24 シヤはもっと強くなる。
シヤ視点、アルベルト視点、シヤ視点の順です。
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「はあはあはあ……すうっ……はあーーー~~~。
……なんで、こうなった?
洒落になんねぇだろ?
うわぁ、凄い鳥肌たってる」
どんな短時間のトレーニングでも、ここまで息がきれない息を整え、腕を見ればモノスッゴい鳥肌がたち、思わず士也の声と口調に戻ってしまったシヤだった。
さっきのやり取りを思い返してみる。
『いや、待て。
私からも、話を聞きたい。
ああ……総団長はもう行ってもらってもかまわない。
話は、たいした事ではない。
個人で聞きたいだけだ』
むっ……来るか?
『君……シヤだったか?
北の港町で、フィガロという男と、連れの……君と変わらない歳の少年少女を見なかったか?』
やっぱり、来たな?
とぼけて過ごしてやる。
『フィガロ?
少年少女?
いえ……知りませんし、見てません。
来たのは一週間前ですし……』
『そうか……君は、シヤといったか?』
納得した?
……いや、まだなにか聞きたそうだ。
『……はい』
『ふむ……いや、なんだ……そのだな?
君は現在、誰かこ、恋人……つき合いのある男性はいるのたか?』
……はっ?
なに言ってんだ、コイツ?
『えっ……はっ?
こっ、恋人?
い、いえ……いません。
師匠のもと、修行ばかりで男性とはつきあう事もなかったですから』
と、とりあえず、演技しなきゃ……ちゃんとゴマかせた?
変な事言ってない?
『そ、そうかっ!
君は平民なのだな……私の名前はディアス。
ディアス・マルチーノだ。
このプレリューム王国、筆頭公爵家嫡子である。もし君がよければ……私の妻に……側室になるが、私の妻にならないか?』
はぁ?
いや待て、本当、なに言ってんだコイツ?
えっ、なに?
本気で……言ってるみたいだ。
とりあえず、演技続けて………………逃げる!
この後、ディアスがなにか言っているのも、なんとなく聞こえていた。
「いやいや、ないわーーーー!
もう一度会えたらって……会いたくねぇ~~~。
こんな事になるなら接触しなきゃよかったな」
はぁ~、何度目となるため息かわからず、とりあえず落ちついて、今後の事を考えよう。
「……そういえば、このあと、北か北東に向かうって言ってたな。
船に乗るのに許可が出るのは、4、5日はかかるんだったな……別れてから、今日が3日。
あの魔方陣の場所から、普通なら1日半かかるって言ってたっけ……ギリギリかな?
……スン、出てきて」
落ちついた事で、声、口調をもとに戻しスンを召喚した。
「な~に~?
ごしゅじん」
スンが、召喚の魔方陣から出てシヤに抱きつく様に甘える。
知力もあがって、念話の話し方もだいぶスムーズになってきたね。
「よしよし……癒される~。
スン、これからちょっと邪魔をするのに、力貸してくれない?」
スンをなで、気持ちを落ち着かせながら、これからの事を伝える。
「じゃま~?」
「そう、邪魔。
スンを初めて呼び出した、あの場所から港町まで、フィガロさんが魔法で補助したから、あの時は1日も短縮出来たけど、追いかけている魔道士達はそれを出来ないはず、でも、騎士団が早がけで向かうなら1日くらいでつくかもしれない。
だから、この森を騎士達が抜ける前に、罠を仕掛けて時間を稼ごうと思うんだ」
「わな?
よくわかんないけど、いいよ~」
「本当?
じゃあ、場所の目安はついているから行こうか」
この3日間で少しは森林の把握をしていた為、北と北東にわかれる前の道へと向かった。
「よし、ここでいいかな?」
シヤは地面を見て、馬の足跡や馬車の轍などを見て、まだ騎士達が通っていない事を知り、探索魔法で辺りの状況を調べた。
「お、おあつらえ向きに灰狼の群れがいくつかあるね……それにやっぱり早がけの先発隊が、こちらに向かって来てるか。
数は……10……いや、15人か。
とりあえず、始めるとしよう……スン、用意はいい?」
「だいじょうぶ、いいよ」
ぼよん、と一跳ね、アピールするスン。
「よし、じゃあ……せーの『雄叫び』!」
『『アオオオーーーーオオオン』』
シヤとスンは、スンの吸収スキルで得た『雄叫び』を使用して、いくつか群れを呼び寄せた。
これでスンもスキルを使用すれば、声を発する事が出ると証明出来た。
もし、出来なくてもいい様に、保険でシヤも『雄叫び』を発動していた。
(もし、出来なくても可愛いからオッケーだね)
スンを見て微笑み、狼達が集まってくる気配を感じたので、シヤとスンは木に登り、隠れて気配を消し状況を見る。
道を挟んで現れた狼達は、お互いに牽制し合い一発触発だ。
そこへ、先発の騎士達が馬で駆けつけた。
狼達は牽制をやめ、騎士を睨む様に唸りつける。
シヤの狙い通り騎士達は、狼達と戦う事になりそうだ。
「チッ、さっきの雄叫びはこれかよ?
総団長、どうします……これ、50近くいますよ?」
騎士達は前方で集まっている灰狼の群れから目を離さないまま馬から降り、総団長アルベルトに問う。
「時間がないが……仕方があるまい。
とりあえずは討伐を行う。
後続では、魔道士達を庇いながらだと、この数は厳しいだろうからな……それに」
アルベルトはチラリと木の上を見る。
「それに、なんです?」
「いや……なんでもない。
まずはお前達10人だけで相手とり、これもまた訓練と思え!
それと奴らは素早い上に、連係もとる。
気を抜くとやられるぞ!」
「「「理解っ!」」」
騎士達と灰狼の戦いは始まった。
「……もう、行ったか?」
アルベルトは、さきほど見た場所をもう一度見て、ニヤリと笑う。
「ーーッ、やばっ!?」
木に隠れていた私を、しっかりと見て笑った総騎士団長から逃げるべく、急遽、その場を離れた。
探索魔法の範囲ギリギリまで離れ、アルベルトを思い出す。
「あれが、フィガロさんが言ってた。
総騎士団長のアルベルト……か?
確かに、Sランク級の実力者と言われるだけだね……今の私では勝てないかも」
太い枝に座り探索魔法で、騎士達と灰狼の戦いに集中した。
どうやら、アルベルトは戦いに参加していない様だ。
魔道士のフィガロさん個人と、騎士団は最初はとにかく、仲はよかったらしい。
おそらく、アルベルトが参加しないのは、時間稼ぎをしてくれているんだろう。
……気配まで消した私の事に気づくくらいだ。
もしかしたら灰狼を仕掛けたのも気づいているかもしれない。
だとすると、私の正体も気づいているのか?
……どうやって知ったか聞きたいが、それは次に会った時でいい。
フィガロさん達が大陸へ行けるかどうかは、運に任せよう。
これ以上は、手出しは無理だ。
私が事を行うにしても、少しでも強くならなきゃならない。
この森は都合がいいんだ。
さあ、修行再開といくか。
体力作り、技術向上、魔力増加、新しいスキルに魔法の練習、レベルあげとやる事はたくさんある。
こうしてシヤは、この後一週間、修行に精を尽くす。
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