38 シヤ、アルベルト達と情報を交わす
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そして、この回で10万文字を越えました。
ここまで読んでいただき、嬉しく思います。
また、土日にはいれば忙しく、書けなくなるので、今のうちに頑張って投稿しようと思ってます。
「マルチーノ公爵邸で?
ディアスが、また母親の公爵婦人に無理を言って、なにかを買わせたのかしら?」
マリーシアは考えながら首を傾げた。
シヤは聞きたくないという感じで、澄ましながら紅茶を飲んでいた。
「いえ、どうやら、事を起こしているのはマルチーノ公爵本人だそうで……ディアス・マルチーノは、この事に関与していない様です。
詳しい報告は……クリスト、頼む」
アルベルトは、マリーシアの考えを否定し、アルベルトに報告書を出したクリストに説明を求めた。
「はい、我が部隊の半数は、裏では諜報を行う部隊であり、今回、部隊の者がマルチーノ公爵邸を調べ得た事は、ここ最近、多数の傭兵を招きいれている様なんです。
しかも、目立たない様に1日に2、3人と集まり、現在30人を越える傭兵が集まりつつあると」
「傭兵が……」
マリーシアは驚きを隠せない。
「それに対し、傭兵ギルドに問いただしてみたところ、この王都にはその様な数の傭兵が来たという記録もなく、ギルドの者も驚いておりました。
つまり、ギルドを通さず、マルチーノ公爵は傭兵を呼び集めている訳で……」
傭兵ギルドが栄えたのはかなり昔、現在は冒険者になる者が多く、傭兵ギルドは縮小している状態である。
傭兵となる者は、罪をおかし冒険者を脱退させられた者。
高額報酬を得る為、契約する者。
戦争の匂いを嗅ぎつけ集まる者。
等様々な理由で傭兵に身を落とす、荒ぶれ者が多い。
「一応、マルチーノ公爵に理由を尋ねてみましたが、『陛下の生誕祭に向け、他国から訪れる危険分子を抑制させるのは、我ら騎士団や、町を守る兵士、依頼を受ける冒険者だけでは足らずないと思い、少しでも足しになるよう独自のルートで傭兵を集めている』と答えられました」
「……なるほど、一応は理にかなった答えだが」
クリストの新たな内容を含む報告を聞き、アルベルトは考える。
「もし、別の理由があるなら、それはまったく違う意味になりそうですね?」
今まで無言だったシヤが、アルベルトの言葉を引き継ぐ。
「……そういう事だな。
クリスト、しばらくはマルチーノ公爵、およびマルチーノ公爵邸の監視を重点に、もちろん、他にも王都の監視を怠らない様に……大変だが、しっかりと頼む」
クリストに新たな指示を出すアルベルト。
「リセラ、ビノ……お前達の部隊も王都中の警邏をしっかりと頼む。
生誕祭まで……いや、終わるまでは大変だと思うかくれぐれも頼む」
「「はっ」」
リセラとビンセントは、アルベルトの言葉に敬礼で返す。
「シヤは」
「私は、マリーシア様を守る。
それが私の受けた依頼だからね……あと、目につく範囲は、ついでだし守れそうなら守るよ」
新たな紅茶を淹れる為立ち上がり、シヤは席を外す。
「それでいい、悪いが頼む……マリーシア様?
いかがなされた。
なにか、懸念する事でも?」
アルベルトは頷き、未だマリーシアが、なにかを考えている姿に気づき尋ねた。
「……ええ、クリスト?」
アルベルトの声に、マリーシアは思解の海から抜け、言葉に出す。
「なんでしょう?」
「マルチーノ公爵邸で見かけない人物……そうね、赤いスーツを着た怪しい人物を見なかったかしら」
「赤いスーツの怪しい人物、ですか?
……いえ、そういった報告は受けていませんね。
その人物が、どうかなされましたか?」
「実は……」
マリーシアは、今まで誰にも話さなかった事……魔族カーマインの事を皆に告げた。
「なんと……この王国にも魔族が現れていたのですか?
我らの不徳……申し訳ありません」
アルベルトは驚愕し、頭を下げた。
「いえ、実際、2回目に現れたのは、4ヶ月前、貴方達は、ディアスに連れられフィガロの追跡に出ていた時、最初の時も同じようにフィガロが城を離れていた時ですから」
「……その話ですと、その魔族はフィガロがいない時だけ現れたという事ですか?」
リセラは、マリーシアの話を聞き尋ねた。
「ええ、あの魔族は、フィガロの探知能力を恐れていました。
あの魔族が現れる時、認識障害の魔法を使い、一定範囲の場所を時間操作で時間をとめていましたから」
「なんと、その様な魔法が?
……クリスト」
アルベルトの驚愕は続き、クリストにマルチーノ公爵邸に魔族の存在出来たか確認する。
「……ええ、これからは、その魔族が確認出来るかも含め監視を強化します」
クリストは首を振り、答えた。
「頼む。
リセラ、ビノ。
お前達も、どんな些細な事でもいい。
注意して警備にあたってくれ」
「「了解しました」」
「しかし、マリーシア様。
どうして今まで、その魔族の事を話していただけなかったのですか」
アルベルトは少し責める様に尋ねた。
「……思い出せなかったのよ。
今思うと2回目の時も、姿を見るまで思い出せなかったし、なぜ今、思い出したかもわからないわ」
マリーシアは不思議そうに、悔しそうに答えた。
「認識障害の魔法……せいかもしれませんね?
アルベルト総団長の瞳なら、見抜ける事は出来そうですけど、直接みなくては看破出来ませんよね?
実際、フィガロという方もいない時にあわせ現れたと、マリーシア様はおっしゃりましたが、アルベルト総団長も同じように王城内、もしくは王都にいなかったと考えられますね」
紅茶を淹れなおしたシヤが、再びマリーシアの隣に座り、話を聞いたかぎりの考えを述べた。
「なるほど……ってシヤ?
なんで団長の秘密を知っているんだ?」
クリストは、シヤの考えに納得し、新たに疑問をおぼえた。
「そりゃあ……私の事、その瞳でいろいろと看破されましたからね。
気づきますよ、いくらなんでも」
シヤは肩をすくめた。
「ふふ……まあ、その件は許せ?
こちらも仕事だ。
ところで、マリーシア様。
他にこれといった疑念などございませんか?」
アルベルトは答えながら笑い、誤魔化す様にマリーシアに話を振った。
「……そうね?
1つだけあるかしら?」
「それは?」
アルベルトは尋ねた。
「シヤが、私の湯浴みの手伝いをしてくれないという事が疑問だわ」
「ブッ……マリーシア?」
紅茶を飲みながら、話を聞いていたシヤは突然の内容に吹き出し、敬称を忘れマリーシアに抗議する。
「だから、言っているでしょう!
私は、あくまでも護衛ですから、無防備なマリーシアを手伝うのではなくて警護するのが正解なんです!」
焦るシヤを見て、本当の理由に気づいたアルベルトは声を出さず笑っている。
「ああ、もう……総団長も笑わないでフォローくださいよ!」
それに気づいたシヤは、アルベルトに抗議する。
「す、すまない……マリーシア様?
シヤの言う通りです。
だから、わがままいわずに理解してやってください」
なんとか笑いを静め、言われた様にアルベルトはフォローをした。
「わかったわよ……でも、シヤ?
2人の時は敬称なしでもいいと言ったけど、ここは他の者もいるのよ?
注意しなさい」
マリーシアは、アルベルトの言葉に不貞腐れながも返事し、代わりにシヤに八つ当たりの抗議をする。
「~~~っ失礼しました!
そもそも、マリーシア様が変な事を言いだすから、私もビックリしたんです!」
「だって、シヤに手伝ってもらいたいんですもの」
「も~~~、勘弁してください……」
シヤは顔に手をあて、天井を向く。
その隠された顔は耳まで紅かった。
この後は、特に交わす情報もなく、これからなにかあれば集まるという事になり、解散となった。
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