07 続、馬車の中で正体と考えをあかす、オマケ
馬車の中での出来事(2/3)
前回は4日0時に投稿
士也視点です。
「まずは、王女が言った嘘から。
……俺達が死んで、この世界に来たのは本当の事。
ただ、フィガロさんが召喚儀式を行い、偶然、死んだ俺達が選ばれたという事は嘘ですよね?」
フィガロは笑みを消し、俺を見つめる。
「どうして、そう思いました?」
「東方院、松井……あのトラックが向かってきた時の事を覚えているか?」
フィガロの言葉をスルーし、2人に問う。
「え……そうだな?
あの時、危ないって聞こえてトラックに気がついた……だっけ?」
東方院は、あの時の事がごちゃ混ぜになっているのか、深く悩んでいる。
「そうだね……あれって八頭くんが声をかけてくれたんだよね?
で、そのあとトラックにひかれた」
松井も、東方院と同じ様に考えている。
「ああ……どうやら、中途半端に覚えているみたいだな?
俺は全部覚えているよ。
まず、信号待ちしているお前達の方向に、走っているトラックが向く前に、運転手が苦しむ様に胸を押さえ意識を失ったように見えた。
運転手が気絶か、死んだのかは知らない。
そして、トラックが向かってきたので、俺は注意を促した。
竹内は俺の声に気づき、俺を見て、残りのお前達はトラックに気がついた。
そして、ここで言える事は十分にトラックから逃げる事が出来たはずなんだ。
東方院は竹内を、渡瀬は吉川を、松井は助けにいった俺が抱き抱えてな。
だけど、あの時、俺が声をかけた瞬間、トラックはスピードが上がり、お前達は時が止まったかの様に動かなくなり、松井の腕を掴んだ俺も動けなくなった。
俺達6人はそして死んだ」
トランシーバーの向こうでも、東方院達と同じ反応で覚えていないと言っている。
「おそらく、巻き込まれたオマケの俺だから覚えているんだと思う。
だから、あれは王女が言ったような偶然なんかじゃない……必然だ。
召喚儀式を行ったから、お前達が選ばれ、事故で死んだ為に、この世界に来た。
……どうです?
フィガロさん」
俺達3人はフィガロを見て、トランシーバーの向こうでは3人が、フィガロの言葉を待っている。
「その通り……だと思います。
どういう風に、貴方達が死んだのかはわかりません。
ですが、王女様が言った通り、偶然で貴方達が死んだのではないと、私は答え……謝罪します。
申し訳ございません、私が向こうの世界で幸せに過ごしていた貴方達を殺害し、この世界に召喚しました。
本当に申し訳のない事を」
フィガロは、泣きながら頭を下げた。
「……いや、うん。
死んだ事に実感がないから、どう言えばいいんだろう?
八頭くん、どうすればいい?」
松井も、東方院と同じ意見なのだろう、東方院とともに俺を見る。
「……そう、だな?
確かにフィガロさんが行った儀式で俺も含め死んだんだけど、たぶん……フィガロさんも犠牲者だと俺も思っている。
それに謁見の間で見た、俺達の鑑定は、恐らくフィガロさんが誤魔化して出た表示だと思っている。
本来なら、俺……いや、お前達の鑑定は、もっと凄い事になっているんじゃないかな?」
俺がそう言うと、フィガロは勢いよく涙で濡れた顔を上げ驚いている。
「なあ、松井、東方院も?
……こういった人の死を利用して、世界をまたぐ大規模な召喚儀式って、アニメ、漫画、小説ではどんな風になっている?」
「え……なに、突然?
でも……そう、ね?
なにかの犠牲があるかな」
「例えば?」
「私達が死んだとしても……呼んだ側、つまり、この世界の人達も、なんらかの犠牲があると思う」
「そうだな。
俺も、千里から借りて、そういう話はたくさん読んだが、大抵はそんな感じだった」
東方院も頷いた。
「俺もそう思う……謁見の間で王女の言った事や、魔道士の態度で、こう思ったんだ。
魔道士の誰か……おそらくフィガロさんに実力で負けた貴族が、王様に召喚儀式を進言し、フィガロさんを中心にした儀式を行わせ、フィガロさん1人になんらかの犠牲を押しつけた。
もちろん、平民あがりの魔道士長となったフィガロさんを憎み、蹴落とす為に」
「ヤガシラ様……貴方は本当にどこまで」
フィガロは信じられないといった顔をしている。
「……それほど、凄い事じゃないですよ?
幼い頃より、こういった事ばかり訓練させられたら、疑ってばかりで嫌になりそうで。
それに、俺が、こう予測出来る様な事は、あとそんなに多くないですし」
俺は、苦笑しながら首を振り、ため息をはく。
「それでも、貴方の予測……プロファイリングでしたか?
私が思っている事とほぼ同じですよ」
「……話を戻しますね?
たぶん、フィガロさんもわかっていても、王様から命に逆らう事が出来ないから……王様の命令を受けた。
……フィガロさん、どんな犠牲を受けているのですか?」
俺は、フィガロの目を見つめ問う。
「……隠しても仕方がないですね。
召喚した時点で、私の最大魔力値が8割ほどに下がりました。
おそらく、日が重なるにつれ、私の力は少しずつ下がり、やがて死ぬ事になるでしょう」
「そんな……どうして、フィガロさんだけが?」
松井は、フィガロのおかれている状況を知り、フィガロを見つめ、東方院も手を握りしめていた。
「……この国は魔力国家です。
この国の民は王族、貴族、平民と問わず、産まれてすぐに魔力値を計るのですが、ほとんどの平民は低い魔力値で産まれてくるのですが、どうしてか貧しい暮らしをしていた代々平民の産まれの私が、王族に負けない魔力を産まれながらにして持ってました。
まあ、色々あって成長した私は、王国の魔道士団の一員になり、更に努力して一番の使い手として魔道士長になりました。
……全ての貴族を差し置いて」
「つまり、嫌がらせ……ですか?」
松井はわかりやすい結末をしり、顔をしかめた。
「そういう事ですね。
今回の召喚儀式を国王様に進言したのは、この国、王族に次ぐ、四大公爵の筆頭に当たるマルチーノ公爵家、嫡子ディアス・マルチーノ。
彼は魔道士団の副士長を勤めています。
さきほど、謁見の間で私に退出すると言った者ですね。
……彼は、自分より実力のある私が目障りだった。
召喚儀式は使った者に儀式の対価による呪いを与える為、この世界でも禁呪となっています」
「禁呪……それに私達が召喚された理由。
本当に、王女が言った通りに、魔獣や魔族、魔王がこの国に攻めて来ているのでしょうか?」
馬車の外の景色を見ながら、松井は言う。
どう見ても馬車のから見える景色の中、人々の焦燥を感じとる事はなく、幸せな風景に見えた。
「……ええ、確かに、この国でも、各地にて魔物が増えている事も確認しております。
魔族に関しては……他国、西方にある砂の国で現れたと報告があったそうです」
松井の視線を追って、フィガロが答えた。
面白い、続き読みたい、気になる、と思った方。
よろしければ、評価の星に光⭐️を灯してください。
よろしくお願いします。
次回は16時に投稿します。