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為物語  作者: かんきち
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第7話 兄妹-きょうだい-

「うん。いいけどいきなりどうしたの?お兄ちゃん」

「大事な話があるんだ」

とよと凛那ちゃんの会話が電話越しに聞こえてくる。俺はただその様子を黙って聞いていた。まあこっちの声は入らないようにしてるから叫んだりしてもなんの問題もないんだけどね。

「実はずっと昔から俺さ…」

そこで一旦とよの言葉が止まった。なんか緊張するなぁ。まあ恵に告白した時に比べれば全然たいしたことないけど。

「り、り、りん…」

おお!遂に来るぞ!

「りん、りんご飴作ってみたかったんだよね〜」

こ、こいつ土壇場でチキりやがった。俺でも言えたんだからもう少し頑張れよ。

「なに?お兄ちゃんの大事な話ってそれの事なの?あ、でも作ったら凛那にも頂戴!」

「お、おう」

大丈夫か?完全に話が間違った方向に進んでるぞ!

「てかお兄ちゃんがりんご飴食べてるの見たことないんだけど。やっぱり違う事言おうとしてたの誤魔化したとか?」

ギクッ!聞こえはしないけどとよは今絶対こんな反応してるだろうな。でもこれはいい感じに話が戻った。今度こそ行け!とよ!

「そんな事ないよ凛那、俺結構りんご飴好きだよ」

ここから30分くらい告白とは全く関係の無い話が続いた。もうこいつはダメかもしれない。今頃小五郎と誠一郎はどう思ってるんだろうか。ブー!

『まだかとよ』

誠一郎からグループにメッセージが届いた。あーやっぱそう思いますよね。

『お前これで告白できなかったらため以下だぞ〜』

小五郎のメッセージも届いた。いやため以下は余計だ。

「凛那!」

とよの声が急に大きく聞こえてきた。遂に覚悟を決めたのか?やっぱり俺以下ってのか気に食わなかったのか?いやきっとそうじゃないと思っておこう。

「急に大きい声出してどしたの?お兄ちゃん」

「さっき言った大事な話なんだけど、り、りんご飴の話じゃないんだ」

「それはなんとなくわかってたよ。凛那だって13年間ずっとお兄ちゃんを見てきてたんだから。なんか凄く言いづらい事なんだと思うけど凛那なんでも聞くよ!」

凄いとよの事思ってる妹なんだろうなぁ。なんかとよが惚れたってのも少しわかる気がする。それと…俺もこんな妹欲しい!いやそうじゃなくて、これできっととよの覚悟も決まっただろ。

「行け、今だ。とよ」

向こうに俺の声は聞こえないが、思わず呟いてしまった。するととよはさっきよりも小さいが穏やかで冷静な口調で話を始めた。

「凛那、俺はお前の兄だ。本当に凛那はできた妹だよ。俺なんかの妹で凄く勿体無いくらいに。それでも俺は凛那が妹で良かったと思ってる。今迄もこれからも凛那が妹だっていう事は俺の誇りだ。でも一つだけ凛那が妹じゃなければ良かったって思う事があるんだ。だから今迄ずっと言えなかったんだけどさ…」

そこから少し間を開けてとよは遂に言った。

「凛那、俺はお前が好きなんだ。家族や兄妹としてじゃなく1人の女として」

その言葉から30秒くらい沈黙が続いた。そして凛那ちゃんの声が聞こえてきた。

「それは違うよお兄ちゃん。お兄ちゃんが凛那のお兄ちゃんじゃなかったらまずお互いにお互いの事知らないままだったと思う。それにお兄ちゃんは他人から見たら変態で頭悪いしスポーツ出来ないしゲームも下手だしモテないし何一ついいとこ無いじゃん」

とよは無言で凛那ちゃんの言葉を聞いてるようだったけど、一つ欠点を言われる毎にグサッ!っていう音が聞こえる気がしてきた。

「でも私はお兄ちゃんの良い所いっぱい知ってるよ!でもそれはお兄ちゃんの妹だったからこそ知れた事だと思うの。お兄ちゃんが凛那のお兄ちゃんで本当に良かったと思ってるよ。だから凛那はお兄ちゃんにはこれからも凛那のお兄ちゃんのままでいて欲しいの」

凛那ちゃんは今迄で一番強く言っていた。多分凛那ちゃんにはとよへの信頼や兄妹愛、家族愛などの感情が物凄くあるんだろう。きっと凛那ちゃんは誰よりもとよを信頼してる。兄として。だからこそ兄妹以外の関係でいるのは嫌なんだ。いつも喧嘩したり悪態ついたりしても結局は信頼し合ってる。それが兄妹ってもんだ。俺も兄ちゃんは勿論。いつも喧嘩ばっかしてる姉ちゃんの事も凄く信頼してる。といっても俺やとよのように信頼し合ってる兄妹ばかりじゃない。けど、俺は兄妹同士信頼し合ってる関係が好きだ。だから信頼し合ってる兄妹の関係が壊れるのを俺は見たくないんだ。ピッ!

「テッテレーン!ドッキリ大成功ー!」

これが俺の切り札、実はドッキリでした作戦だ。これで俺が企画したと言って罪を被ればとよと凛那ちゃんの関係はきっといつも通りに戻るはずだ。

「この企画…」

「この企画は俺が企画したものだ」

俺の声を遮り声が聞こえてきた。誠一郎の声だ。誠一郎、なんでお前が罪を被るんだ!?

「せ、誠一郎さん?」

凛那ちゃんも驚いているようだ。

「こんな企画作ってしまってとよも凛那も本当にすまなかった。凛那もとよを責めないでくれ。全部悪いのはこんな事をやらせた俺だ」

「謝らないで下さい誠一郎さん。仮にこれが本当だったとしても嘘だったとしても凛那はお兄ちゃんの事も誠一郎さんの事も責めませんよ」

そこから凛那ちゃんは明るい声になって続けた。

「でもちょっと驚いちゃいました。お兄ちゃんロリコンだし寝言で凛那の事言ってたりするんですよ。しかも途中誤魔化したりしたじゃないですか。そんなんだからもしかしたら本気なのかな?ってちょっとだけ考えちゃいました。だからドッキリは大成功ですよ!」

「そ、そうか」

「それじゃ凛那、俺そろそろ自分の部屋戻るよ。凛那も早く寝ろよ〜」

「うん」

とよは凛那ちゃんの部屋を出て行った。そこから少しするとドアの音が聞こえて

「自分の部屋に戻ったよ。もう切るか?」

いつもよりも弱々しいとよの声が聞こえてきた。

「お前そんなに元気なさそうで大丈夫なのか?さっきはなんの役にも立てなかったけどお前の励ましくらいいくらでも付き合うぞ」

あ、確かに小五郎なんもしてないような…

「あの場の話を聞いてくれただけで感謝してるから大丈夫さ」

まあとよが感謝してるならいいか。俺も何も出来なかったしな。

「ごめん誠一郎が罪を被る形になっちゃって。本当は言い出した俺が罪を被るべきだったんだ」

俺も謝った。

「いや俺の方こそすまなかった。最初の一言をお前に言わせたようなもんだからな」

「2人共、悪いのは俺だ。俺は今迄通りでいられるかもしれないけど元々は俺が凛那に告るって言い出した事がいけなかったんだ。挙げ句の果てに誠一郎が罪を被る羽目になったんだ。周りの事を考えずに告った俺が全部悪い」

「いやお前らが頑張ってる時に俺だけ何も出来なかった。そんな俺が一番クソ野郎だ」

誠一郎も豊太郎も小五郎も友達の為に自分で罪を被ろうとしている。ただ俺がここで何かを言って収められるのか?

「俺はとよと幼稚園の時からの長い付き合いだ。だから凛那の事も小さい頃から知ってる俺が罪を被るのが適任だ。付き合いが長い分為永や加藤があの役をやるよりもただの悪ふざけとして終わる確率が高い。そしてとよの気持ちは一度でも告白しなければ収まらなかったから遅かれ早かれ告白はしなければいけなかった。全てを考えたら俺はさっき方法が一番の最善策だと思った。だから仲間同士での罪の被り合いはもうやめだ」

「そうだなやっぱり俺たちは楽しく話してるのが一番だろ!」

誠一郎の言葉に対し、俺はこのくらいの事しか言えなかった。

「誠一郎の言う通りかもな。今度は俺の番だし俺も漢らしい所見せないとな!」

「ありがとうみんな」

そのとよの声は泣きながら言っているように聞こえた。今日はいっぱい泣けとよ。俺も昔フラれた時は1人でめっちゃ泣いたから。

「じゃ今日はこの辺で終わりにしよう。また小五郎の事で話し合おう」

「オッケーため!」

「わかった」

「うん。今度は小五郎がフラれる番だしね」

「うるせーとよ」

「それじゃあな」

そこでグループ通話は終了した。するとすぐにブー!ブー!と俺の携帯が鳴った。とよからだ。

「もしもし」

「ため、さっきLINEが入ったんだけど、零二はこれから毎日丸之内と登校するらしい。どうする?このままだと危ないぞ!」

「そうか、じゃあ俺は彼氏の特権束縛を使わせてもらう!」

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