28 シヤ、実力を調べられる
アリア視点→ギルドマスター・オリバー視点。
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「では、シヤさんはそちらに。
ミリア、貴女も向かいのソファーに座っていなさい」
先輩は2人にそう言って、自分は紅茶を淹れる為、お湯を沸かし始めた。
「先輩、私が」
ミリアは、座ろとしたソファーから立ち上がりそう言った。
「かまわないから、座っていなさい。
……さて、今さらですが、紹介し遅れました。
私は、受付嬢の総括の1人、アリアと申します。
隣は、今回、シヤさんの担当をしているミリアです。
これから、この王都冒険者ギルドを拠点として活動されるなら、このミリアにお願いします。
それでは、お湯が沸くまで、シヤさんに質問をいくつか」
アリアが、ポットに火をかけ、ミリアの隣に座り自己紹介し話を始めた。
「……はい、なんでしょう」
「ああ、そう緊張しなくても結構ですよ?
まず、貴女のカードには登録した日が10日前となっていますが……本当ですか?」
「えっ、10日前?」
ミリアは驚く。
「ええ、10日前よ。
ミリア、貴女も知っているでしょ?
冒険者カードには、冒険者の名前、年齢、ランク登録日、登録場所が書かれている事を。
そしてそれ以外にも、討伐した魔物の各ランクの数が倒した時点で記録されるの……シヤさんの場合、カードにランクFが138体、ランクDが97体、それにランクCが51体って記録させているわね……この数は異様、よ?
売却に出されたカードは、倒した数よりも少ないわね。
まあ、それは自分で武器や防具に必要な分を避けておくのも、自由だからいいだけど」
そう言って、シヤを見る。
「シヤさん、このカードの素材で考えられるのは……貴女、東の大森林にいたのね?
それも何日も……どうしていたのかとか理由を聞いても?」
「もちろん、いいですよ。
実は……」
シヤは設定している内容を話しする。
大陸の山奥で、武術の師匠に育てられ、最近、一度世界を見てこいと言われ、大陸から船を1ヶ月乗って、この地におり港町で冒険者として登録、翌日から1ヶ月船で鈍った身体を鍛え直すのと、魔物になれる為10日間、森を通ってきたと話した。
この説明で調べられたらバレるのは、大陸から船を1ヶ月乗ってきた記録を調べられたら、嘘がバレる。
が、この設定を考えた時、フィガロと相談して、そこまではギルドも調べないので大丈夫だと承認されている。
「なるほど……それで。
そうなると、シヤさんの実力もさながら、見合ったランクもあげなくてはなりませんね。
ちなみに討伐した魔物は、全部、貴女1人で?」
「仲間……ギルドに登録していないパーティーと組んでいたんじゃないかって事ですよね?
パーティーは組んでいません。
ただ……子供の頃からの仲魔がいます。
スン、出てきて?」
そう言うシヤの上空に魔方陣が現れ、ぼよんとシヤの膝の上に一匹のスライムが落ちた。
「デカっ?」
落ちてきたスライムを見て、ミリアが驚く。
「ビックスライムですか?
じゃあ、貴女は……召喚士?
それとも、テイマー?
少し鑑定しても…………と、その前に、お湯が沸いたようですね。
いったん休憩しましょう」
お湯が沸けたのに気づき、アリアは立ち上がった。
「どうぞ」
アリアは淹れ終わった紅茶を、テーブルの上、それぞれの前に置き、紅茶と話の続きを出した。
「えっと、私はテイマーです。
この子はスン……私の相棒です。
結構、強いんですよ」
「テイマーですか。
そのスライム……スンですか?
鑑定してもよろしいでしょうか?」
「ええ、構いませんが」
「では、失礼して……」
アリアは、テーブルを回り、シヤの横にきてスンにふれようとする。
「私、対象に触れなくては鑑定が出来なくて、失礼ながら、触らせていただきます。
……これは?」
ビックブルースライム:スン
レベル:42
「……かなりレベルが高いですね?
シヤさんのレベルも尋ねても?」
「私ですか?
私は、現在44です」
「44?
それは……その年齢でもの凄い事ですね」
「先輩……44ってどれくらいなんでしょう?」
驚いているアリアに、ミリアはレベルの高さにピンとこないのか、首を傾げる。
「そうね……だいたい、A、またはBランク上位に入る冒険者くらい……かしらね」
「Aランク?
……嘘?」
シヤの方を見て、目を見開くミリア。
「嘘ついてどうするの?
……シヤさん、もしよければ、シヤの鑑定もしてもよろしいでしょうか?
私の鑑定はレベルが低いので触れなくてはわからないうえに、名前とレベルしか、わかりませんが……一応、判断の基準となりますので」
「いいですよ、どうぞ」
シヤは右腕を差し出した。
「ありがとうございます……確かに44、テイマーですね。
……わかりました。
少し、席を外しギルドマスターに話をして参ります。
少々時間がかかりますので、どうぞ、紅茶をお飲みお待ちくださいませ」
シヤのカードを手に取り、部屋を出て行った。
「なるほど、わかった。
それで……アリア?
お前はどうしようと思っているんじゃ?」
ギルドマスターの部屋、主であるマスター・オリバーは顎髭を撫でながら、アリアの話を聞き、アリアの考えを聞く。
「私は……シヤさんのランクをあげるなら、こういう場合のセオリー通り、Cランクにあげるべきかもと……ただ、レベルを確認しただけですので、彼女の実力を見る為、どなたかに手合わせをしたほうがいいかと」
アリアは目を瞑りながら、思っている事を伝えた。
「なるほどの……いい判断じゃ。
ただ……その相手、ワシがやろう」
マスターの執務椅子から立ち上がり、壁に飾ってある鉄の塊の様な剣を手にとって、部屋を出ようとする。
「な?
マスターが相手をされるのですか?」
アリアは、オリバーの言った意味を知り驚いた。
「なに、ワシとて70歳になっても、まだまだ現役よ!」
アリアのほうに振り向き、オリバーは笑う。
「それは知ってます。
実際、手が空いたら御自身で魔物討伐に出掛けられるのですから……だからといって、なにもオリバー様が相手とる必要はないのでは?」
「確かにな?
しかし、気になるのよ……そのシヤという娘がな」
「シヤさんが?」
「うむ」
オリバーは思う。
確か、10日程前に王城で禁断の勇者召喚された者の中に、スライム召喚士という一風変わったジョブを得た男がいたと。
魔物を操る召喚士とテイマー、男と女、真逆のジョブに性別か……本当に偶然かの?
「ま、対峙すればわかるかの?
アリア、行くぞ!」
「は、はい」
出て行ったオリバーを追いかけ、アリアも部屋を出た。
2人は、シヤとミリアがいる部屋に行き、説明し2人を連れ、地下の訓練場に向かい対峙した。
「さて、さっき説明したが、シヤの実力を見る為、ワシが……この王都冒険者ギルドマスターのオリバーがお主の相手をする。
別に勝てとは言わんよ……それなりの実力を示せばよい!
ワシを納得させたら、ランクをCランクに上がる事を認める。
よいな?」
オリバーがそう宣言する。
シヤ、ミリア、アリアだけではなく、訓練場の回りの観戦席でワイワイと集まった外野の冒険者達に聞こえる為に。
最初はギルドマスター室から出てきたオリバー達に、ギルドに来てから、いろいろと目立っていた、このギルドで見た事のない美人な新人が連れていかれたので、ギルド内にいた冒険者達がなんだと思い、地下の訓練場に集まったという訳だった。
そして、冒険者達は驚きで目を見張る事になる。
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