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あるオッサンの休日 後編

大変遅くなりました。

もしまだ読んでくださる方が居たのなら感激です。

「これ、めっちゃ旨くないですか?」


「そうか」


「やばいっすよ」



 相変わらず喰いものに対する語彙の貧弱な感想だが、聞いていて悪い気はしない。

香りも糞もないコップワインを飲みながら、目の前で欠食児童のように山盛りパスタと、その上に載せた鶏肉をほうばる織谷を眺める。


 うん、まぁこんな休日も悪くないかもな。割りばしで掴んで給湯室のガス火で直炙りしたパンにトマトソースをつけてツマミながら、若人が夢中になって食べる様子を愛でる。給湯室のでっかいヤカンで茹でたアツアツのパスタを夢中でほうばる様は圧巻だ。


「ヤバいっす」


「ほーか、ほーか(そうかそうか)」



 ああ、今度こいつと焼肉とか行くのもいいかもな。


 事務所から廊下からと、ニンニクとトマトの香りが充満しているが、まぁ休みだし誰もいないだろ…そもそも誰か居たら俺が出てくる必要もなかった訳だし。


 上に見つかったらカミナリ間違いなしの社内飲酒を「俺、タイムカード切ってないし…」と自分の中だけで正当化しながら、いやむしろ見つかってヤバいのは下のやつらか…とか諸々考える。


「ぶちょさん、デートだったんすよね? すいませんでした」


「は?」


「俺、あとこれ片付けとくんで、もう彼女さんとこ戻って…」



 なぜそうなる?


「あー織谷?」


「はい?」


「悪いが俺は長いこと独り者だ。


「えっ?」


「当然、この料理も俺が作った」


「えっ、えっ? きもッ」


「…きもっとか言うな、泣くぞ」


「えっあっ、あの…マジっすか?」


「マジマジ」


 なんか「マジマジ」って言うと微妙にオッサン臭いなぁってちょっと思った。


 けど…織谷…織谷くん?

 そこで沈黙されると色々キツい(泣)



「織谷?」


「あっ、すいません」


「どしたん?」


「いや俺、料理とか全然なんですけど」


「うん」


「こういうのって男の人が普通に作れるって思ってなくて…」


「切る焼く煮るに男女もあんめぇよ?」


「そうなんですけど…」


 まぁ、織谷の実家ではお母上が台所の実権を握っていたんだろう。家庭の数だけスタイルはあるだろうし。


「一人暮らしが長いからな」


「そういうもんですかね? 大学入る時に上京したんで、もう五年ですけど、こんなの作れる気がしないです」


「…俺もまだ七~八年だけど、そういえば実家に居た頃から作れたな。まぁ好物が外で喰えない物だったら、自分で作らなきゃだからな。実家出るときに親から習ったんだわ」


「そういうの全然考えなかったっすね。なんで学生時代は帰省のたびに好物並べてもらってました」


「就職したら帰省も難しかろうよ?」


「そうなんすよ。お陰で里心つきまくりっす」


 口の周りを赤くしながら、ちょっと心細そうな様子でつぶやく。コイツは本当にガキみたいなトコあるな。しかしお前、鶏肉のトマトソース煮パスタを喰って里心とかどんだけハイカラな家なんだよ?とか思ったが、よくよく考えたら、こいつのご両親は俺と同世代でもおかしくはないんだよな…怖くて聞けないけど。


「いまどきメールでも動画でも何でもあるんだし、習って作ればいんじゃね?」


「うーん、都内に妹が居るんで習ってこようかな?」


「…」


「…紹介しませんよ」


「なにも言ってないぞ?」


 紹介してほしいとかは考えてなかった(さすがに若すぎて言えん)が、ごめん「やっぱタレ目なのかなぁ」とかは思ってたわ。



「まぁとにかく、さっさと片づけて飲みに行こうぜ、お前のオゴリで」


「…真昼間ですよ?」


「休日の醍醐味だよな」


「おなか一杯なんですけど?」


「駅前まで歩けば酒の分くらいは空くよ?」


「…」


「洗い物と片づけは、しといたる」


「わかりました…」



 午後三時から飲む酒は旨かった。こんな休日も悪くない。

翌日、洗い忘れたヤカンの件で事務の子にメチャメチャ怒られた…



「織谷くん昨日出てましたよね? ヤカンの水が濁るんですけど何か知りませんか?」


「え、それ、ぶちょさんが…」


「織谷、てめぇっ」


「部長!?」


「ごめんなさい」


お読み頂きありがとうございます…本当に本当に感謝を。そしてオチは無いです。

予定してたトコまで行きませんでした…難しいです。

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