第5話 忠告-ちゅうこく-
今日は春休み最終日。これから小五郎たちとテーマパークに行く予定だったんだけど、豊太郎君がまだ寝てるようなので起こしに行かなければならなくなってしまいました。と言う訳で俺と小五郎と誠一郎は朝6時に自転車で豊太郎君の家に向かっています。
「大丈夫なのか?こんな時間に行って」
小五郎が不安そうに言った。
「昨日あいつが6時には親は2人とも仕事行くから寝てたら起こしに来いって行ってたから行くんだけどな」
誠一郎も少し不安そうだがそう言った。
「でも妹はどうすんだ?あいつなんで妹好きなのにそこ考えてないんだよ」
小五郎もそう言っているが確かにその通りだ。妹はもう学校だとしてもこんなに早くはないだろう。てか、ん?
「おいまて!あいつんちの鍵は誰が開けるんだ?」
俺がそう言うと誠一郎は少し考えた後
「もしかして妹がもう起きてて鍵は開けてくれるとかなんじゃないのか?」
と言った。
「それなら妹に起こしてもらえばいいんじゃないか?」
俺は思った事をそのまま言った。
「それじゃあ完全に起き上がるまでに時間がかかるから引きずってでも連れてってくれって事なんじゃないか?」
さすが誠一郎だ。確かにそれなら辻褄が合う。
「おう確かにそうかもな!じゃ、そうと決まったら行こうぜ!」
小五郎もそう言って俺たちはとよの家へ急いで向かった。
その頃、豊田家では…
「お兄ちゃんいい加減起きて!誠一郎さんたちと出かけるんでしょ?」
「う〜ん、凛那〜、凛那〜」
「なんで寝言で凛那の事読んでるの?まじキモいよお兄ちゃん。てかもういいから早く起きて」
「う〜ん、凛那」
「もうお兄ちゃんダメだわ、自分から起こしてとか言ってたのに」
「お、やっと着いたな。駅から結構遠かったな」
小五郎がそう言うように駅から豊田家までは結構距離があり、自転車で20分くらいはかかった。
「誰がインターホン押す?」
小五郎が言った。確かに人の家のインターホン押すのは緊張するから嫌だよね。
「じゃあじゃんけんで決めるか?」
今の俺の提案よくみんなもやった事ない?誰がインターホン押すかでじゃんけんするやつ。
「いや俺が押すからいい」
流石誠一郎。かっこいい。やっぱりモテる男は違うねぇ。
「いや俺が押すよ」
お、小五郎も男らし…ん?もしかしてこの流れは!
「お、お前ら凄いな。じ、じゃあ2人でじゃんけんかな?」
俺はそう言ってあの流れを誤魔化そうとしたが、小五郎と誠一郎は言え!って感じの目線を送ってくる。俺は2人に目線を合わせないように目をそらしたがしばらくすると
「じゃあ俺が押すよ」
と小五郎が口を開いた。これ俺が言うまで永遠に続くパターンのやつだ。いや待てよ、先に俺が言えばなんとかなるんじゃないか?
「いや俺が…」
「俺が押すよ」
と誠一郎の言葉を遮って俺は言った。すると小五郎と誠一郎は待ってましたとばかりに「どうぞどうぞどうぞ」
と言ってきた。結局先に言っても俺かよ。まあもういいや。
「じゃあ押すよ」
俺は2人に向かいそう言うとインターホンを押した。すると家のドアが開いて1人の少女が出てきた。
「こんにちわ、ってあ!誠一郎さん達ですね!どうぞ上がってお兄ちゃん引きずり出してっちゃって下さい」
豊田家のドアから出てきた元気なこの子はとよの妹豊田凛那ちゃん。とよと違って元気でしっかりしてる子のようだ。俺は何回かとよんちに遊びに来た時あったくらいだけど名前は覚えてくれてるのかな?
「お邪魔しまーす」
俺たちは3人はそう言って豊田家に上がった。
「今この家凛那と寝てる人しかいないのにわざわざありがとうございます!」
凛那ちゃんが俺たちにそう言うと誠一郎が
「一応礼儀だしな」
と言った。
「流石誠一郎さんですね。お兄ちゃんとは比べ物にならないくらいしっかりしてて本当にかっこいいです」
やっぱりこういう所も誠一郎のモテる所の一つだよな。まあ凛那ちゃんの場合は普段とよを見てるから余計そう思うのかもしれないけど。
「そんな事ないけど、えーと、なんだ、ありがとう」
誠一郎も少し照れながら小声で返した。見た目だけはイケメンなとよの妹だけあって可愛いからな〜。しかもとよのダメな所が無いからめっちゃモテそう。俺も誠一郎と同じ事言われたらもっと照れてキョドるかもしれないな。
「それにしても凛那ちゃん、前も可愛かったけど更に可愛くなったね〜」
「え?本当ですか?ありがとうございます小五郎さん!」
凛那ちゃんはとても嬉しそうに小五郎にそう言った。
「そうだよ、なあ?お前もそう思うよな?」
!?小五郎は俺の肩をポンポンと叩き急に話題を振ってきた。
「そ、そうだね」
いきなりだったからこれしか言えなかった。すると凛那ちゃんは戸惑いながら
「あ、ありがとうございます。た、た、たかかず?さん」
バリバリ名前覚えられてないじゃん!“た”しかあってないよ、為四郎だよ。まあ可愛いしかわいそうだから言わないけど。そんなこんなで階段を上って行きとよの部屋の前へ着いた。
「お兄ちゃん入るよー!」
凛那ちゃんはそう言ってとよの部屋のドアを開けた。部屋に入るととよは
「う〜ん」
と唸ってベッドにゴロゴロ転がっていた。
「じゃあ後は皆さんにお願いします。外に引きずり出しちゃって下さい☆」
凛那ちゃんは超笑顔で俺たちにそう言った。女の子って怖いね。すると
「とよー!」
と叫びながら小五郎が布団を剥がしとよを持ち上げ担いでベッドの横の床に下ろした。
「こっからは凛那はちょっと気持ち悪いから見ない方がいいかもな」
誠一郎は凛那ちゃんに忠告した。やっぱりあの強制着替えタイムが始まるな。
「わかりました。大体何やるかはわかってますけど凛那下に行ってますね」
凛那ちゃんは誠一郎の忠告を聞き下に降りて行った。すると小五郎はこれで遠慮なくできるとでも思ったのかとよのパジャマのボタンを外し始めた。全部のボタンを外し終わるととよのパジャマを無理やり脱がした。うわ〜やっぱこれしょうがない事なんだけど汚ない絵面だなぁ。俺が軽くひいて見ていると
「おい、やめろ!なに!?俺そんな趣味ないけど!」
とよがようやく目を覚ましたのか抵抗を始めた。
「こっちだってそんな趣味ねぇよ!」
「ならもう自分で着替えるからやめてくれー!」
こうして強制着替えタイムが終了し、とよは自分で着替えた。
「着替え終わったんなら早く下降りるぞ」
誠一郎がそう言うと俺たちは下に降りた。
「じゃあ行ってらっしゃーい!」
「おう!」
凛那ちゃんが送り出してくれて俺たちは再びテーマパークへと向かった。
色々あったが、俺たちは無事目的地のテーマパークに到着する事ができた。
「じゃあ何乗る?やっぱり最初はジェットコースターか?」
俺はこんな事言っちゃうくらい楽しみにしてました。すると急に小五郎が焦りながら
「おい!ジェ、ジェットコースターはやめないか?どこにでもあんなんあるし今日じゃなくてもいいんじゃないかなぁ」
と言い出した。あ、こいつ絶叫系ダメだったんだわ。それと霊的な類の物もダメなんだった。ならば!
「じゃあお化け屋敷にするか?」
俺は立て続けに小五郎の苦手な物を提案した。これは面白そうだぞ!
「い、いやお化け屋敷とか作り物だしさ〜、あの観覧車にしようぜ?」
小五郎は白々しく言った。
「観覧車は最後っぽくね?」
珍しくとよがまともな事言った。
「そうだな、じゃあ最初はジェットコースターでいいか?」
と言う誠一郎の問いに対して俺ととよは
「いいよ!」
と答え、小五郎は
「お、俺ちょっと腹痛くなってきたからお前らで乗ってていいよ」
とか言い出した。これは止めなくては
「もしかして怖いのか?小五郎」
俺はニヤニヤしながら挑発した。
「いやそういうわけでは…」
「じゃあ乗ろうぜ!そんなに時間かかんないしさ」
「お、おう」
よし、作戦成功。というわけで俺たちは4人全員でジェットコースターに乗る。
「ちょっと緊張するな〜」
「そうだな」
俺と誠一郎は前後でこんな会話をしていたが隣でずっと無言で震えてる人もいた。そしてついにジェットコースター発車!
「あぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!」
加速した途端隣から絶叫が聞こえてきた。そして回転
「うわぁぁぁぁーーー!回るーーー!回るーーー!」
女子の悲鳴みたいな声をあげて絶叫していた。小五郎は回る度にこんな声をあげて叫んでいたが、ようやくジェットコースターのコースは終わったようだ。
「いやー楽しかった」
と俺
「思ったより怖くなかったね」
ととよ
「そうだな」
と誠一郎。
「もう、いや、だ」
とカタコトで小五郎が。これには俺だけでなく誠一郎ととよも面白がって午前中の間はお化け屋敷と絶叫系だけしか行かなかった。そして昼
「そろそろ昼飯にしようぜ」
小五郎がフラフラになりながら俺たちに提案した。
「そうだな」
「うん」
「オッケー」
これには俺たち3人とも同意し、近くにあった昼食の店へ入った。すると注文の品を待ってる時急にとよが真剣な表情をして
「ために関係する事で聞いて欲しい事があるんだ」
と言い出した。
「どうしたんだ?」
俺はよくわからないが言ってみた。
「菊地零二には気をつけてくれ。これは俺からの忠告」
どういう事だ?まあでもこの間自転車ごとこかされて絡まれたりしたからな。
「わかった。忠告ありがとなとよ」
とよも何か知ってるのか?これ以上言わないって事はもう俺と菊地が接触してる事を知ってるのか?
「よくわからないが菊地と為永の共通点は丸之内が好きって事だ。それに関係する事だろうな」
「流石誠一郎だね。察しが良くて助かるよ。零二はためから丸之内を奪おうとしてる。俺はあいつの協力者のふりをしている。だから俺と誠一郎と小五郎でためと丸之内の関係を守ろう。協力してくれる?」
こいつこんなに俺の事思ってたのか?俺も少し感動したかもしれない。
「当たり前だろ。折角為永に彼女ができてもうこんなチャンスないかもしれないんだ。俺たちで守るしかないだろ」
誠一郎、なんか少しディスられてるけどやっぱり仲間想いだ。
「おう。ためのためにみんなで頑張ろうぜ?」
小五郎、ためのためにってなんかダジャレっぽいけどありがたとう。俺はこんないい奴らと友達で本当に幸せものだな。いつかこいつらが困っている時、俺が手を差し伸べる。俺は心にそう決めた。