家って言えば勇者様が養子になったんじゃなかったっけ?」


 アスナが首を傾げながらそう言う。カリンが養子になった当時、国民の間でかなり話題になったと聞く。それこそ、その影響でエルザード家の株も下がったってくらいには。


「カリンの事かしら? だったらそうね」


「うへー、そんなに戦力持ってて国王から何とも言われないのかよ」


「言われているのかしら? そういうところはよく分からないわ」


 まあカリンが国王に言われて帝国へ駆り出されているところを見るに最低限は言われてそうだけどな。流石に公爵家から勝手に引き抜いたりはしないだろうけど。


「リア様、そろそろ帰りましょう」


「そうね。これ以上遅くなったら屋敷から抜け出したことがバレるし」


 このことがバレたら俺もリア様も公爵様からキツイお叱りを受けることになることだろう。ああ怖い怖い。


「それじゃ三人とも、私達はお暇させてもらうわね」


「はい! 何かお役に立てることがあればいつでもお呼びくださいね!」


「いつかこの借りは返したいからな」


「じゃ~ね~」


 三人にそう別れを告げるとリア様と俺は暗い夜道の中を少し小走りで帰るのであった。



 ♢



「聞こえるか?」


『はい、聞こえます』


 あれから見事屋敷の誰にもバレることなく帰還することができた俺は自分の部屋の中からある人物に通話をかける。元竜印の世代の一人、セレン・イズールである。あの後、怒りの谷へ放置して去ろうとしていたのだが、一緒に連れて行ってほしいと言われたのだ。


 当然、最初は断ったのだがそのやり取りの最中に目を覚ましたリア様から助けてもらったという話を聞き、リア様からの要望もあって連れていくことにしたのだが、元々竜印の世代だったことで悪い意味で知名度があった。そのため、クリスに頼み込んで影の組織であるグレイスへと入団させたのだ。


 グレイスに入団させたとは言ってもセレンはクリスの指揮下にいるのではなく何故かグレイスの一員ではない俺の指揮下で動くことになっている。


 まあ俺も今回の事件でエルザード家と魔神教団の殲滅を決め、魔神教団の掃討を目的としているグレイスの意向とお互い利益が合致して、全面的に協力することになったからほとんどグレイスにいるようなもんだが。グレイスではないが互いに情報を共有し合って各々の行動を起こしている。


 その関連で以前から魔神教団とつながりのあるウェザード伯爵へと事前にセレンの能力を使って探りを入れていた。そこに今回のゼールさん誘拐事件がたまたまドンピシャに重なったという訳だ。


「何か収穫はあったか?」


『はい。クロノ様達が侵入した後に伯爵を脅迫したところ魔神教団と交わした契約書などの署名の入った書類が数点入手できました。どうやら今夜、公女たちを捕えてまとめて魔神教団に売り飛ばす予定だったらしく消す暇がなかったみたいですね』


「なるほど。よくやった。これで奴も終わりだな」


 これでグレイスを通して憲兵に証拠を渡して捕縛すればいい。


『魔神教団に接触して逃げられる可能性がありますので引き続き見張っておきます』


「ああ、頼んだ」


 そこまで言って俺は通話を切り、ベッドに倒れ込む。これで取り敢えず貴族連中の中で魔神教団と繋がっている奴等はあらかた排除完了だな。後は大本だけ。


「これも公爵家に危害が及ばないようにするために必要なことだからな」


 人知れず影の世界で奮闘する使用人はそう呟くと意識を深く落とすのであった。

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