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「あ~あ、怖いもの見たさが勝っちゃったか」

「アオイさん!」


 ミドリが目を開けると、そこに居たのはオオカミではなく、カンテラを持ったアオイの姿だった。

 アオイは、カンテラを床の上に置き、ミドリの手を引いて立たせる。


「オオカミさんは?」

「そこに居るよ?」

「へっ? キャッ!」


 アオイがミドリの背後を指差すと、ミドリは驚き、アオイの腕にしがみついた。

 アオイはカンテラを持ち直すと、ミドリにひとこと囁いてから、次いでオオカミに話しかける。

 

「このオオカミは賢いから、怯えなくて良いよ。――ヴィーイストゥ、マインナーメ(僕の名は)?」

「アオイ」

「ヴィーイストゥ、イアナーメ(彼女の名は)?」

「ミドリ」

「ヴィーイストゥ、ダインナーメ(君の名は)?」

「……エリ」

「大変よく出来ました。――という訳さ」


 したり顔で説明を終えるアオイに対し、ミドリは腕を離し、そこから推定される一つの仮説を口にする。


「もしかして、このオオカミさんは、エリさん?」

「大正解! ――ワイルドでカッコイイよ、エリちゃん」

「ふざけないで。こんな姿を見られて、穴があったら入りたいくらい恥ずかしいんだから」 

「野性味があって素敵だけどなぁ。――そう思わないかい、ミドリちゃん?」

「えぇ。でも、驚いたわ。エリさんは、夜になるとオオカミさんに変身するのね」

 

 ミドリが少しばかり誤解していることに気付くと、アオイは認識を訂正する。


「毎晩、こんな風になるわけじゃなくて、良く晴れた満月の夜に、月の光を浴びたとき限定だよ。まぁ、例外もあるけど」

「余計なことまで言わないで。ハラワタを引きずり出すわよ?」

「オウフ! その姿だと、冗談に聞こえないよ」


 姿は違えど、いつもと変わらない愉快な会話を始めたふたりに、ミドリは、すっかり落ち着いた。

 すると、恐怖心に塗り潰されていた好奇心が再び目覚め、ミドリは、エリに質問する。エリも、平生通りに答えていく。

 

「どうして、こんな薄暗い地下に居たんですか?」

「決まってるじゃない。この姿を見たら、誰だって、さっきみたいに驚くからよ」

「でも、あらかじめ変身するところを見ていれば、そこまで驚かないんじゃないかしら?」

「あのね。人狼は、普通の人間にとって悪しき存在と決まってるの」

「じんろう」

「狼になる人間のことだよ。もっとも、エリちゃんの場合は、変身後のオオカミ要素が強すぎるけどね」

「あぁ」


 途中でアオイが補足すると、ミドリは納得して感嘆をもらす。

 このあと、ミドリはふたりを唖然とさせる言葉を口にするのだが、それについては、話を改めよう。

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