『デート』
「で、どこ行くんだ?」
「ん〜、とりあえず、私は服が買いたいかなぁ。」
「あ!私も欲しい服があるのです!」
ショッピングモールに全員が集まったところで、朱にこれからのプランを尋ねる。
「いやぁ流石女子。こういうところに来ると、女の子っぽい会話が間近で聞けて良いねぇ。」
「お前はどこに行っても変わらなくて本当にうんざりだよ。」
相変わらず女に目が無いこいつは放っておいて。
「あんたはなんか無いのか?」
「私は別に...」
「...?」
なんだ?珍しく調子が悪いな。
「先輩!桃と一緒に買い物行きませんですか?」
「え?...あぁ良いけど。」
「やったぁ!じゃあ早速行きましょうです!」
「あ!ちょっと桃、ずる...」
朱が何か言っていたが、桃は振り返りもせずに俺の手を引いて歩いていく。
「お、おい桃。朱なんか言ってるけど、良いのか?」
「大丈夫なのです!さ、行きましょう。」
ーー
「あーあ。先越されたな朱。」
「う、うっさいわよ!別に桃が誰とどこ行こうが勝手だし、私には関係無いし。」
「ほーほー。じゃあ篠崎さんとどこ行っても関係無いと?なぁ?篠崎さん。」
「そうですね。玉原さんの反応も面白いですし、黒木君とは、そろそろデートの一つでもしたいと思っていたので、ちょうど良いかもしれません。」
「なっ、このっこ、このっ(キスはした癖に〜〜!!)」
「(...朱、篠崎さんに弱ぇ〜)」
ーー
「先輩これとかどうです?」
「ん〜、どれも似合ってると思うぞ?」
「どれもじゃダメなんです。先輩が選んでくれないと...」
で、桃に引っ張られて入った服屋の中。
桃に提案された二着を前に、俺は頭を抱えていた。
片方は白を基調としたワンピース。定番だが、清楚でよく似合う。
もう片方は、黒いコート。靴と組み合わせれば、大人っぽさが際立つ。
さぁ考えろ。この二択。正解はどっちか。
否、女子が
「ねぇねぇどっちが似合う〜?」
と聞いてきた時は、既に服は選んでいて、ただ彼氏の選択が欲しいだけだと聞いた。
なら...
「ん〜、白は桃の可愛い感じに合うし、黒いのは大人っぽくて桃のあまり見ないところが見れるから、どっちも良いと思うぞ。」
見ろ!この究極の「どっちでも合う」
両方を均等に褒めた選択だ。これで正解でないはずがない。
「...あ、うぇ...か、可愛い...大人っぽい...」
「ど、どうした?大丈夫か?」
あれ?おかしいな?ここは
「ありがとうございます先輩!センスありますね!」
ぐらいを期待していたのだが...
「ご、ごご、ごめんなさいです!」
「え?え?え?なんで?」
桃は、持っていた二着の服を俺に押し付けると、とんでもない速さで走って行ってしまった。
嘘だろ?究極の選択が...
「...って、追いかけないと!」
そして俺も全力で走り...
「...」
出す前に持っていた服を戻して桃を追いかけた。