マジックデュエル2on2
「なぁあんたら!」
突如空き地の外から高校生と思われる男子二人が話しかけてきた。
「あんたら。北高の魔法使いだろ」
「そうだけど。そういうあんたらは西高か?」
「ああ」
京一達の街には六星六至の名を冠する学校が東西南北、四校ある。
それぞれの学校は制服が違うので一目瞭然だ。
「何か用?」
「いやちょっと用事でここまで来たんだけどさ、有名人の姿が見えたから……」
「ああ」
京一は愛子の方をちらりと見た。
「今年の四校トレジャーハント戦で一年生初参戦にして優勝という大快挙。しかも相手の導石をただの一つも砕く事なく優勝というのは史上初」
相手が愛子の実績を語る。
この街の魔法使いにとって東西南北の四校戦は一大イベントだ。
そこで前述の通りの実績を上げた愛子は既に有名人だった。
「なぁ、良かったら、なんだけど。ツーオンツーやってくれない? ダメなら全然いいんだけどさ」
ツーオンツー。二対二の決闘。
唐突なようだが、これはバスケでワンオンワンをやっていたらツーオンツーを申し込まれたという程度の感覚で、魔法使いにとっては珍しい光景ではない。
相手の導石を砕くことを目的とした試合なので、本気の殺し合いをするわけでもなければ、大怪我をすることもまず無い。よってPTAも何も言ってこない。
「どうする? ドクター。あいつらお前に言ってきてるぞ」
「私はあまり気乗りしませんが……。紅津先輩はやりたそうですね」
京一はニヤリと笑って言った。
「分かる?」
「ええ。顔がやりたいって言ってます」
「いいか?」
愛子はやれやれといった表情で沈黙した。肯定の意味だ。
「悪いな」
京一は相手に振り返る。
「受けるってさ」
「まじか。サンキュー。んじゃ……」
相手はカバンから赤色の透き通った石を取り出した。
導石だ。
導石も宝石と同じで様々なカラーバリエーションがある。
「俺らが申し込んだんだからな。導石は俺らが出すよ」
そう言うと相手は取り出した四つのうち、二つを京一に投げる。
「あ。って言うかさ。今更悪いんだけど……。何年生?」
相手は京一に向かってさりげなく聞いてきた。
京一はギュッと拳を握る。
その名が知れ渡っている愛子に対して自分は……。
――俺は……弱い。
分かっている。比べる相手が悪いのだ。
相手は一年生にして優勝という大快挙を果たした天才。
京一の四校トレジャーハント戦での最高戦績はベスト六十四。
四校戦はベスト六十四からスタートするので、つまりは一回戦負けだ。
しかし、四校戦はそもそも各四校で予選を勝ち抜いた十六人×四=六十四人で行われる。つまり四校戦に出場するだけでも十分に凄いと言えるのだ。
しかし、そうは言ってもやはり……。
相手も悪気があって聞いているわけではないのは明白だ。
京一は極力表情を変えないよう努めて答える。
「二年」
「お。タメじゃん。なら気にせずに。片腕一個ルールでいいだろ?」
「ああ」
京一は受け取った二個のうち、一個を愛子に渡す。
「んじゃ一般的なルールで。導石は一人一個。二人とも導石を砕かれたら負け。首から上を狙って傷つけた場合も負け」
「ああそれでいい」
二人は少し距離を開けお互い向き合う。
愛子はカバンと共に、白衣も簡単に畳んで置いた。
全員、導石は右腕の付け根辺りに付けている。
「先輩」
「ん?」
「分かってると思いますが、これはトレジャーハント戦ではなくマジックデュエル団体戦。私は大した力にはなれません」
「いや、そんな事……」
「ですからせめて最初に情報を渡しておきます」
「情報?」
「あのお二人、かなり強いですよ」
「え?」
「西高の開切名先輩と御友英太先輩です。開先輩の方は今年の四校マジックデュエル戦でベスト三十二ですね。どちらも剣士型の魔法を好んで使われます。お二人共積極的に前に出るスタイルですが、開先輩の方がややその傾向が強い」
京一は思わずぽかんとしてしまうと同時に、背筋にぞくぞくとしたものを感じずにはいられなかった。
このデータ収集力。解析力。これこそ。
――北高の狂人。
「開先輩の弱点ですが……」
愛子がそこまで言った所で京一は右手を広げ愛子を静止した。
「先輩?」
「サンキューなドクター。でも悪い。これ以上は何か……。フェアじゃない気がした」
愛子は一瞬きょとんとしたが、やがて本日二回目の、やれやれといった様子で薄く笑った。
「情報は立派な武器ですよ先輩」
「分かってる、つもりだ。だからホント悪い」
「ふっ。まぁいいでしょう」
「で、こんな事言っといてなんだけど、やられそうなら、チームとしての勝ちは任せるぜ」
「任せられても困るのですが。まぁ善処はします」
「もういいか?」
相手が聞いてくる。
「ああ」
「んじゃあ。号令も大雑把に行かせてもらうぜ。三、二、一……」
お互いの準備が完全に整った所で火蓋は切られた。
「スタート!」




