25 アルベルト・クロス
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そろそろストックがなくなります。
頑張って書きたいと思ってます。
よろしくお願いします。
アルベルト・クロスはクロス侯爵家三男として産まれた。
貴族、その上に侯爵家の一員としては、産まれながら魔力値が貴族の平均値より低く、家族からはもちろん、侯爵家で働く者達からも軽んじて見られ、まわりからも馬鹿にされてきた。
だが、アルベルトには、産まれながらにして、ある特別な力を持ち、それを気を許した者以外には隠し通していた。
だから、侯爵家の者達は誰も知らない。
その力は、『真贋を知る瞳』で鑑定魔法でも調べ、知られる事はない特殊な能力だった。
その瞳で、話かけてくる人物の言葉はもちろんの事、攻撃のフェイントも、幻覚や隠蔽による撹乱も多岐にわたり、常時知る事が出来る。
瞳の力により、自分には魔法の才能も著しくないと知り、『身体強化』と、全身と己の身に纏う武具や防具に魔力を宿し纏う、『魔力纏』の魔法2つを使い熟練させ、同じ様に剣術の腕を研鑽し続けた。
年を重ね成人し、騎士団に入団し、武勲を重ね続け、国王に見初められ騎士団長になり、気づけばクロス侯爵家で一番の出世頭となって、2人の兄を蹴落とし、クロス侯爵家の跡を継ぎ、妻子にも恵まれ順風満帆な生活となる。
30歳になる頃、先代総騎士団長から、総団長に選ばれ引き継いた。
その時くらいから、ある情報が耳に入る。
平民にて王族に近い魔力値をもって産まれた者が、冒険者をやめ、魔道士団に入団したと報告があがり、しばらくすると、その者は、我が騎士団へといくどと足を運び、騎士団との連係に、対人戦での魔法の相手、怪我をした騎士の治療等をさせてほしいと言ってきたらしい。
しばらくは相手にしていなかった騎士達も、偉ぶらない魔道士の相手をする様になる。
一対多数で行う訓練は、非道いモノだった。
いくら魔力値が王族に近いモノだとしても、魔力は有限だ。
実際、魔道士は魔力切れを起こしかけ、気を失う事も多々あった。
見かねた私は、その魔道士……フィガロに直接声をかけ尋ねた。
そこまでする必要はあるのか、と。
フィガロは苦笑しながら答える。
「身体の筋肉を限界まで酷使して、十分な食事と睡眠を取れば筋肉が増強されるのと同じで……魔力切れをして回復すると、ハッキリした形は見えないけど、微妙に魔力値が増えるんですよね。
それに、レベルが上がると、今度はそりゃもうハッキリとわかるんです。
……ただ、最近はピークを迎えたのか、微妙な感じですね。
それと対人戦は、経験と実力がモノをいいますから……必要な事なのです。
アルベルト・クロス総騎士団長殿」
「……そうか、わかった。
いいだろう」
アルベルトは訓練の休憩を行っている、魔道士に一喝する。
「ここにいる全騎士に告ぐ。
ここにいる魔道士フィガロは、魔道士に珍しく、まともな人格の持ち主の様だ。
よって、これからの共同訓練では、真面目に相手をし、馬鹿にするのではなく、しっかりとお互いの経験を増やす気持ちで行動する様に……以上だ」
こうして、騎士団とフィガロの関係は持ちつ持たれつとなり、数年後の魔道士同士の勝負で、フィガロが優勝し、魔道士長となる。
だが、現在、フィガロは、副魔道士長ディアス・マルチーノの策により、魔道士団をやめ、異世界召喚された勇者を連れ、この国を離れようとしている。
しかも、禁術である召喚魔法により、その命もそう長くないらしい。
召喚魔法が行われる数日前、フィガロはこうなるであろうと、私達のもとに来て、最後の挨拶をしている。
国王王命を授かったディアスが、私達騎士団のもとに、フィガロの追跡、捕獲のをディアスの下で動く様に言ってきた。
この5日間、東の大森林の中、フィガロが残した魔方陣を調べまわり、フィガロ邸から繋がっていた魔方陣を見つける。
魔方陣を調べている途中、ある人物が森の中から抜け出てきた。
その人物は、近くにいた魔道士に恫喝され、狼狽えている。
いや……そう演技をしている。
私の『真贋を知る瞳』には、そう見えた。
また、その人物……冒険者カードにより、シヤと判明……は、なにかがおかしい。
言っている事は本当なのに、嘘を交えて話している様だ。
私は間に入り、シヤを庇う。
ディアスもここに来た。
改めて、シヤを見る。
女性に見え、違うと『瞳』は伝えてくる。
……つまり、女性に見えるが……これは変装なのだろう。
ただ、どう変装しているのかがわからない。
おそろしい技術だ。
ディアスが、私を追い払う。
シヤと、ディアスはなにやら話している。
……どうやら、ディアスは、シヤにプロポーズしているみたいだ。
信じられないとまわりの騎士も、魔道士も驚いている。
狼狽えている(演技)シヤは、断りつつ森の中に逃げた。
シヤが、本当に男なら……私なら嫌だ。
そりゃあ、逃げるな。
その後、私は騎士14名を連れ、北の港町に向け先駆けの馬を走らせている。
もうすぐ、北と北東に別れる道にさしかかる途中、狼の雄叫びが聞こえ、前方に狼の魔物、灰狼の群れが集まっている。
偶然、木の上で気配を消し、こちらを覗いているシヤを見つけ、視線が合う。
完全に気配を消しているが、私の『瞳』は、こういったモノも見つける事が出来る。
とりあえず、10名で狼の討伐を訓練として戦わせる。
次に、シヤのいた場所に目を向けだが、すでにその範囲にはいない。
考える。
なぜ、シヤがあの場所にいたのか、魔方陣のところに来たのか……偶然とは思えない。
つまり、狼の群れもシヤに関係があるとしたら、事前の雄叫びは、シヤのスキルか?
考えられる事は……シヤは、こちらの事を知っている。
もしシヤが、勇者召喚で異世界から来た6人の1人なら、フィガロに聞いていたのかもしれない。
だが、6人の情報には、あの様な髪や瞳の色の女性は……いや、男かも知れないんだった……該当しない。
が……今、わかった。
木の上で、こちらを見ていた時、側にスライムがいた。
スライムがかかわる人物は、1人……オマケで召喚されたという男性はスライム召喚士とジョブが判明し、王女達に笑われたと報告があった。
やはり、男……か。
どう変装したのか、わからないが……フィガロ達から1人離れたのだろうか?
こちらに残ったのは、どういった理由か……次に会うときは話す事が出来るだろうか……楽しみだ。
部下が狼を討伐……途中で狼は逃走……し終わる頃、ディアス達も、私達に追いつく。
ディアスは怒りまくるが、知った事ではない。
狼を無視して、さきに行けば、ディアスのもとに残してる部下達が不憫だ。
当然、ディアスはその場合に対しても怒るだろう。
どちらにせよ、同じ事だ。
いつも通り、のらりくらりと言い訳をして、私達もディアスとともに、北の港町へ向かう。
ついた時には、入れ違いでフィガロ達は大陸に向かい、船に乗った後だった。
やはり、シヤは、私達がフィガロに追いつかない様に、狼を仕向けたのだと判断する。
面白い奴だ……次はどう動く?
場合によっては、手を貸す事も、敵対する事もあるだろうさ。
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