あるオッサンの決意
長くかかってしまいました。
未だ、気にかけて覗きに来て頂ける方が居たのなら、こんなに嬉しいことは無いです。感謝を。
「おまえ、本当に帰ってきたら連絡しろよ?」
「…もちろんですよ。俺、戻ってきますから」
この一年近く、織谷が居ることを前提に引き継ぎ、仕事を拡げてきた。実際に補充があるかは兎も角として、せめて事務の補助人員くらいは廻して貰わないと部署が破綻してしまう。
「人員補充の都合だってあるし、運良く補充貰えた場合には、ソイツの行き先だってあるんだからな」
「お、そしたらソイツと俺のどっちが優秀か…ですね?」
不敵にニヤリと笑ってみせたところ悪いが、あーうん、たぶん優秀じゃ無い方が俺んとこに残る可能性が大な。本人イマイチ分かってないようだが、社内でも結構生臭い話に翻弄されている感じ、あるぞ?
帰国後は本人の意向を踏まえて再配属という約束になってるらしいが、そんな話は建前以外のなにものでもない。海外展開をぶちあげた専務方は織谷を手離す気は無いだろうし、約束通り一年で帰れるかすらあやしいだろう。
おれ自身が親会社のおエラいさんに気に入られて、バイトからの直接雇用、なんか気に掛けてた新部署(現弊社)に送り込まれたものだから、積極的に属してる派閥も社内には無い。
若い時分から好きにやって来た弊害で、消極的敵対グループばかり多くてな。歳をとるとこういう時の無力が堪えるね。せめてお気に入りの若者を手元で守ってやりたいとか、育てたやつくらいは気にかけといてやりたいと…そうか、派閥ってこうやって生まれるんだなぁ。
まぁ一人部署の一人管理職とか、期待するまでもなく明らかに社内でもボッチだわ…許せ。たぶん骨くらいは拾ってやれると思うが、おいしそうなお肉(利用価値)が付いてるうちは無理かもしれん。
どうも本人、危機感があるのか無いのかイマイチ窺えないんだが…
「忘れてるかもしれんが、これから一ヶ月はみっちり語学だぞ」
「まぁ昔、話してたんで飛び込んじゃえば何とかなりますよ」
「現地の法令とか商習慣とかな…」
「…俺より優秀なヤツとかそうそう居ないですからね」
って、頬をポリポリしながら斜め上を見てるんじゃない。そういう台詞は自信満々に言うもんだろ?
ちょっと照れながら言うのツボだから禁止…
「席ぃ譲る気、無いですし」
あんなしがない部署のどこがいいんだかね。
「飯旨いっす、あと何だか居心地いいんですよね」
あー、たち悪。オッサン落としてどうするつもりさ。たとえ飯に釣られただけであっても、一上司として嬉しすぎる言葉だぞ。
俺としてはもう、後任を織谷が霞むくらい育て上げて交換で戻してもらうしか無い訳だ。少な目にみて一年、まぁ三年は有ると思うんだが。こりゃ新年度は気合いを入れなきゃだわな。
目指せ、タレ目のお姫さまってか(笑)
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