33 シヤ、マリーシアの本音を聞き受けいれる
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(´;ω;`)
マリーシアの護衛侍女として、側添えする事になったシヤは、マリーシアの執務室にて、そばに控えている。
マリーシアは手にしている書類にサインをはしらせ、ペンを横に置いた。
「ふう……今日の必要な案件はこれで終わりかしらね?
シヤ、紅茶をお願いするわ」
「かしこまりました」
シヤはそう答え、紅茶を淹れ始めた。
マリーシアをそばで見続けて数日、召喚された時に感じた傲慢な態度はなりを潜め、1日の大半は机につき、毎日でる書類を処理している。
そして、終わった後は必ず紅茶を要求して、静かな時間を楽しんでいた。
無理な要求はほとんどなく、護衛侍女としては給料泥棒と言われても文句は言えない……まあ、生誕祭に近づけば忙しくなるんだろう。
(思っていた以上に、彼女……イメージが違うんだよね)
「ふふ……シヤの淹れる紅茶は、リンダにも負けないわね。
美味しいわ」
執務机からソファーに座りなおし、マリーシアは手前に置かれた紅茶をとり、一口含んでは余韻にひたり、味わいを楽しみ微笑む。
「ありがとうございます」
シヤは一礼し微笑み返す。
「そういえば……シヤ、貴女かなり噂になっているのを知っているかしら?」
紅茶をテーブルに置き、マリーシアはうかがう様に尋ねてきた。
「……噂ですか?」
シヤは首を傾げる。
「ええ、貴女が城内を歩いているのを見た、この城の騎士団の若い騎士達が、貴女の事を話していたらしいわ」
「騎士団?」
(騎士団といえば、四ヶ月前に森で遭遇した時の事かな?)
「ええ、シヤ、貴女……王国魔道士団、団長ディアス・マルチーノに側室にって言われたそうじゃない?」
マリーシアはニヤニヤとしながら、シヤを見た。
「……なっ?」
常に冷静に対応し、表情を変えないシヤが苦虫をかんだ様に変えた。
「……ぷっ、あははははは?
シヤ、その顔……貴女、本当にディアスに告白されたのね?
あははははは」
お腹を抱え、ソファーの上を転がる様に笑うマリーシア。
「……」
シヤは口塞ぎ、なにかを耐える様に1つ、深く深呼吸する。
「あの時は、まだこちらのヒューマニア大陸に来て、まもなくの頃の事ですね。
なにやら、森……東の大森林の中、開けた場所で調査していた様でした。
その時、魔道士に何者か質問され、困って説明していた時に、騎士の方にかばってもらい、説明をしてました」
どうせ、その時の事を聞かれるなら、先にと話し始めた。
「あら?
ディアスではないのね?」
笑いが落ち着いたマリーシアは、シヤの話に首を傾げた。
「ええ、騎士の方でした…30代後半ぐらいの立派な方でしたね。
そのディアスという方は、その後、来られまして、一緒に私の話を聞いていました」
少し上を向き、当時の事を思い出しながら、シヤは答える。
「30代後半の騎士……おそらく、騎士団、総団長のアルベルトでしょうね」
「あの方が、騎士総団長。
道理で他にいた騎士とは、どこか一線違う気配をまとっていたはずですね」
シヤは納得する。
「ええ、冒険者のランクに例えたなら、彼、Sランク上位と言われているわよ?
それで……ディアスに告白されるのって」
「その後……でした。
総団長を追い払って、話かけてきましたから」
シヤはウンザリした顔で話す。
「そう。
……それで貴女はどうしたの?」
マリーシアは、期待を込めて尋ねてくる。
「あまりのキザたらしいので……鳥肌がたって、全力で森の中に逃げました」
「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは、は……ディアス、馬鹿ね?
馬鹿でしょう?
馬鹿としか表現出来ないわね!
あはははははははははは…………………………はぁ、はぁ……私、笑って、死にそうになるの……初めてだわ?」
さきほどよりも高笑いし、王女……淑女の嗜みも忘れるぐらいにお腹を押さえ、ソファーに顔を沈め、顔を真っ赤にしている。
「……そこまで、喜んでいただきますと、こちらも、スッキリしました」
「どういたしまして……かしらね?」
「「ぷっ……あはは」」
2人は顔を見合せ、こらえきれず吹き出し笑いあった。
「はぁ……なにか疲れたわね?
そうだわ……シヤ?」
「……なんでしょう?」
「2人だけの時は、その堅苦しい話し方しなくてもいいわ。
むしろ、やめてちょうだい」
「……それは」
「私がいいと言ったら、いいのよ!
……貴女の事、気に入ったもの」
マリーシアは微笑む。
「本当に、よろしいので?」
「ええ、冒険者の仲間達と話す様に、話してくれたらいいわ?
話し方、違うのでしょ?」
「…………まあね。
そうだ……私も聞きたい事、あるんだけど、いい?」
「なるほど……そういう話し方なのね?
それで……聞きたい事とは?」
「私も噂(違うけど)……で聞いたんだけど、王女殿下「マリーシアでいいわ」」
マリーシアは、シヤには王女殿下と言われたくなかったのか、被せ気味で言った。
「いや、でも……」
「いいのよ、シヤとは歳も近いし、友達の様に接してほしいから」
マリーシアは顔を赤らめ、早口で話す。
「まあ、いいけど……リンダ侍女長には、言っといてね?
それで、マリーシアは勇者召喚にかかわっているんだよね」
「……ええ、不本意ながら、かかわっていたわ」
シヤの本題の内容に真顔になり、つまらなそうに紅茶のカップをとり飲んだ。
「不本意?」
「そう、不本意だわ。
だって誰も徳を得ない……いえ、1人だけね。
徳を得たのは。
さっきも出てきた、ディアス・マルチーノだけよ」
「ディアス・マルチーノ」
(フィガロさんに聞いていたとおり、か)
「フィガロという最高の魔道士は失う事になり。
召喚した勇者達もフィガロとともに、この国に残らず。
魔道士団は色々な意味で使えない。
残念な事ばかりで、本当に不本意だわ」
ふふ、となにか思い当たるのか、言葉とは合わない、優しさをもつ微笑みをうかべる。
だとしたら。
「どうして……マリーシアは、そのフィガロと勇者達を逃がしたの?」
シヤは、そう思ってしまった。
「……どういう意味かしら?」
マリーシアはちょっとにらむ様に、シヤを見る。
「なんとなく……なんとなくだけど、マリーシアから、そう感じたから、かな?」
(不本意と言いながら、それを望んでいたみたいに聞こえたから)
「そう……ふふ、やっぱり、貴女にはずっとそばで侍女をして側にいてほしいわ。
そう、私は望んでいなかったわ。
だって、そうでしょう?
国一番の魔法の使い手は失う事になり、勇者達は好きこのんで、無理やり異世界に呼ばれる事もなかった。
これは知っているかしら?
特に、勇者召喚では本来の人数ではなく、1人多く喚ばれているのよ?
……まあ、その方のジョブは本気で笑ってしまったのだけど、あれだけは、あとで反省したわ」
「……」
シヤは、「本人です」と言えないので黙る。
「たとえ、ディアスが進言し、父か承諾したとしても、国で行われた事に対してはかかわった者全員に罪はあるわ。
私も、とめる事が出来なかったから、結局は同罪ね。
だから、勇者達にうらまれる様な態度で対応したわ……フィガロがなにやら細工をしていた様だったから」
マリーシアのその瞳は嘘偽りなく、本当にそう思っているという瞳だった。
「そっか……マリーシアがそう勇者達(?)に話したなら、最低でも1人は許してくれると思うよ」
シヤは、マリーシア本人から聞いた言葉で、優しい笑顔になった。
「っ?
そ、そう、かしら?
だとしたら、そうだいいわね?
(ど、どうしてかしら?
今のシヤの笑顔を見たら急に胸が?)」
マリーシアは突然慌てだし、顔が真っ赤に染まった。
「どうかしたの?
マリーシア」
マリーシアが突然の慌てだしたので、シヤは首を傾げた。
「い、いえ……なんでもないわ。
それより!
今日はもう行わなければならない仕事もないから、もし、シヤがよければ、これからシヤの実力を見せていただけないかしら?」
「実力って……護衛の?
それは、いいけど……どこでするの?」
「そうね?
話の最初に戻って、騎士団を相手にではいかがかしら!」
マリーシアは、突然の思いつきにしてはいい案だと思ったので、シヤに尋ねてみた。
「騎士団?
邪魔にならないなら、いいけど……今から?」
「今からがいいわね!」
「そっか……じゃあ、マリーシアが騎士団に説明してね?」
「もちろんよ!
行きましょうか、シヤ?」
マリーシアは立ち上がり、シヤはマリーシアが飲み終わった紅茶の食器を片づけて、2人は執務室を出た。
前書きでも書きましたが、ストックがなくなりました。
書きあげるのに、早くて2、3日。
遅くても一週間くらいかかってしまいます。
せっかく読んでいただけているのに、減っていくんじゃないかと思ってしまいます。
エタるつもりはございませんが、ご容赦ください。
面白い、続き読みたい、気になる、早く書いてと思った方。
よろしければ、評価の星に光⭐️を灯してください。
よろしくお願いします。