31 シヤ、まさかの再会
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シヤの侍女教育を担当したラークに連れられ、早々とプレリューム王城へと登城する事になった。
今、ラークは、門番に中へ入る手続きをしている。
(ここに来るのは四ヶ月ぶりになるな)
突然に、この世界に召喚されて、その際、フィガロさんの計らいで勇者として利用される事なく、あわただしく王城を……この国を脱出するはずだった……まあ、私はオマケの召喚者で、向こうの世界で理不尽に殺された仕返しを考え、残ったんだけど……さて、どうしようか?
「どうかしたのか?」
手続きが終わり戻ってきたラークは、立ち止まって、城を見上げるシヤを不思議に思い、声をかけてきた。
「……いえ、立派で綺麗な王城だなと思いまして」
「ん~、まあ、そうだな。
僕も初めて登城した時は、そう思ったよ。
さぁて、僕達もここからはちゃんとした言葉つかいに戻さきゃな。
と、いってもシヤは全然崩さないから、僕だけだけど……なあ、固っ苦しいままだと疲れないか?」
「……別に」
「ふ~ん?
君、本当に冒険者?
冒険者なら、もっと荒々しく野暮ったいと思っていたんだけどな。
まあ、シヤが侍女の依頼を受けてくれてよかったよ。
まさか、冒険者から、こんな大当たりを引けるなんて思わなかったからな。
……おっ?
許可が出たみたいだな……シヤ、行こうか」
許可を取りにいった兵士が戻ったきたらしく、それに気づいたラークは、シヤとともに王城の中へ入っていった。
しばらく城の中を歩き、ある部屋でラークはノックし、ドアを開けて中に入った。
「ラーク、ただいま戻りました。
と……侍女長もおられましたか。
報告します。
商業ギルドに依頼し受けた冒険者を1人、護衛侍女として連れてまいりました。
シヤ、中に入って」
「……失礼いたします」
シヤは中に入り、侍女らしく一礼し、顔をあげた。
中には、座っていても真っ直ぐ折れない針金が入った様な、メガネをかけた老紳士と、テーブルを挟み、こちらも姿勢のよい30代の女性……侍女長が、こちらを見ている。
「……ほう?」
シヤを上から下まで目を通し、軽く驚く紳士。
……なにやら、満足気に頷いてる?
「ラーク、そちらの方が?」
侍女長も伺ってきた。
「ええ、一昨日、報告ししました。
冒険者のシヤさんです」
「シヤと申します。
生誕祭までのあいだ、よろしくお願いします」
シヤはもう一度、一礼し挨拶をする。
「ええ、私は侍女長を勤めています、リンダと申します……今のところは、礼節は問題なさそうですね。
シヤさん……といいましたか?
ラークから、貴女が侍女としての実力に太鼓判をおすと聞いていますが……そこのラークはちゃらんぽらんなところがありますからね?
私からも貴女の実力を見させていただこうと思っております」
ちらり、とラークを見て告げる。
「え~ひどくない?」
ラークは、侍女長の言葉に目を向く。
「どうせ、貴方の事だから、途中から馴れ馴れしく話しかけていたのでしょう?
シヤさん……という訳だから、細かなところとか注意しなくてはならないところとか、見させてもらいます」
二週間の講習が目に見える様にわかるのか、ため息をつきながら、リンダは言う。
「わかりました。
改めて、よろしくお願いします」
なんとなくリンダの苦労がわかった、シヤは苦笑しながら、三度目の一礼をした。
「……思った以上の出来ですね。
細かな注意点は多少ありますが、それは大きな問題に繋がる事はなく、意識して直せば気にするほどの事でもないでしょう……ラークの報告に書いてありましたが、シヤさん。
貴女、三ヶ月間だけでなく、生誕祭が終わっても本当侍女を続けませんか?」
リンダは頬に手をあて、感心した軽いため息をはく。
「……最大限の賛辞、ありがとうございます。
ですが、私は世界を見て歩きたいと思っておりますので、ご遠慮させていただきます」
「そう……ですか。
本当に残念ですね。
もし、気が変わったなら、いつでも言ってくださいね?
今日は、ここまでにして……これから、貴女に護衛侍女として、ついていただこうかと思っています、お方に会わせようと思います。
ですが、その前に、その侍女服を着替えに参りましょうか。
ついて、いらっしゃい」
リンダは、シヤを連れ部屋を出て、別の部屋で、まったくほつれも汚れもない真新しい侍女服を用意した……ここは、侍女達の更衣室らしい。
シヤは用意された侍女服に、同じ様に新しい下着を見て、どうしようかと思った。
(これ……たしか、ドロワーズだったかな?
……まあ、スカートで暴れるのに、これなら見られても大丈夫、かな?
ま、向こうの世界の短パンだと思えばいいか)
シヤはため息をはき、新しい侍女に着替え更衣室を出た。
「では、参りましようか?」
リンダは、シヤが更衣室を出てきて、きちんと着用出来ているか確認し、再びシヤを連れ目的の場所に向かった。
「……侍女長、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「なんです?」
「これから、私に会わせるという方は、どちらの方なのでしょう?」
「ふふ……とりあえず、先に向かいましょう。
今、言わなくても、すぐにわかりますから」
ピタリと立ち止まって、シヤに振り向き、少し意地の悪い微笑みで答え、再び歩きだす。
3回ノックしたあと、ドアが開き、リンダは中にいる侍女に伝えるよう言葉を交わす。
「では、シヤ。
中に入りましょう」
リンダと、シヤは、侍女が開けたドアをくぐり中に入った。
「マリーシア王女殿下、これから生誕祭までの間、マリーシア王女殿下の護衛を含む侍女として、そばにつかさせていただく、シヤでございます」
「シヤと申します。
以後お見知りおきを」
リンダの紹介で、シヤは王女に向かい一礼をした。