シアワセのカタチ
昔々の物語。
それらは確かにあった出来事だ。
しかし人々は真実を隠し、伝承として伝えていった。
それでも、稀にそれに気づく人間というものが出てくる。
これはそのことを知った、一人の少女の物語である。
外では冷たい風が吹き荒れていた。
いつになれば止むのか分からない、そんな吹雪の中。
私はいつものように暖炉のある部屋の中でホットミルクを飲みながら、本のページをめくっていた。
外の世界の物語が記されたその本は、何度読んだのかも分からないほど繰り返し読んでいた。
そう。外の世界、だ。
私の世界は、基本的にはこの家の中だけで、めったに外に出たりはしない。
理由は簡単だ。
私はこの家に、軟禁されているのである。
自由が無い訳じゃないし、不便なこともあまり無い。
ご飯も用意されるし、こうして過ごしやすい環境を与えてもらえている。
ただ、外にはなかなか出られないだけ。
もう一つ言えば、早く本を補充してほしい。
まぁ、それはこないだお願いしていたから、そろそろ持ってきてくれるだろう。
最初の頃を思い出して、少しだけ苦笑する。
ここに来たあの頃は、ここは地獄なのだと思っていたけれど、今となってはだいぶ過ごしやすい環境となっていた。
一種の天国、と言い換えても良いだろう。
まぁ、世界とするには少し狭い気もするが、それでも日々を過ごす家としては大きい方だと思う。
そんなことをつらつらと考えていく。
それだけでも暇つぶしにはなる。
有り余る時間を過ごすことには慣れてしまった。
いつ止むのかは分からないが、この吹雪が収まれば新しい本を持ってきてくれるだろう。
早く止まないかなぁ……。
私はそこまで考えたところで、本へと意識を戻した。
いつものように。
ただ、日々を過ごす。
一人の少女が描く日常。
それはきっと、一つの幸せの形。
人はきっとその少女の幸せを否定するかもしれない。
しかし、少女は確かな幸せを感じているのでしょう。
一番最初の部分は、少女が読んでいる物語の冒頭部分ということで。
設定を考えられなかったとか、書こうとして挫折したとかそういうことじゃないよ? ホントだよ?
……ごめんなさい。嘘つきました。
あれ以上の続きを思い付かなかっただけです。
さて、そんなところで気を取り直して。
いかがでしたでしょうか。
少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです。
好き嫌いの激しい話になるかもですが、私自身は書きたかった話の一つです。
少女は確かに不幸な境遇かもしれませんが、少女なりに幸福な環境の中で生きています。
それはそれで一つの幸福の形なのかな、と思うのです。
それとは逆に、幸福な境遇でも不幸な環境になることもあるかもしれません。
結局のところ、考え方の問題なんだよなぁ、なんて。
そろそろ長くなってきたのでこの辺りで止めておきたいと思います。
それでは、ここまで読んでくれたあなた。
お疲れ様でした。
そして、ありがとうございました。