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ヲタクな生徒会長

『あなたには、私にリア充を教えてもらいます!』


...から翌日の放課後。


「それで何?結局あんたは悠谷をどうしたい訳?」


「どうも何も、彼には私の協力者として、色々頼み事を聞き入れてもらいます。」


「なんなのそれ!?あんたが何を求めてんのかぜんっぜん分かんない!」


今日の朝に朱に相談してみたところ、なぜかこうなった。別に、篠崎さんに放課後に来るように指定された場所を教えた訳でも無いのに、どこから情報を仕入れたのか...


『あんた、この後視聴覚室に呼ばれてんでしょ。私も行くから。』


と、こちらの驚きも事情もガン無視でここまで付いてきた。

そして開口一番...


『あんたが悠谷に変な命令をしたんだって?』


と喧嘩腰で突っ掛かり、今に至る。


「(一体こいつは何をしに付いてきたんだよ...)」


もうそろそろ校内のチェックをしに、各先生方が巡回を始める頃だ。教室に生徒が残っていても、さほどの注意は受けないが、さっさと帰るに越したことはない。


「大体なんで悠谷なのよ!他にも男子は山程いるでしょ!?」


「なにも考え無しに彼を選んだ訳ではありません。彼が適人だったのです。」


「こいつの何処が適人よ!あんたと真逆よ真逆!普通〜の普通。超普通よ!?コレの何処に何かの適正値がある訳!?」


...おい、言っていい事と悪い事。分かるよな?


「私は、彼のその普通に適正さがあると言っているんです。」


おお、あんたまでその言い草か。あ?


「どういうことだ?」


流石にこれ以上こいつらに好き勝手話させると、俺の精神が持たないので、俺の方から話をつなぐ。


「私は確かに、貴方とは真逆です。」


うん。俺から切り出してもダメだった。


「ですが私は、その普通を求めていたんです。」


「...は?」


予想外の言葉に、ベタ過ぎるほどのクエスチョンマークを浮かべる。


「私が求めているのは、リアルに充実した、つまり、リア充と言われるものです。」


「は?あんたは十分充実した生活送ってんだろ?」


「いいえ。私には信頼や高い地位もありますが、欠けているものがあります。」


信頼やら地位やらと、いちいち目に付くところがあるが、とりあえず彼女の言葉を聞く事にしよう。


「私には、そこらを跋扈するリア充(世界の敵)のように、イチャイチャとする恋人がいません!」


「...は?」


ああヤバい、頭ゴチャゴチャになってきた。

今こいつは、「そこらを跋扈する」って言ったか?言ったよな?


「(いや、俺の気のせいだ。あの篠崎 美琴がそんな事を言う訳が...)」


「つまりなんなの?悠谷を恋人にしたいって事?」


「そういう事になりますね。」


ゴスッ!


「ブフッ!!??」


え?なんで?なんで俺蹴られてんの?オカシクナイ?ネェ、オカシクナイ?


「お前!朱!何すんだいきなり!?」


「うっさいあんたは黙ってなさい!」


...ハイ。申し訳ありません…。


「...って納得出来るか!?」


「あんたなに?悠谷が好きなの?付き合って欲しいってんならそう言いなさいよ!」


あ〜、しまいには無視ときたよこの野郎。


「別に、私は彼に好意がある訳ではありません。先程も言いましたが、彼が敵人だっただけです。」


...もうこいつに関しては、俺をまともに扱う気が無いんだな。うん。


「毎日を充実し、その上で、まだ誰かとお付き合いをしている訳でも無い。こんなにいい人材が見つかるとは思っていませんでした。」


「はぁ?なにそれ。っていうかそもそも、何で悠谷があんたの命令を聞かなきゃいけないのよ!?」


「それに関しては彼の同意があっての事です。」


「あれを同意って言うかよ、あんたがしたのは、ただの恐喝だ。」


「...まぁ、その言い方は間違っていませんね。」


流石に後めたいのか、俺から目を離した。そんななら最初からするなよ。


「同意?どういう事?」


「あ〜、それはだな...」


ーー


「...は?」


「聞こえませんでしたか?私にリア充を教えてもらうと言ったんです。」


いや、聞こえた。確かに聞こえた。ただ、その内容があまりにちんけなものだっだだけで。


「いや、あんたはなにを言ってんだ?全く意図が汲み取れない。」


「...名前。」


「...は?」


「...黒鐘。」


「...え。」


彼女の発した言葉に、一瞬、俺の時が止まる。


「...何で、その名前を知ってる…。」


「流石に驚きが隠せませんか。黒鐘 悠谷君。」


黒鐘


それは、俺の元の名前。あの事件があってから、捨てた名前。


「質問に答えてくんないかね。何であんたがその名前を知ってんだ。」


「この名前を知っているという事はどうゆう事か。おのずと分かるのでは?」


「......」


最悪だ。

この女は、俺の過去を知っている。

その上でこの話を持ちかけたんだ。

いや、持ちかけたと言うよりは...


「(脅迫だな。こりゃ...)」


ーー


「...何でよ...何でそんな事知ってんのよ...」


朱の反応は当然だ。俺は、昔の事は朱にしか話していないし、転校してイジメにあった時には、既に名字を黒木に変えていた。

つまり、朱しか知らないはずの事を、こいつは何故か知っている。


「...で?リア充を教えろとか何とか言ってたな。」


「ええ。貴方には、私の恋人になってもらいます。」


...あぁ。そういうことか。いたな〜、中学の時に...


「あんたさぁ、もしかしてアニメとか好き?」


「....何故そんな事を?」


...ビンゴ


「やっぱりか。傷んだよなぁ中学の時におんなしやつ。」


「え?何?どういう事?」


「朱。俺達が中学三年の時。リア充がどうとか言ってたやつの事、覚えてるよな。」


そう。いたんだ。俺が中学三年になった時。たまたま後ろの席になったお調子者が、ちょうどこんな感じの事を言っていた。

『リア充はヲタクの宿敵。』と


「今のあんたさ。そん時のヲタク野郎に言ってることそっくりなんだよ。まぁそいつは高校上がって卒業したけど。」


そう言えばあいつ今どうしてるかなぁ...


ーー


「あ〜、何で悠谷も朱もいねぇんだよぉ〜...いくら俺に勝てないからっていなくなるのは反則だろぉ〜......アァ〜〜」


ーー


「え?じゃあ、あんたもしかして...ヲタク?」


「...思っていたより早くバレてしまいました。」


ほら見ろ。


「ですが、私の弱みと貴方の弱み。どちらがダメージが大きいか、分かりますね?」


「ま、待ちなさいよ!だからってそんなふざけた理由で...」


ガラッ


脅迫をかけてくる篠崎に、それでも朱が食いさがろうと口を開いた時、視聴覚室のドアが開き、校内を巡回していた先生が顔を出した。


「もうそろそろ日も暮れる。早く帰りなさい。」


「はい。分かりました。」


先生の忠告に、素直に返答すると、先生はさっさと別の教室に向かった。


「だ、そうだ。さっさと帰ろう。」


「そうですね。では二人で帰りましょう。」


「ああ。そうだな。」


あ?


「ちょっと待て!何で一緒に帰るのが前提になってるんだ!?」


「何を言うのです。恋人とは、一緒に帰るのが常識だと聞きましたが?」


「常識かどうかはともかく互いの家だって知らないんだぞ?」


「問題ありません。貴方の家は幸いにも、私の家からそう遠くありません。」


こいつは一体どこまで俺について知っているのだろうか。


「待ちなさいよ!だったら私も!」


「お前は家真逆だろうが!?別に大丈夫だよ。」


実際。俺が過去の弱みを握られている以上、言う通りにするしかない。


「(まぁ心の底から嫌なことをする訳でもないし、それで黙っていてくれるならいい方だろう。)」


ーー


学校を出たら、既に日も落ちて、外は真っ暗だった。


「......」


「......」


その暗い道を無言で歩く少年と少女。


側から見たらこれは何かあったカップルのようだ。


「...なぁ、俺は具体的に何をすればいいんだ?」


「そうですね。私が試したいと思った事に、協力してもらうと言ったところでしょうか。」


「試したいって...まさかキスとか言ったりしないよな?」


「...それも...」


「...え」



「...いいかもしれませんよ?」


気がついたら、彼女の顔が目の前にあった。俺の方が背が高いため、見下ろすような体勢だ。


「い、いや!今のは冗談で言っただけで!」


「私もこう言う事には疎いので、何から始めればいいのか迷っていました。ですが、最初にそう言ったランクの高い事をするのも、悪くはないかもしれません。」


「いやいや!今疎いって言ったろ!?そう言う事は本当に、もっと親密になってからする事で...」


「私は貴方の秘密を知っていて、貴方は私の秘密を知っている。これは深密な関係とは言いませんか?」


しんみつの字も意味も違うから!全然

親密じゃないから!?


「私は目を閉じますから、どうぞ。」


どうぞって何?ねぇキスするのにどうぞって何!?


「いや、流石に最初からそれは...」


「秘密...バラしても良いのですか?」


「っ......分かったよ。」


その言葉と同時に、篠崎は目を閉じる。


クッソ...こんな近距離でも可愛いな...


「......っ!」


覚悟を決め...俺は...

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