03 見捨てられた、5人とオマケ
三話目です。
一話目は0時に
二話目は8時に投稿しています。
まだの方は、そちらから
前半は、千里視点。
後半は、士也視点。
謁見の間へと着いた私達を迎えたのは、前方、数段高い場所に立派な玉座に座る、恰幅の良い豪華な衣装を纏い、頭には王冠、指には大きな宝石がついている指輪をしている人物……侮蔑な目で見下ろしているのは間違いなく、この国の国王だろう。
その横に立つ、外部の光を吸収したような輝く綺麗な金色の髪に、艶のある真っ赤なドレスを纏う美しい女性は、王女かな?
青い瞳で、国王と同じように私達を見ている。
「ふん……我の前で、膝をつかない事は、今回は許そう。
さて……宰相よ。
この者達に、状況の説明を」
国王は、さぞ面倒臭そうに言った。
……そういえば、前の3人と私達以外は膝をついているわね。
「はっ」
王女と、国王を挟む反対の位置に立つ口元に髭をはやした細身の男性……宰相と呼ばれた男は、国王に一礼をし、こちらを向いた。
その目は、私達を見定めるような目で見て、話を始めようとした。
「待ってくださいませ、お父様。
ここは召喚の指示を出した、わたくしが、この者達に説明をしますわ」
「ふむ……いいだろう。
宰相、ここはマリーシアに任せる」
「はっ」
宰相は、再び国王に向き直り一礼した。
「ふふ……お父様、ありがとうございます。
さて、もうわかったと思うけれど、
召喚儀式を行わせたのは、わたくし、マリーシア・エレム・プレリューム……この王国の第一王女です。
この度、貴方を召喚したのは、わたくし達、王国の敵にあたる魔物や、魔族。
そして、それらをまとめる魔王の討伐を、私達の代わりに行ってほしいのですわ」
国王に微笑み、こちらに振り向いた王女……マリーシアは、声高々に言った。
「……質問を、よろしいでしょうか?」
軽く手をあげ、私、松井千里は、マリーシアに尋ねた。
「……ふん、まあ、いいでしょう」
説明を遮られ、不機嫌な表情でマリーシアは許した。
「ありがとうございます。
では……まずは、何故、私達が召喚されたのでしょうか」
「そうね……一言で言えば、偶然かしらね?」
「偶然、ですか?」
「ええ、そうよ。
召喚儀式を行った時、ちょうど貴方達が死んだ時……タイミングがあったのでしょうね?」
「しかし……私達は争いのない世界から来ました。
そんな私達に戦う力などないと思うのですが」
この言葉は嘘だ……少なくとも秋雨は古流の格闘術を受け継ぎ、願は弓術を修めている。
「そうなの?
まあ、それは今からわかる事だわ。
魔道士長……あれを始めてくださる?」
「はい……それでは」
私達の横で膝をついている、ここまで私達を連れてきた緑色の髪の魔道士は立ち上がり、一礼し、控えている部下に指示を出した、
用意されたのは、ハンドボールくらいの水晶玉が乗った台を2つ。
1つは、私達の前に。
もう1つは、私達と国王がいる玉座の中間辺りに置かれた。
「今から1人ずつ、この水晶に手を当てていただきます。
手を当てた方の能力が、あちらに置かれている水晶玉から宙に浮かびあがります。
そして、貴方達の能力ですが……元の世界で死んだ器ではなく、こちらで得た新しい器による能力ですので、もしかしたら戦う能力を得ているかもしれません。
それを、この水晶玉で確認させていただきます」
説明する魔道士長の言葉に、私は納得した。
なるほど、テンプレだわ!
でも、だったらチートとは言わないけど、それなりの能力はほしいよね?
理解した私達は頷き、まずは秋雨が水晶玉に手を当てた。
ネーム:アキサメ・トウホウイン
ジョブ:剣士
レベル:1
生命力/18 魔命力/13
筋力 /10 敏捷力/12
知力 /8 器用 /7
「こ、これは……」
秋雨が水晶に手を置いた事で、もう1つの水晶から空中に、秋雨の能力が浮かびあがり、それを見た魔道士長は顔を青くして、驚いている。
見た感じ、チートって思えないかな?
魔道士長の顔色もそれっぽいし、秋雨で、こんな感じなら私達も、かな?
とりあえず、全員、手を置いてみましょう。
それで出たのが、これ。
ネーム:ガン・ワタセ
ジョブ:弓術士
レベル:1
生命力/13 魔命力/14
筋力 /12 敏捷力/13
知力 /5 器用 /8
ネーム:チサト・マツイ
ジョブ:法術士
レベル:1
生命力/8 魔命力/17
筋力 /4 敏捷力/5
知力 /18 器用 /6
ネーム:ミワ・タケウチ
ジョブ:支援術士
レベル:1
生命力/8 魔命力/15
筋力 /7 敏捷力/10
知力 /9 器用 /3
ネーム:サナエ・キッカワ
ジョブ:回復士
レベル:1
生命力/11 魔命力/18
筋力 /8 敏捷力/9
知力 /6 器用 /8
「ふむ……これでは、この世界の者と、あんまり変わりませんわね?
ハッキリ言って、期待ハズレ……ですわ」
結果を見て、マリーシアは深く落胆のため息を、羽根扇で口元を隠しはいた。
「……そういえば、もう1人、来る予定ではなかった者がいたわね?
……ああ、貴方ですわ。
貴方は、期待させてくださるのかしら?」
マリーシアの言葉にあわせ、魔道士が、俺、八頭士也の前に台を運んだ。
「……」
俺は無言で、水晶に手を置いた。
ネーム:シナリ・ヤガシラ
ジョブ:スライム召喚士
レベル:1
生命力/12 魔命力/22
筋力 /13 敏捷力/13
知力 /10 器用 /11
「……ぷっ?
な、何それ、スライム召喚?
ねぇ、魔道士長……確か召喚士って、ぷぷっ……召喚の前に名前がついていた場合、それしか喚べなかったんじゃなかったかしら?」
ツボに入ったのか、お腹を押さえ笑いを堪えるマリーシア。
「……ええ、その通りです」
「そう……そう、よね?
しかも、最弱の……スライムとは。
さすが……おまけで、この世界……に、来ただけの事、あるわね?」
「くっ、くく……マ、マリーシア。
どうするんだ?
この者達……どうするのかも、マリーシア、お前に任せる……くっはははっ」
よく見れば、マリーシアや、国王だけではなく、周りの魔道士や、騎士達も笑っている。
「そう……ですわね。
はぁ~~~、お腹が痛い。
せっかく呼んだのに、結果がこれとは……本来、処分するところでしたけど、ここまで笑わせる道化がいるとは。
いいでしょう……貴方達を解放します。
魔道士長、この者達に、生きる為の術を教えて差し上げなさい。
あと、魔道士長、残念だけれども……わかっていますわね?」
「はい、マリーシア王女殿下」
魔道士長は深く一礼をする。
「これにて、この場を解散します。
……では、お父様、行きましょう」
魔道士長の礼を一瞥し、国王に退去を促す。
「う、うむ、そうだな……ぷふ、行こう、マリーシア」
マリーシアは、国王、宰相を引き連れ、謁見の間から姿を消した。
俺は、ただそれを、冷めた目でまわりの状況を見ていた。
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ここまではプロローグ的な話です。
明日からは1日一話でいくつもりです。
よろしくお願いします。