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為物語  作者: かんきち
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第2話 答-こたえ-

「為永為四郎」

「はい!」

俺は卒業式で大きな声で返事をした。でもはっきり言ってこんなのはどうでもいい。俺は昨日恵に告白してフラれたんだよ。こんなことを思いながら卒業式を終え、教室に戻った。

「ついに俺らも卒業したな〜」

小五郎は教室に入るなりすぐに俺たち3人に向かって言った。卒業式の日に大体1人はこういう事言う奴いる気がする。ちなみに小五郎は卒業式で大号泣していた。

「考えてみると結構早かったな」

「そうだね誠一郎。それより小五郎が大号泣してたのは本当に笑いそうになった」

「みんな結構泣いてたよな誠一郎?」

「確かに泣いてる奴は結構いたけどお前程号泣してる男子はいなかったな」

「え〜?誠一郎までそんな事言うのかよ」

「泣いてたのは事実だろ?」

「それを言われると何も言えなくなるだろ〜」

教室の至るところで卒業トークが聞こえるが、今日はがらにもなくこいつらまでこんな話をしている。本当は俺もそんなトークをしたいところだけど、昨日の事を思うとやっぱり気が重い。

「はぁ~」

俺はおもわず大きいため息をついた。

「どうしたんだ?ため」

とよが聞いてきた。

「どうしたもこうしたもないでしょ〜」

と俺が返すと小五郎が空気を読み答えてくれた。

「触れてやるなとよ。こいつ昨日丸之内に告ってからずっとこんな調子なんだ。まだ答えは返ってきてないっていうのにさ」

ちなみに俺はあの後後輩の所に行き返事を伝えた。


「昌子、やっぱり俺には好きな人がいるから付き合えない。丸一日も待たせたのに本当にごめん」

「大丈夫ですよ為永先輩。逆に好きな人がいるのに丸一日も迷ってくれた事が嬉しかったです」

「そうじゃないよ。ただ俺が優柔不断だっただけだよ」

「それでもいいんです。私の事が好きじゃなくてもその場で断らなかったのは為永先輩の優しさだと思ってるんで」


俺は昌子とは付き合えないとちゃんと言った。あの時迷ったのはリア充になりたかったからなんて口が裂けても言えなかったけど気持ちはとっても嬉しかった。恵に告白してフラれたのは分かってる。あのまま後輩と付き合えば俺もリア充になれたのもわかってる。だが答えが返ってきてない今は、1ミリでも可能性がある限り俺は恵を諦めることができない。まあホントのとこ1ミリの可能性も無いんだけどね。

「はぁ〜」

俺はまたため息をついてしまった。すると小五郎が励ましてくれた。

「まあもしかしたら成功するかもしれないだろ?」

「いやないって」

俺が言う前にとよが先にそう言った。この野郎!俺よりもモテないくせに!

「そういやとよ、昨日なんで為永が告白しに行く前に帰った?」

誠一郎が聞いた。そういや昨日こいついつの間にかいなくなってたな。まあどうでもいいけど。

「昨日はちょっと用があってね」

とよ申し訳なさそうにそう言った。

「そんな事言ってために負けんのが悔しかったとかじゃないのか?」

と小五郎が冷やかしで返した。

「まあためが成功なんてするわけないからそれはないかな」

と話が続いているが正直今の俺にはとよのいたいなかったのやりとりはどうでもよかった。しばらくボーッとしていていると担任が来て卒業式後の最後の話を終えるとその場で解散となった。

「んじゃ約束通りみんなで写真撮ろうぜ!」

小五郎がそう言うと4人で男子トイレに行き和式便所をバックに俺達は写真を撮った。

「こんなとこ選ぶの俺達だけだろうな」

と苦笑いで誠一郎。確かにな…

「いやトイレは1番思い出深い場所だ。何回ここで俺とためはふざけて殴り合ったことか」

と小五郎。そんなこともあったな…

「この和式便所は俺の相棒だ!」

ととよ。お前はもういいや…

パシャッ!と小五郎の携帯で一枚だけ撮った。

「後でみんなにグループで送るよ」

「わかった」

と誠一郎が答えると俺達はトイレから出た。トイレから出ると早速

「藍先輩!この手紙受け取ってください」

と誠一郎に声がかかった。相変わらず誠一郎はモテるなぁ…

「ありが…」

と言い終わる間もなく

「藍先輩私のも貰ってください!」

「私のも!」

とどんどん後輩達が誠一郎に押しかけていた。羨ましすぎる。すると引き続き小五郎にも

「加藤先輩!写真撮ってください!」

と声がかかった。

「おうわかった!」

「じゃあ次私と撮りましょう加藤先輩」

小五郎もなかなか人気あるなぁと思いながら周りを見てみると他の皆も写真を撮ったり、第2ボタンをあげたりと青春を謳歌していた。俺は相変わらず女の子からは何も声がかからない。

「ま、いいし。高校で青春を謳歌するしー」

俺はそう言って自分で開き直った。

「いやそれは無理だね。お前は俺と一緒で高校でも非リアの道を進む男だからね」

ここにももう1人女の子から全く声がかからない男がいた。みなさんもわかっていると思いますが豊太郎くんです。

「でもお前と同じ扱いは嫌だ」

「いや事実だから」

「いやまだわからない。俺にも声がかかるかもしれない」

そう言って俺は最後まで希望を持っていたが気づけば教室に残っていたのは俺達4人と恵とその友達の三田圭子だけだった。

「ほら言っただろ?やっぱり俺とお前は同じだ」

「う、うるせえ」

事実だからこれ以上こいつに何も言い返せないのが辛い。いや待てよ。一回も女の子から声がかからなかったのは悔しいがこれはある意味好都合じゃね?今教室には人が少ない。しかもお互いの友達しかいないこの状況で答えを聞きに行かない手はない。昨日は答えを聞く前に恥ずかしくなって発狂して帰ってしまったが、ここで聞きに行かなきゃ男じゃない!俺はフラれると分かっていながらも恵に答えを聞きに行った。

「あのさ恵、昨日の答えなんだけどさ…」

そこから少し間を空けてから俺は続けた。

「ノーって言っても自殺とかしないから大丈夫だよ」

俺はそう言って重い雰囲気の場を和ませた。そこから少しの沈黙の後、恵が口を開いた。

「お願いします」

え?どういうこと?何が起こったのか全くわからなくなった。え?今恵が言ったのか?だとしたらそれって…それって?それって!

「ふぁぁぁぁぁぁ」

俺は叫んでしまった。俺は恵と付き合ったのか。そして俺は生きてる中で一番の喜びを感じた。

「おお!ついにやったぞ!」

「やったな為永!」

「え?これ夢だよね?ために彼女ができるわけなんてないよな!?俺はこんなの認めないぞ!」

そう言って1人教室から出て行った奴もいるが、小五郎と誠一郎も嬉しそうに祝いの言葉を言ってくれている。そうか俺はついにやったんだな…






その頃為四郎たちの教室の外で1人の男はまた電話をしていた。

「おい、予想外の事態が起きた」

「なんだ?」

「ためが丸之内と付き合った」

「なんだと?俺の動揺を誘っているつもりか?」

「そう熱くなるなよ。本当の事を言っただけだ」

「ふん!まあこの際そんな事はいい。為永はお前のとこまで戻してやるよ。あいつに恵にこれ以上近づかれるのは不愉快だからな」

「ああ、頼んだよ零二」

そう言って電話は切れた。






今の気分はすごい最高だった。だって恵と付き合うことができたんだぜ?今まで妄想していたのが現実になるのかと思うとすごくワクワクしてくる。そんな気分でいると小五郎が

「第2ボタンとかあげたら?」

と俺に言ってきた。

「えぇーまじ?」

確かにあげた方がいいよな。だが周りを見渡すと恵はこの時もうこの教室にはいなかった。

「丸ノ内あの後すぐ帰ったぞ。お前さっきまで興奮しすぎてなんも視界入ってなかったみたいだな。だから今じゃなくて今度あげればって意味で言ったんだけど…」

どうやら小五郎の口ぶりからすると小五郎も誠一郎も気づいてたようだ。すると外を見ていた誠一郎が

「駐輪場の近くにいるの丸ノ内じゃないか?」

と言った。

「本当だ!今ならまだ間に合うぞため」

この時正直第2ボタンはあげたくなかった。いや、あげたくなかったわけじゃないよ?恥ずかしいだけだ。

「ほら、いけよ」

と誠一郎が。

「青春したいんだろ?」

といつの間にか戻って来たとよが。なんかいきなり協力的だなこいつ。おもしろがってるとしか思えないな。

「めぐみー!って叫べ」

と小五郎が。

「え?もしかして本気でやんの?」

俺はそう言って抵抗したが、3人は無言で期待の目を俺に向けてきた。あ、これやらなきゃダメなやつだ。

「はぁ〜」

もう告白もしたし答えも聞いたし、それに比べればこれくらいどうってことないよな。俺はベランダに出て叫んだ。

「めぐみー!」

ぐはっ、もう後戻りはできない。なんやかんやいざ話しかけるとなると緊張する。

「ちょっとこっち来てー!」

俺がそう言うと恵はこっち寄りに来てくれた。

「投げろ!投げろ!投げろ!」

と小五郎もテンションが上がっているのかいつもより早口で急かしてくる。

「ボタン投げるよー!」

そう言って俺はボタンを教室から外にいる恵に向かって投げた。ヒューンと第2ボタンが空高く舞い上がり飛んでいった。しかし俺はノーコンだった。ちゃんと恵の所に届くどころか、投げた自分でさえ何処に落ちたのかわからない。恵は探してくれていた。

「お前探させちゃまずいだろ」

と小五郎にも言われた。すると誠一郎が

「あれじゃないか?後ろにあるやつ」と恵の3メートルくらい後ろを指さして言った。おかげで恵は無事ボタンを拾ってくれた。俺は恵だけじゃなくみんなに向かって

「ありがとう」

と言った。しかし小五郎が

「最後一言!最後一言!」

と言ってきたから最後に俺はこう言った。「好きだよ!」

空は曇っていたが俺の心は快晴のように晴れ晴れしていた。そして今日心に誓った。俺は恵のことを一生大切にし続ける。

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