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34 シヤ、ディアスとの再会を避ける

お待たせしました?


出来ましたので、投稿します。


 シヤの実力を見たいと、マリーシアに連れられ騎士団がいると思われる訓練場に向かう途中、会いたくなかった人物が遠くに見えた。


「マリーシア、悪いけど顔、変装するから合わせて」

 マリーシアの後ろを一定の距離を空けて、侍女として歩くシヤは、マリーシアにだけ聞こえる様に小声で話し、素早く手で顔を覆い、別の顔に変えた。


「えっ?」

 マリーシアが突然にシヤが言った事がわからず、立ち止まって後ろを振り向くと、後ろをついていたシヤの顔は、まったくの別人となっていた。

 髪の色はさすがに変える事が出来なかったがヘアピンで髪をまとめ、青い瞳は若干黒くなり、頬はソバカスが浮き出て、白い肌は黄色身を増している。


「……シヤですわよね?」

 今まで後ろを歩いていたシヤが別人に変われば、さすがの王女も驚く。


「そう……でも、今だけはミアって名乗るよ。

 ほら、きた」

 相変わらず小声で答え、シヤが促す方向を見ると、魔道士団団長ディアス・マルチーノがこちらを向かって歩いてきた。



「……おお、これはこれは、マリーシア王女殿下ではございませんか?

 この様な所で出会うとは奇遇でございますね」

 ディアスは言葉は丁寧だが、どこかマリーシアを馬鹿にした態度で、マリーシアに挨拶を交わしてきた。


「……ディアス殿」

 ディアスの態度にイラつきを見せるが、上手く笑顔で隠し挨拶を返す。

「ええ、少し用事がありましたの。

 貴方に会ったのは偶然。

 会いたくなかったですわね」


「……これは連れない事を。

 我が麗しの従妹殿はおっしゃる。

 まあ、いいでしょう。

 それより」

 チラリとマリーシアの後ろにつく侍女を見てため息をはき、マリーシアに尋ねてくる。

「シヤ……という冒険者が、王女殿下の護衛として侍女になったと噂に聞いたのですが……今日は連れていないみたいですね……マリーシア?」


「……ディアス殿。

 公爵嫡子の貴方が、私の従兄にあたるとはいえ、公共の場にておいて、王女である私を敬称もなしで名を呼ぶとは……貴方、何様でしょうね?

 まったく、いい歳の者が礼儀も知らずとは……筆頭公爵家も地に堕ちたものですわ」

 マリーシアは扇を取り出し、口元を隠してため息をはいた。


「……これは失礼を。

 マリーシア王女殿下……今日はどういったご用件で、こちらに?」

 年下に馬鹿にされ屈辱を隠さず、懲りずに再び尋ねてくるディアス。


「答える必要はないのですが……そうですね?

 単に、散歩して城内を歩いているだけ、としておきましょうか?

 いちいち貴方に理由を話す必要もないですから。

 それに、さきほどシヤと言いましたか?

 確かに冒険者のシヤは、お父様……陛下の生誕祭までの間は、私の護衛侍女してギルドが依頼を受け側についていますが……今は、シヤは交代で休み中、見ての通り別の者を連れているわ」

 マリーシアは、ミアとなったシヤを見て、説明した。


 本来、侍女をディアスに説明する必要もなく、シヤの事も話さなくていいマリーシアは、ディアスに牽制する為、侍女のミアをと紹介した。


 マリーシアの説明に、ミア(シヤ)はディアスに侍女としての礼儀をとるが、気がつかず、気にせずディアスはつまらなそうに侍女を無視した。


「そうですか……シヤに会う事があれば、また、その時にでも話をさせてもらおう。

 では、王女殿下、呼びとめてしまい申し訳ない、これにて失礼させてもらう」

 ディアスは一礼し、マリーシアから離れていった。




「さて、シヤ?

 あれと話したくなかったのはわかりますけど、その顔はいったいなんなのかしら?」

 ディアスが完全に離れたのを見届け、シヤの方を見て、問い質す。


「これは……見ての通り、変装だよ」

 シヤは顔に手をあて、首もとからベリベリと変装の顔を剥がす。

「実はこういうの得意なんだ」

 シヤはそう言って笑う。


「変装、ね?

 ……じゃあ、今の姿はどうなの?

 本当のシヤはどういう方なのかしら?」

 マリーシアは見極めようと顔をしかめながら近寄らせてくる。


「さあ、どうだろうね?」

 シヤは一歩下がる。


「ふう……まぁ、どちらでもかまいませんわ。

 シヤが上面が嘘つきであろうとなかろと、そのまま、本当の意味で私の事を裏切らなければ」

 マリーシアは何度目かのため息をはき、シヤの目をしっかり見つめ『裏切らないわよね?』と意味を含めて笑う。

「行きましょうか?

 あの男のせいで、貴重な時間が過ぎてしまったわ」

 マリーシアは再び目的地である訓練場に向け歩きだした。


 シヤは、そんなマリーシアを優しく見つめながら後をついていく。




 2人が訓練場につくと目についたのは、実力の高い者が、経験も実力も浅さが同じくらいの10人の騎士が順番に立ち向かうという訓練だった。


 実力の高い騎士は、相手する騎士の未熟なところを口と動きで、伝え負かしていく。


 それを見守り、指示を出していた女性の騎士……リセラ・マーガレットがマリーシアに気づき、マリーシアのもとへ駆け足で来る。


「これは……マリーシア王女殿下。

 こんなところへ、いったい……なにかありましたでしょうか?」


「いえ、少し貴女達、騎士団に力をかしてもらおうと思って、こちらに来たのですわ」

 扇で口元を隠し、にっこりとマリーシアは微笑む。


「私達……ですか?

 力になれる事でしたら、いくらでもかまいませんが……しばし、お待ちを。

 おい、そこの!

 アルベルト総団長にお出で願う様に、連絡を頼む」

 リセラは、目についた順番待ちをしている騎士に声をかけ、その騎士は一礼し訓練場に添え立つ建物に向かっていく。


「あら……別に、アルベルトまで呼ぶ事はないのよ?」


「……いえ、総団長は、そちらに控えている侍女……『シヤという名の冒険者が現れた場合は、なんとしても私を呼ぶ様に』とおっしゃっておりまして……そちらの侍女は、冒険者のシヤ殿ですね?」



「あら……シヤ?

 貴女、意外に有名なのね」

 マリーシアは嬉しそうにシヤを見た。


「……騎士団の方達とは、一度、会った事がありますので」

 シヤは騎士団がいる前では、侍女としての態度に戻り、控えめに答える。


「ええ、大森林で調査中に、シヤが現れまして、その時……ぶふっ」

 リセラはその時の状況を思い出したのか、王女の前で盛大に吹き出す。

「しっ、失礼いたし……ぷ、ました」


「……まあ、吹き出す気持ちもわかりますわよ……聞いただけの私も笑ってしまいましたから」

 マリーシアは、リセラを見て苦笑する。


「はぁ……大変失礼しました。

 ところで、王女殿下。

 私達はなにをすればよろしいのでしょう?」


「ええ実は、シヤの実力を見たくて、ここに来たのよ……誰かシヤの相手をしてくださらない?」


「なるほど……そういう事でしたか。

 ならば、私が……と言いたいところでしたが、どうやら、私では役不足となるでしょう」

 少し悔しそうに答えたリセラ。


「……それは、どういう事かしら?」


「おそらく、私では相手にもならないという「待ってください、団長!」」

 リセラの言葉を遮り、1人の騎士がこちらに駆けよってきた。

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よろしくお願いします。

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