プロローグ
人が、消えていく。
光の粒となって消えていく。
魔法使い、能力者。
そう呼ばれる人達の最期。
肉体は消え失せ、この世から消え失せ、そして人々の記憶からも消え失せる。
最初からその人などいなかったかのように世界が書き換えられる。
それが魔法使いとしての死。
今、一人の魔法使いが魔法使いとしての死を迎えようとしている。
それを呆然と見つめるもう一人。
キラキラと七色に輝く光の粒が、倒れている体から立ち上っていく。
夜空に宝石のごとく輝き、散っていく、それはまさに光の芸術とも言うべき美しさだった。
生命の最後の輝きがなせる芸術。
それは見る者を魅了してしまう美しさだった。
しかし、そんな芸術など今は関係ない。
このままでは目の前の魔法使いは死んでしまう。
拳を握り、歯噛みする。
――こんな結末など、絶対に認めない。
右手をゆっくりと差し出す。
これから行う事は神をも恐れぬ大罪なのだろう。
しかし、それがどうした!
神が怖いなら地獄に行けばいい!
もう一度言う!
こんな結末など、絶対に認めない!
ここで何も出来ずに終わるくらいなら!
一生後悔を引きずって生きるくらいなら!
どこまででも堕ちてやる!
右手から黄金色の光がゆっくりと広がっていく。
――還って来い。