表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/60

016

「猫、ネコ、ねこ……」


 書斎に造りつけられた書棚の前に立ち、ガラス戸の向こうに並ぶ背表紙を指で追い、時おり扉を開けて一冊二冊引き抜いて机の上に置きながら、ミドリは猫に関連する書籍を探し集めている。

 そして、最下段にあった百科事典を一冊引き抜いたとき、その奥に小さな鍵穴があるのを見つけた。


「あら? ここにも、扉があるのかしら?」


 ミドリは、手にした百科事典を机の上に置くと、首からチェーンを外しながら書棚に戻り、カーペットの上に片手と膝をつき、小さい方の鍵を鍵穴に差し込んでみる。


「入った! あっ、あれ?」


 鍵を右に左にと何度か回してみるが、どちらにも鍵は回らなかったので、ミドリは首をひねりつつ鍵を引き抜き、アルファベットのイーの字のようになっている鍵先を見つめる。


「この鍵じゃなかったのね。ガッカリだわ」


 落胆しつつ、ミドリはチェーンを元通りに首に掛けて留め金を嵌め、鍵を胸元にしまう。そのあと、机に向かい、ペン立てにあるドイツ製の鉛筆を拝借すると、メモに使えそうな紙を探し、引き出しを下から開けはじめる。

 引き出しの中には、計算尺やコンパス、ゼムクリップなど種々雑多な文房具類が、几帳面に整頓されて入れられている。


「あった。これを使おう」


 上から二段目の引き出しを開けると、中にはリングメモが入っていた。ミドリは、それを引き出しから出して机の上に置くと、上から順に引き出しを閉めていく。

 最下段まで閉めてメモを取ろうとしたとき、ミドリは、最上段の引き出しにも、小さな鍵穴があるのを見つけた。ミドリは、その段の引き手に指を掛けて手前に引いてみるが、ガタガタというだけで、まったく開く気配が無い。


「ここも、鍵が無いと駄目なのね」


 ミドリは、引き出しの前に屈みこむと、胸元から小さい方の鍵を引っ張り出し、その鍵穴に入れて回してみる。が、先程と同様に、錠が開く様子は無い。


「やっぱり、違うのね。きっと、大事な物が入ってるんだわ」


 鍵を胸元に戻すと、ミドリは立ち上がり、鉛筆を片手に百科事典を開き、猫について調べはじめた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ