51 士也、魔族ネイビーに復讐の戦いを挑まれる
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一話目、1時投稿。
二話目、3時投稿。
三話目、5時投稿となります。
一話目です。
よろしくお願いします。
王都を出た士也は、いくつかの小さな町や、村を経由し、サーディン十二首領連邦国の首領の1人、マッカイヤーと話していた様に、とりあえずサーディンに向かって歩いていた。
景色はサーディンが砂漠地帯という事もあり、国境を越える頃には、木々が減り、草花も見かけなくなっていく。
土がメインの地面は岩や小石が目立つ様になった。
その茶色い風景の中、濃いめの青の大きな布地で頭から全身を隠す様にまとった人物が、士也に向け殺気を放っている。
進行方向にいる故、無視も出来ない士也は仕方なく先を進み、ある程度の距離をおき止まる。
「誰だ?
そんな殺気を放って、人違いでしたとは言わないよな?」
士也は、顔は隠れているが体型で男と思われる人物に話しかける。
「……お前が勇者か?
我、友、カーマインを倒した者」
男は低い声で、あの魔族の名前を言った。
「カーマイン?
……なるほど、お前、魔族か」
「我が名はネイビー。
カーマインとは幼き頃より、魔王様に仕えるべく、ともに切磋琢磨と競いあった仲だった」
「魔族にも幼なじみというモノがあるのか?」
「……幼なじみ?
なるほど……人族は面白い言葉を使う。
が……そうだな。
たしかに私達は幼なじみだった。
いがみ合っていたが、お互いの実力を認めていた。
そんなアイツを、貴様は殺した」
話しているうちに、少しずつ感情が高まり、見える手は握り震えている。
「貴様は私が殺す」
「……そうか」
ネイビーを見て、士也は隙なく構えた。
殺すと宣言したネイビーの殺気の気配が変わった。
苛立ちの殺気から、静かな闘志の殺気へと変わっていく。
先行をとったのはネイビー。
全身を纏った布地を取り、姿を現し手から濃紺の炎を打ち出す。
炎の大きさは約50センチで、熱量は千度程
炎はかなり速く向かって飛んできて、肌に感じる熱量もかなり熱い。
士也は使い慣れた鉄棍を取り出し、カーマインとの戦いでも使用した氷魔法を棍に付与して、炎を打ち払う。
バァン!
打ち払った瞬間、炎は爆発し消えた。
士也は振りきった棍から微かに身体が引っ張られる感覚を感じて、棍の先端、打ち払った場所を見た。
打ち払った部分は大きな氷の塊が付着し、その為、棍の先が重量を増していた。
(どういう事だ?
どう考えても奴の炎が原因だけど……考えられるのは、1つ……いや、2つ。
もう少し様子を見てみるか)
士也は棍に魔力を通し、熱量を上げ付着した部分を溶かし氷を外した。
「どうだ?
次、行くぞ」
ネイビーは、今度はさきほどの炎を数多く作り、一斉に放つ。
その数、二十を越える。
迫りくる炎を避け続け、避けきれない炎は、火魔法『炎弾』で相殺を狙う。
避けた炎は当たった対象に爆発し、大地をえぐり焼き尽くす。
相殺を狙った炎も爆発し、弾けた炎は火力を増した。
(威力が増した……増幅?)
観察を続ける士也は、ネイビーの炎を分析していく。
(でも、普通に当たったところは一定。
氷は俺の付与した氷が爆発で威力が増幅して、大気中の水分を凍らせた……か?)
「避けるが精一杯か?
その程度で、カーマインを倒せるとは思わん。
まだなにか、あるんだろう?
まだまだ行くぞ!」
更に数を増やした炎は相変わらず見た目も、含まれた魔力も、熱量も同じ一定。
士也は同じ様に避け、魔法で相殺を狙うが、ネイビーが更に数を追加していくにつれ魔法で相殺出来る範囲を越え、魔力で強化し纏った棍で打ち払う。
打ち払った直後、爆発は威力が増し、士也は吹き飛んだ。
(やっぱり、そうだ!
あの炎は、相手の魔力、魔法を吸収し爆発、その魔力、魔法を増幅させ相手にダメージを与える。
もし、避けられても、そのままの炎の熱と爆発のダメージで、相手を弱らせるのか)
地面に叩きつけられる前に、棍を地面に刺し、体勢を整え着地した。
士也は棍を戻し、変わりに双剣を取り出し、様子見をやめスピードを上げた。
「なっ?」
一瞬でネイビーの近く、攻撃範囲まで近寄り、ネイビーに剣を振る。
ネイビーは手から青い炎を纏う片手剣で受けとめ、防戦一方となる。
すでに、さきほどまでの炎を作る暇はなく、変わりに受け続ける剣に魔力を流す。
「調子に……のるな!」
剣に纏わす炎が吹き出て、士也を焼き切ろうと力任せに剣を振りきる。
振りきった剣から溢れる炎が士也を襲う。
「土魔法『土壁』」
後ろに飛ぶ士也を追いかける炎は地面から壁が出現し炎を受けとめた。
士也が地面に足をつけた時、土壁の中央が爆発し大きな穴が空く。
穴の向こうから飛び上がったネイビーが一瞬見え、土壁を飛び越えたネイビーは、上段から振り下ろし、さきほどより更に剣から溢れた炎が士也に向かってくる。
「おいおい?
マジか……」
士也も炎が届いた瞬間を想像し、冷や汗をかいた。
が、次には対処方法を思いつき笑っていた。
「これでどうだ?
氷魔法『凍結世界』」
士也を中心に範囲百メートルが、一瞬にて凍結する。
「馬鹿め!
その程度、魔法を吸収して、貴様にかえ……ッ?」
士也に向かう炎は上空にも向かう魔法を吸収し続け、爆発するが空間は凍結……更に落下してくるネイビーも含めて、すべてが凍結した。
「馬鹿は……そっちだよ。
吸収して増幅し爆発?
出来ないし、意味ないよ……世界そのモノを凍結させているんだから……吸収し増幅しても空間を凍結する魔法は凍結するだけ、これが答えだ」
落ちてくる爆炎だった塊を剣で切り壊し、次に凍結したネイビーを切り壊す為、見据える。
だが、双剣の範囲に入る前に凍ったネイビーは空中から消えた。
士也は魔法が使われ、魔力を感じた方を見る。
凍結世界の範囲外に、魔族と思われる女性が立っていて、足元に消えたネイビーが転がっていた。
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この話も、あと二話。