47 国王ガルシアは大層、士也を気にいる
お待たせしました。
エピローグ的な数話の第1話目となります。
書いていて、なんの盛り上がりがないので、本当に困りました。
おそらく皆さまも読んでそう思う事でしょうが、もう少し、お着きあいください。
ブクマ登録、評価⭐️をいただき、ありがとうございました。
すでに決着がついたと判断したのか、イルが結界保持の支援をやめたのを見て、結界は解かれていた。
マリーシアは立ち上がり、こちらにくる士也と対峙する。
「……シヤ」
未だマリーシアは、士也をシヤと呼び、それに対して士也は苦笑した。
「終わったよ。
あとは他の魔族がいなきゃいいんだけど」
士也は告げる。
それは、もうすぐ護衛の依頼が終わるという事。
「シヤ……いいえ、士也が本当の名なのよね。
ずっと女性だと思っていたから、なんだが不思議な感じかするわ」
「ああ、そうだね。
口調と声は、その時の変装で変えているけど、これが本当の普段かな?
変装し続けると自分でも、どう話していたか忘れるんだ」
士也は「敬語は勘弁な」と言いつつ、マリーシアを見つめる。
「……この国に残ると決めた時に、俺が召喚されたヤツだって、気づかれたくなかったからさ。
女装したんだけど、結構いたるところで気づかれたから……ショックだったよ」
チラリと、アルベルトのほうを見る。
アルベルトは気まずそうに目をそらした。
「じゃあ、他の方達は……」
マリーシアは少しの希望をもって尋ねてくる。
「いや……残ったのは俺だけだ。
みんなは情報通り、海を渡って大陸に向かったはずだ……先に町を出たから、本当の事は知らないけどね」
「船で大陸に向かったのは、管理者達の話を聞いて、記録も確認したから、大陸に向かったのは間違いでしょう」
アルベルトが士也の情報を補足し認めた。
「だってさ……とりあえずは、騒ぎが落ち着くまでは、もう少し女装侍女で護衛を続けるからさ。
元々の予定日まではよろしく」
「……そう」
士也の考えがわかり、マリーシアは寂しそうに下を向く。
「話を割り込むがいいか?
この国を魔族の策略から守ってもらい、まずは感謝を」
国王ガルシアは結界内でした様に、再び深く頭を下げた。
「いや、俺は……単に冒険者ギルドで生誕祭までの期間の護衛という依頼を受けて、偶然、マリーシアの護衛に振りわけられて、どうしてか……魔族と戦う事になっただけ……って、こうして考えると、これ勇者召喚のなんらかの力が働いた様に感じるの、俺だけ?」
士也は「うわっ、怖っ」と驚気ながら、照れくさいのをごまかす。
「真偽はわからぬが、改めて問う。
どうして1人、この国に残ったのだ?
他の仲間達とともに、大陸へ航る事も出来たはずだ?」
ガルシアはずっと考えていた事を尋ねた。
「ああ……それこそ、色々と理由が重なった偶然、だな。
理由は省くけど、アイツら……特に東方院秋雨が向こうの世界……育った国では、ちょっと面倒くさい存在でさ。
んで、俺はアイツ……秋雨を監視する者だったんだ。
当然、幼なじみの付き添いの他の4人も対象となった。
この世界に来て、そういう問題とか、監視する意味も、全部関係なくなったからさ。
自由に生きるのもいいんじゃないかって。
それにアイツらはどう思っているのか知らないけど……さっきマリーシアに言ったけど、俺は別に召喚された事に対して、そう怒ってないから。
結果、悩んだすえ、アイツらとは別で動こうと思って」
士也はやれやれと首を振る。
「そうか……いや、そのお陰で助かったのだ。
その判断に感謝するしかないな」
ガルシアも話を聞いて、ため息をはく。
「……士也、お前優しいな」
アルベルトは士也の話で、その結論した。
「……どういう事だ?」
ガルシアは思ってもいない、突然のアルベルトの言葉に疑問をもった。
「陛下、おそらくですが士也が残った理由はもう1つあるでしょう」
「それは?」
「仲間を逃がす為、でしょうね」
アルベルトは確信をもって答えた。
「つまり、城から追跡が出た場合に邪魔をする事でしょう。
実際、一度邪魔を私は受けてますから。
おかげで無事に、フィガロ殿達を逃がしてしまいましたから」
立場上、追跡というかたちをとっていたので、矛盾したいいかたになるが、あの時は、無理やり王命を得たディアスが率いていたから、仕方がない。
「ほう……だから優しい……か、なるほどの」
士也はそろそろ処理が終わるスライム……スン達の方へ顔を向けているが、実際は話を聞こえているのだろうが、耳が真っ赤だ。
「あー、なんの事?
それより、そろそろスン達も終わりそうだし、戻らない?」
政論だが、当然話を誤魔化した士也は戻る提案をだした。
「ふむ……それもそうだな?
アルベルトよ、もう大丈夫だろうが、もうしばらくは護衛を頼む」
アルベルト、マリーシア、リセラと順にガルシアは見て、最後に宰相を見た。
「宰相……クロードの話よ。
あとで話がある」
「……はい」
「では、皆、行こう」
ガルシアの言葉により、皆で地下部屋を後にした。
途中、アルベルトが状況把握と、魔族殲滅の情報を流す為、リセラと騎士を残し離れた。
ガルシア達は生誕祭の会場ではなく、会議室の様な部屋に戻り、少しの間休憩をとった。
まもなくして、アルベルトが戻り、ガルシアの側にに近づき報告する。
「陛下、各国の来賓者達の無事の確認を取れました。
いずれの方もこれという怪我もなく、大事になりませんでした」
「それは僥倖な事だ。
他の状況……町の方はどうだ?」
次にガルシアは王都の状況を尋ねた。
「そちらもこれといった大事はなく、会議でマルチーノ公爵が動いた際、同時期に集められ操られていた傭兵が一斉に暴れだし、多少の家屋等が破壊されたそうですが、死者はなく、怪我人も治療をすれば特に問題はないとの事です」
「……そうか。
アルベルト騎士総団長、日頃、そなたが行う騎士達への訓練の賜物だな」
すべてに最善をつくしたと判断し、椅子の背に深くもたれ、安堵のため息を深くはいた。
「ありがとうございます……ですが、今回ばかりは私達、団長の指導だけではないかと」
アルベルトは苦笑する。
「どういう事だ?」
「実は……」
アルベルトは、この三ヶ月、時間のとれた士也……その時はシヤ……が格上相手として騎士達数人と立ち回り、連係などの訓練していた事。
それだけではなく、冒険者ギルドのマスターとの連絡係として橋渡していた事。
それらをマリーシアの護衛侍女として動いていた間に行っていたと伝える。
「……それが真なら、我はあの者にこの度の報酬を与えればよいのか?
いや、それよりも、この王国に残ってほしいと思うのだが」
ガルシアは腕を組み唸る。
「私もすでに彼に懇願しています。
そして、あのリンダ侍女長も気に入っており、侍女として残らないかと……それに」
アルベルトは、マリーシアの方を見る。
ガルシアもつられ、マリーシアを見て思い出す。
「そういえば、マリーシアの侍女だったな……おい、マリーシア、ちょっと来てくれ」
ガルシアがマリーシアに向けて手を振り呼び出す。
「どうなされましたの、お父様?」
マリーシアは呼ばれ近づき訪ねる。
「もうちょっと、近くに……少しお前に尋ねたい。
マリーシア、お前は、あの士也という人物をどう思う?」
マリーシアとアルベルトにだけ、聞こえる風に小声で聞く。
「……シヤ、いえ、士也ですか?
それは……その」
マリーシアは顔を赤くし口ごもる。
「ふむ……その様子だと嫌ってはいない、どころか」
その様子を見て、娘の思いに気づき頷く。
「マリーシアよ、お前には悪いがお前の思い利用させてもらうがよいか?」
「……お父様、それってもしかして?」
ガルシアが言いたい事に気づき冷静になり、思いを話始めた。
「お待ちください。
確かに私は、シヤとして側にいてもらっていた時に、生誕祭後も側で侍女としていてほしいと伝えました。
けど、彼は私を拒否するかと思います。
彼は自由を求む、冒険者です。
私の側では、自由を得られませんから」
「私も同意見です」
アルベルトも、マリーシアの言葉に同意した。
「そうか……惜しいな」
でも、まあ言うだけ言ってみるかと考えていると、少しずつ、他国の来賓者が戻り、中に入ってくる。
「この件にかんしては、これで終わりだ」
やがて、すべての来賓者が戻り、ガルシアは国王として事の真相を話始めた。