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須佐妖戦帖 第4章「マッカーサーの憂鬱」  作者: 蚰蜒(ゲジゲジ)
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其の5 特殊部隊、出動

佐助はGHQ総司令部内に拘束された。無理も無い。止めに来たとはいえ、仲間である。

廊下や天井に貼付けられた兵や士官たちは武角が消えた後、すぐ解けた。しかし、壁にめり込んだ士官たちは複雑骨折を起こし、緊急入院した。

「他の兵たちは皆、無事か?かすり傷で善かった」マッカーサーはねぎらった。


騒動後、マッカーサーは別室にて、緊急の会議を開いた。

「閣下!あいつは一体何者ですか?!妙な術を使っていました」

「わたしも知らんのだ。フェラーズ准将が何故か、知っているようだ」

「フェラーズ准将?ま、まさか・・・あなた」

「あなたたちが考えているような、わたしが日本のスパイだとかは一切ありません。其の訳を此れから説明致します」


フェラーズは15年前に出会った、故柳田教授のこと、故小泉未亡人のこと、皇宮警察特務機関を通して佐助に会って、不思議なものを視させられたこと・・・天皇に何かあったら須佐が出て来ると云ったこと。そして須佐一族と須佐之男のことを話した。

一同は呆れた顔をしていた。


「此れが柳田教授が残したレポートです」

彼は柳田から借り受けた「須佐妖戦帖シリーズ」の記述本を見せた。「翻訳もついていますが、わたしが此の15年間の研究のレポートのコピーが、1人分づつありますのでお読みください。そして・・・・」

古いポートレートを見せた。

「こ、此れは?!」

「30年程前に出雲部落で撮ったものだそうです」

あの写真である。

1人、写真に詳しい者が居た。「此の焼き付けは・・確かに細工などではない。古い写真だ」

「30年前って、あの武角やら佐助やらが、其のままの姿じゃないか?!」

「彼らは不死に近いのです」

「不死だと?!大昔からそんな薬やらを探した伝説が多岐に渡って残っている」

「では、彼らは死なないのか?」

「傷つけば死にます。現に中世の戦さにおいて、信長の軍に数名殺されております」

「此の人が柳田教授だな。・・・此の中央の赤子を抱いている少年は?まるで古代人のようだ」

「其の彼が、須佐一族のおさ健速須佐之男命たけはやすさのおのみこと

「しょ、少年が?!」

1人の士官が立ち上がった。「わたしは戦前、日系の友人に聞いたことがあります。日本神話・古事記です。其の中に出て来る荒神です。八岐大蛇やまたのおろちとか云う化け物を退治した神です。日本人なら誰もが知っていると云っておりました。・・・が、あくまで神話だよ・・・とも云っておりました」

一同ざわざわしだした。マッカーサーも其の中に居た。

「やはりな・・・信じられないのだ」フェラーズは、心の中で呟いた。


「ボナー、君の云いたいことはわかった。確かに一理あるのかもしれない。しかし、神から授かった武人だとは、到底思えない」其れがマッカーサーの答えだった。

「閣下、しかし・・・」

「確かに得体の知れない力を持っているようだ。だが、我々は連合軍だぞ。敗戦国日本の生き残り武人、もしくは現人あらひとだろうが、現世では国家間の法と云うものがある。・・・其れと、今回の事を宮廷関係は知っているのだろうか?」

「・・・・わかりません」

「聞いても無駄だろうな。調査して知ってての事なら只じゃ済まさんぞ。出雲部落を探せ。岩国から偵察機を出そう」


其の日の夕方には「部落が見付かった。出雲の山奥。座標を送る」と、Telexが入った。

「よし、現地に特殊部隊を派遣しろ」マッカサーは命じた。

「特殊部隊?第1特殊任務部隊は解散していますが?・・・」

「不正規部隊だ。大戦前のメンバーが居るだろう。彼らを集めろ。戦いでは無い。部落の規模や人数、武器などの詳細の調査だ。写真を撮れ。山間はお手の物だろう。まず、情報を集めよう」


「出雲部落か・・・フェラーズ准将の云う事が当てはまって来たな。よし、一個師団が直ぐ動けるように岩国と出雲に待機させておけ。わたしは親父(トルーマン大統領)を説き吹かす」

「敵の想定を・・・須佐だと伝えるのですか?」

「まさか!生き残りの日本軍人の隊が、出雲の山中に隠れて、反乱を起こす計画を情報入手したので、鎮圧に向かうとでも云うさ。近隣市民は避難させておけ。避難は日本の警察に任せよう」

一個師団とは、8千~2万人程の構成である。通常は1万人前後。

亜米利加海兵隊、空挺隊、山岳部隊など。歩兵、砲兵、輜重兵などから成る集団である。

自己判断のシステムを持つ集団だ。


フェラーズは心理作戦軍人である。戦線には出ない。彼には他に仕事がある。


次の朝、出雲に向かったのは特殊訓練兵、後のグリーンベレーである。大戦前に従軍していた者が25名収集出来た。

「出雲が田舎で善かった。此れなら秘密裏に行動が出来る」

任務は須佐部落の位置確認、部落構成、動き、写真撮影など。

彼等はヘリで平野に降ろされた。戦いが目的ではない。情報だ。無論、武器も携帯している。

特殊部隊は条件さえ揃えば、1兵200兵に相当する実力を持つ。

ヘリから降りると部落のある山間に向かった。


山中に入ると間を取りながら散開した。しばらく進むと何かが囲んでいる。

「視ろ」隊長が云った。

「鳥居だ。張り巡らされている。日本の神道しんとうのもので、此処から神域を示すんだ。異界と云うことだぞ。部落全体をぐるりと建っているんだろう。写真を撮っておけ」


出雲まで軍機で来た彼等は須佐についての簡略データを読んでいた。

「情報収集が目的だが油断するな。GHQ本部に1人で殴り込みに来た連中だ。攻撃されたら発砲して構わない。しかし、無茶はするな。情報を持ち帰ることが最重要任務だ。全員で帰るぞ」

「イエス・サー」


彼等は鳥居を抜けた。

バサッ!

一斉に其の音がした方向に銃を構えた。木の上だ。からすが一匹居た。

ぐあーーー・・・。

「鴉か・・・」

隊は山中を進んだ。

カア、カア。

「ん?」何時の間にか鴉が増えていた。故知等を視ている。其の鴉たちが三本足なのは視得無かった。

空がにわかに、かき曇って来た。

「おい、あいつら付いて来てるぞ」鴉たちが木の上から隊の後をついて来ている。

「鴉に見張られているようだ」

バサッ!

一匹の大きめな鴉が目の前に降りて来た。

カア。

「こ、こいつ!」

足が三本だ。

八咫烏やたがらすだ!須佐の配下だ!」

兵の一人がナイフを出した。

八咫烏は後ずさりしながら睨み据えている。

「まずいな。俺たちの存在が知れる」

ひゅーーーーん。

「何の音だ?」

「上だ!何か降って来る!」

ばらばらばらーーーーー!どす!どす!どす!

「ぐわああ!」

矢と槍だ。兵が数人串刺しになった。

「逃げろ!」

ひゅーーーーん、ひゅーーーーん。次々と飛んで来る。逃げ場が無い。

「木にへばりつけ!」

ひゅーーーーん、ひゅーーーーん!どす!どす!

おさまった。

「警告だな」

「隊長、3名、殺られました」

「何て云う奴らだ。いきなり攻撃してきやがった・・・・慎重に進め。何かあったら撃て」八咫烏は消えていた。


ばさああああああーーーー!!

「何だ?!」

突然、爆撃機程の大きさの八咫烏が数匹、頭上から爪を広げて降下して来た。木々を薙ぎ倒し舞い降りて来た。

「撃てーーーー!撃ちまくれ!」

バリバリバリ!ズドーーン!

グワアアアアアア!

「うぎゃああ!」

兵達は、羽で薙ぎ倒され、くちばしで刺され、噛まれて身体を真っ二つにされた。

足で踏みつぶされる者も居た。

ぐしゃああ。

「モンスターだ!化物だ!」

グワアアアアアア!

逃げ惑う者も居たが容赦しない。逃げ場も無い。

八咫烏は数人を足で掴み、空に舞い上がった。そして須佐部落に連れて行った。


須佐部落では、あの武角たけつのが待っていた。

八咫烏は彼の前に兵を降ろした。兵は3人。後は皆、殺された。

「よく来たな。亜米利加さん」流暢な英語だ。

「貴様・・・戦争は終わったんだぞ!」

「それなのに、何を偵察しに来てる?」

「貴様が閣下を襲撃したからだ!」

「おう!そうよ。したとも」

「敗戦国が亜米利加と、まだ戦う気か?愚かだ!」

「むん!」

武角は電光石火の如く、其の兵の首を刀で斬り落とした。

2人の兵の前に首が転がり、胴は倒れた。


モコモコ。ゾロゾロ。

むしの大軍が土の中から湧いて来て、屍体となった兵の胴体をくらい始めた。

バリバリ、ムシャムシャ。

「う、う・・・・」

数分後、身体は骨だけになった。素志て蟲は土中に消えた。

「骨は捨てろ。こいつ等は土に埋めろ」

2人は首から上だけ出して土に埋められた。其の前に斬り落とした首を置いた。

「う、う・・・」

「此処から部落の様子がよく視得るぞ。偵察には持って来いだぞ」

気付くと先程の蟲が数十匹、彼等の回りを動き回っていた。血だらけである。何時でも喰ってやるぞ、と云っているように思える。顔のまわりも這いずり回りだした。

あまりの恐怖と苦痛に、1人の兵は・・・気がふれた。

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