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眩しい……。
眩しすぎて目が開けてられない。
照明が強すぎるんじゃないのか。全然前が見えないじゃないか。
それに寒い。
今まで暖かいところにいたのに、ここはすごい寒い。
音もうるさい。
なんだこの音は。音の反響がすごいな。なんなんだこの音は。
……赤ん坊の泣き声?
どこかで赤ん坊が泣いてるのか?
全然泣き止まないな。親はどうしたんだよ。これだけ泣いてるってのに。
赤ん坊の泣き声が反響している。すごい大きな泣き声だ。
まるで耳元で泣かれてるみたいだな。
まったく親はどこいったんだよ。
暗い……。
今度は照明を切ったのか? 全然前が見えないじゃないか。
それにすごく静かだ。
さっきまで大泣きしてた赤ん坊は親がどこかに連れて行ったのか?
それに暖かい。さっきまでの寒さはどこかに行ってしまったみたいだ。暖房でもつけたんだろうか。
やわらかい。やわらかい何かに包まれている感じだ。とても安心する。
このままずっとここにいたい。どこにもいきたくない。
とても安心する。
高い。
空が高い。澄み切った空に白い大きな雲が漂っている。
柔らかな風が吹いた。
草の匂いがさっと流れていき、草が揺れているのが見える。
――。
呼ばれた気がした。
誰だろう。
女性の声?
――。
また、呼ばれた気がした。
さっきより近い。こちらに近づいてきてるようだ。
――。
名前を呼ばれながら左肩に手が置かれる。
振り向くと、心配そうな顔をした金髪の女性が見下ろしているのが見えた。
ああ、そうか。返事をしなかったからか。
「すみません、考え事をしてました。シスター」
自然と言葉が出た。
目に映るのは若い女性。
髪は金色。染めているのではなく元々の色だと分かった。
肩と首周りは白く、しかしそれ以外は黒く染められた丈の長いワンピースのような服を着ている。
たしか修道服というものだったか。
――?
彼女は膝を曲げて、碧い瞳で覗き込んでくる。
首を傾げているその仕草が妙に可愛らしかった。
「大丈夫です。シスター。」
その仕草に顔が綻ぶのを我慢しながら、悟られないように極めて平然と返事をする。
すると彼女の右手は、こちらの頭上へと動き、柔らかく慈しむように頭を撫でられた。
彼女は微笑みながら暫く撫で続けた後、曲げていた膝を伸ばし、
「さぁ、皆待っていますよ。いきましょう」
白い綺麗な右手を差し出してきた。