4話
岩陰に身を潜めたまま目を閉じ、足音にのみ意識を向ける。それ以外全てのものを除外し射程距離に入るその瞬間を待つ。
あともう少し…飛び出そうと足に力を入れた時、岩陰に隠れていた他の2人が痺れを切らし飛び出した。
自分を鼓舞するよう雄叫びと共に飛び出したそれは、数発の銃声の後に消え去る。
無駄な死、意味のない蛮勇、倒れた2人を見て嗤う愚かな敵。
全てが俺にとって都合がいい。
岩陰から飛び出し、一直線で敵の元へ向かう。
(…3人。それなら)
此方に向かってくる俺に気付いた1人が銃を構えるが遅い。射線から外れるよう身体を低くし、更に速度を上げ内側に潜り込む。
想像を超えた速さに驚く顔を尻目に、銃を持つ腕を掴み容赦なくへし折る。
痛みによる叫び声を無視し、その身体を盾にするよう隙間から銃を出し発砲。
倒したかどうかは確認しなくても分かる。
もう1人が動き出す前に、叫ぶ男を其方にぶつける。それを支えることが出来ず、下敷きとなった男を冷静に射殺。
叫ぶ男は、弾が勿体ないから顔面に蹴りを放ち首がへし折れ静かになった。
3人の男を数秒で殺し、身を屈め周囲を見渡す。
(見渡す限り誰もいない…足音もしないな)
変わらず銃声は至る所でしているがまだ遠い。
弾数の少なくなった銃を捨て、敵から漁り頂く。
まだ戦えるが、テツとの約束もある。
装備を整えながら考えを巡らしていると、遠くから何かが打ち上がる音と光が見えた。
「なんだ…閃光弾か?」
見たことのないそれを見つめていると、さっきまで遠くに見えた光が収まることなく広がり続けている。
まるで全てを呑み込むように。
反射的に身を翻し光から遠ざかるよう身体が動く。
「やべえ、間に合わー」
焦っているのか諦めているのか分からない呟きを残し、クロも光に呑み込まれる。
…光に呑まれたその後に残った大地には、死体以外のものはなく、全て消え去っていた。