15 宿で夜更かしする、オマケ達
シヤ視点。
あれから1日半をかけて森を抜け、北の国境手前の町に着いた私達は、冒険者ギルドに入り、冒険者の登録をした。
私はジョブをテイマーとして登録し、スンは私がテイムし、仲魔としたビックスライムと報告した。
召喚士と、テイマーの違いは、魔力で魔方陣を描き呼び出すのと、戦って強さをみせ契約魔法で仲魔とする。
本当は、召喚士で登録するつもりだったが、召喚士でスライムしか呼べないと知られたら、異世界から来たオマケの八頭士也とバレるからやめた。
テイマーなら、スライムオンリーで、他の魔物をテイム出来ないと知られても疑われる事もないだろう。
他の冒険者達からは戦力外とみなされ、チームを組めなくなる可能性がある。
と言っても、私はソロの冒険者として動くつもりなので、ちょうどいい断り文句になるだろう。
あとは、移動中でエンカウントし、倒した魔物の魔石や、素材を売り、金に交換した。
執事のレイドに頼み、武具の強化を頼んでもよかったが、素材的にいい物がなく、全て売り払った。
魔物が多数重なった場合は、スンに食べさせて、強くなってもらった。
冒険者に登録した私と、スンのステータスはこちらである。
ネーム:シヤ
ジョブ:テイマー
レベル:1→5
生命力/44(72)12up(60up)
魔命力/42(122)20up(100up)
筋力 /21(53)8up(40up)
敏捷力/17(73)4up(60up)
知力 /14(50)4up(40up)
器用 /19(51)8up(40up)
固有スキル
剣術[投擲術・双剣術]
槍棍術
ジョブスキル
テイム
思念通話
仲魔
ビックブルースライム:スン
レベル:4
スキル
水弾、酸弾
私のステータスのカッコは本来の数値。
スンのスキル2つは、倒した魔物ブルースライム(水属性)から、吸収したスキル。
スライムだから、これを残した。
そのあとは、泊まる宿屋を探し、食事を食べ、宿屋の隣にあった銭湯施設で汚れを落とし(勿論、借りた部屋で、骨格を男に戻して、男湯に入りました)、現在部屋で休憩していた。
部屋割りは、私、東方院、ガン。
チサト、ミワ、サナエ。
フィガロ、レイド。
侍女3人と4部屋借りている。
私は、床に2メートル四方のマットを敷き、また動かし戻した骨格、筋や、筋肉を馴染ませる為に、ストレッチをしていた……この時、東方院と、ガンが顔を赤らめ、私から目を反らせている事に気づかなかった。
コンコンコン
「私達だけど、みんな、いる~?」
「おっ、おう……いるぞ!
今、開ける」
ドアからノックの音と、サナエの声が聞こえ、ガンが、慌ててドアを開けた。
「……なんで、顔赤いのよ?」
ガンの顔を見た、サナエが不思議そうに尋ねた。
「いや……だってさ。
……まあ、3人とも入れよ。
そしたら、わかるから」
「?
おじゃましま~す、って?」
「どうした……の?」
「早く入りなさいよ……あら」
どもるガンに、首を傾げながら中に入り、ストレッチを継続していた私を見て、サナエ達は固まった。
「いらっつ……しゃ~い、みんな来たんだ」
この時、私は床にピッタリと両足を広げ、前に上半身を倒し、背中の上にスンが乗って押していた。
「……あー、うん、わかった。
アンタ達は、悪くない。
悪いのは、シヤっ、アンタよ!」
サナエが、ガンの肩を叩き、私に指をさした。
「……はぁ?
なんで?」
突然の避難されて、私は驚いた。
「あのね、シヤくん。
君は男の子だけど、女の子に変装しているんだよ。
わかってる?」
ミワが、トコトコ近付きしゃがみ、説明する。
「まあ、そうだね?」
私は態勢を戻し、言っている意味はわかるが、わからないので首を傾げた。
「実和、彼、わかってないわよ。
……このあいだまで、あれだけプロファイリングしてたのに、こういう事は気づかないのね?」
チサトも近付き、同じくしゃがむ。
「だから、なにを言っ……て、て?
あー、そういう事か?」
気づいた私は、東方院や、ガンを見て納得した。
「ごめん、気づかなかった。
って、言えばいいのに、馬鹿だなー?」
「「言えるか、馬鹿野郎!」」
更に、真っ赤になって非難する東方院と、ガン。
「うん、言えないね」
と、ミワ。
「言えないわね」
チサト。
「そういうところ、かわんないな~」
サナエは苦笑している。
「う……ごめん」
「でも、シヤくん。
足きれいだね?
全然、無駄毛無いし、つるっつる!」
ミワは、私の足を触りたそうにしながら言う。
「うん、フィガロさんの屋敷で借りた浴室で、脱毛したから」
「えっ?
あの短時間で、こんなにキレイになくなるの?」
「うん、これ使って」
私は立ち上がって、バッグから取り出したボトルをみせた。
「え、これ脱毛剤?
見た事ない、商品ね」
チサトは受け取り、ラベルのないボトルを眺める。
「そりゃまあ、実家で作った物だから。
でも、それ、サナエも作れるよ」
「うそ!」
突然、話をふられたサナエは驚く。
「本当、ちょっと待って?」
再びバッグから、ノートを出し、なにやら書き込み、そのページを破りとり、サナエに渡した。
ついでに、ストレッチで使っていたマットをまるめ、バッグに戻した。
「……うん……うん、確かに出来るかも」
紙に書かれた内容を見て、サナエは頷く。
「サナエの家に伝わる薬を、ちょっと改良したヤツだからね。
それ、あげるから、なくなったらサナエに作ってもらって。
使用法も書いたから」
「わかった……わかったけど、新たに疑問が増えたわ」
チサトは頭が痛そうに、こめかみを押さえ、バッグに指をさした。
「そのバッグ、私達と同じ学校指定のバッグだよね?」
「そうだね」
「容量おかしくない、それ?
なんで、マットが入るの?
それ以外も、スッスッと出してるし、見た目すかすかじゃない!」
「バレた?
さすが、チサト。
ナイス慧眼!」
私は、右手の親指を立て、ウィンクした。
「これ単に、フィガロさんにもらった、収納アイテムと同じだよ」
「バッグは、フィガロさんからもらった物じゃないでしょ」
「まあね、これは私の兄がバッグを買った、その日にやったんだよ。
ほら、城を出て、馬車の中で話したと思うけど、向こうの世界にも、神代の魔法が残っているところは残っているって、んで、うちの家に残っている魔法の1つに、こういう袋状の物に空間の付与で、内容量を増やしてあるんだ」
「どれくらい入るの?」
「ん~、だいたい5メートル四方で、最大5キロの重さ、かな?」
「えー、めっちゃ入るじゃん!
お兄さんって、正也さんだよね?
相変わらす、シヤに優しい」
サナエが、うらやましそうにバッグを開け、手を肩まで入れ確かめている。
「……まあ、優しいけど、あの人、私を女だと勘違いしてんじゃないかと、時たま思う」
「「「あははは」」」
私が言った言葉に、みなが笑う。
「……なんで笑う?」
「いや、だってね~」
サナエが苦笑する。
「そうね、お兄さんの気持ち、なんとなくわかるわ」
チサトも頷き、同意する。
「シヤくんが、かわいいからじゃないの?」
ミワが結論を言った。
「……やっぱり、それしかないか。
正月、地方の大学から帰ってきた時、残念そうにしてたからな」
言われた事、その時の状況を思い出しため息が出る。
「こんな事になるなら、シヤで出迎えてやったらよかったな」
「「「……」」」
「ごめん、余計な事言った。
……あー、うん。
聞きたい事あるなら、侘びとして答えれる事は答えるよ」
「……本当?」
黙りうつむいていたサナエが、ニヤッと笑い、顔をあげた。
「うん……あれ、あんまり落ち込んでない?」
「そうね……それほど悲しい気持ちにならないわね。
死んで、こっちに来たから補正がかかってるのかしら?」
チサトは考えながら答える。
「私も、そうかな~?
ガンはどう?」
サナエも頷き、ガンにふる。
「俺も、そうだ。
家の事など忘れていたな」
「たぶん、これからも、たまにしか思い出す事ないんじゃないか?」
東方院も頷く。
「それも、ちょっと悲しいけど……私もそう思う。
それで!
なんでも聞いていいの?」
ミワは話を打ち切り、更に近寄りながら尋ねる。
「……ほどほどで、お願いします」
私は苦笑しながら、よかったと内心、ため息をはいた。
こうして、日が替わり、夜更けまで笑い、からかい、からかわれながらしゃべりつくした。
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