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空の魔術師  作者: こまい
第1章 史上最強のパーティー編
6/7

6.世界最強

 

 自分を鍛えるために魔王の所へ行く事を決めた俺とサリーは、魔王の魔力を見つけるために拠点を移動させていた。


「なあサリー、本当にこんなんで見つかるのか?」

「見つかるはずだ。彼の力は分かりやすいからな。今は私を信じて拠点を動かしていれば大丈夫だ。」


 正直全く信用できないのだが、この場には俺とサリーしかいないので仕方がない。そう諦めた俺は、拠点を飛行船のように飛ばして移動させている。そうすればいずれ魔王のいるところへ辿り着けるらしい。

 ちなみにこの拠点はサリーのユニークスキル「守護結界」によって守られている。これは中にいる者の知り合い以外や、そういった存在が放った物質を全て通さないようにするものだ。さらにたとえ知り合いでも、中の者に敵意を持っていれば入る事はできない。実際俺の「天地創造」にもそんな効果はあったのだが、所詮それはオマケ程度のものだ、というサリーの説明があったため、ユニークスキルを使ってもらうことにした。


「どうだー、サリー。見つかりそうかー?」

「ああ見つかったぞ。あと少しで魔王のところへ着きそうだ。」

「まあそうだよなあ、そんな簡単に見つかるわけ……って、え!?マジで?見つかったの?」

「だから見つかったと言っているだろう。」


 大して期待もせずに聞いてみたのだが、俺の知らないうちに魔王は見つかっていたらしい。

 だが俺があまりにも驚いたためにサリーが頬を膨らませて拗ねてしまい、ご機嫌取りのために1時間を費やすことになった。


「では行くか、と思ったのだが、どうやら魔王はこちらへ近づいてきているようだな。」

「何で近づいてるんだ?」

「おそらく拠点の存在に気づいたのだろう。」

「え?幻影スキルで透明にしたのに気づかれたの?」

「まあ幻影スキルはスキル依存だからな。レベル差が大きい魔王に通じなくても仕方ない。」

「それじゃあ幻影スキル使った意味なくね?」

「そんな事はないぞ。セイタが強くなればいいだけの話だ。」


 サリーはこう言っているが要するに幻影スキルは無能スキルだという事だ。もともと俺が強くなるまでは強者に拠点の存在を気づかれたくない、という理由で幻影スキルを使ったのだが、まず俺が強くならないと効果がないときた。これはかなりショックだ。


「そんなに落ちこむな。これは相手が悪かっただけだ。普通の魔物なら気づかないよ。」


 落ち込んでいた俺を気遣ってくれたのか、サリーが励ましてくれる。普段は残念なサリーだが、こういう時は頼りになりそうだし、惚れてしまいそうにもなる。普段もこれなら間違いなく俺は惚れていただろう。


「ありがとな。とりあえず魔王に接触してみようか。サリーは知り合いなんだろ?」

「ああそうだな。なら降りようか、いくぞ。」

「ん?ちょ、ちょっと待って。」

「?どうした。」

「この高さをどうやって降りるつもり?」


 そう、俺らが今いるのは遥か上空だ。もっとも飛行機が飛んでいるような高さではないが、上空1000メートル程度ならはあるのではないかと思う。


「ただ飛び降りれば良いのではないか?」

「いやいや死ぬからね?神であるお前はともかく俺は絶対に死ぬぞ?」

「それくらい男気を見せてみろ。男だろ?」

「男気でなんとかなるもんじゃねえだろ……」


 飛び降りたら死ぬ事は確定のため、他の方法を探し始める。すると、1つのアイデアが思い浮かんだ。


「分かった。なら男気を見せてみようか。」

「ほ、本当にいいのか?死んでも知らないぞ?」


 さっきのは冗談だったのか、俺が男気を見せると言い出すと、急に焦っている様子が見て取れる。


「大丈夫だって。いくぞ?」


 そう声をかけ拠点から飛び降りる。当然その後にはサリーも続いている。


 俺がさっき思いついたアイデアというのは、魔力波を使う事だ。地上に着く直前に思いっきり魔力波を地面に向かって放てば、速度が抑えられて地面に激突する事がなくなるのではないかと思ったのだ。かなりリスキーではあるが、即死でなければサリーが神聖魔法で助けてくれるはずなので少しは落ち着けている。


 そして1分30秒ほどが過ぎ、そろそろ地面に着きそうになってきた。


「はあ!!!!」


 そして俺は全力で魔力波を下に向かって放つ。目論見通り速度が抑えられ、俺はゆっくりと着地した。

 ちなみに後から降りてきたサリーは何て事なかったかのように普通に着地している。一体どういう体してやがるんだこいつは。


「面白いな。まさかそのスキルをそのように使うとはな。」

「だろ?もっと褒めてくれてもいいんだぜ?」

「う、うん、すごいな。」


 ただ褒めてくれれば良かったのに、何故だかサリーは顔を真っ赤にして俯いている。どうやら人を褒めるのに照れくささを感じているらしい。思えばちゃんと俺のことを褒めてくれたのは初めてな気がする。


「魔王はこの奥か?」

「ああ、そうだ。私が先に行こう。」


 恥ずかしがるサリーの顔が可愛くてしばらく見ていたのだが、それを知ったサリーが睨んできたので話を戻して魔王を探す事にした。


 魔王の魔力は俺でも分かるほどにわかりやすく強力だった。俺なんかとは比べ物にならないレベルだ。サリーによれば大陸外の過酷な環境で最低でも500年は生きているらしく、それだけ強い、との事だ。

 インドア派だった俺がそんな奴相手にまともに挨拶できるかすらも不安だが、ここはサリーに任せるしかないだろう。


「久しぶりだな、シン。」


 少し歩いた先に立っていたのは、紫色の髪と黒の目を持つ青年だ。歳は俺よりも少し上のように見える。しかしこいつが例の魔王なのだろう。強者感が半端ではない。


「なんだ、誰かと思えばサリーか。横にいるのは?」

「彼はセイタだ。気づいてるとは思うがあの空に浮かぶ地面はセイタが作ったものだ。」

「ほう、お前がな。」


 そう言って魔王は目を鋭くして俺を見てくる。


「ああ、あれは俺が作りました。あなたが魔王なんですか?」

「そうだ。名をシンという。それと敬語は使わなくて良い。それで、ここへは何の用で来たのだ?」

「実は、戦いを教えてもらいたくて来たんだ。」

「面白い。これまで俺に戦いを挑もうとした者はいたが、教えを乞おうとした者は初めてだ。いいだろう、場所はお前の作った地面の上で構わないか?」

「ああ、全然問題ない。」


 案外あっさりと了承してもらって助かった。魔王だからもっと怖い存在であると思っていたのだがそうでもないようだ。事実、拠点へ戻る際にはサリーと談笑していたしな。

 もっとも内容は物騒なものだった。魔王がこの前大陸を1つ沈めた、と言うと、サリーが、それを直すのに苦労した、というように文句を言う。それの繰り返しだった。恐ろしすぎる。なぜか2人といると、大陸の1つや2つくらい些細な問題ではないと思えてくるから不思議だ。


「1つ聞きたいんだが、魔王ってどれくらい強いんだ?」

「ん?なんだセイタ知らないのか?シンは世界最強だぞ?」

「え?」


 俺はサリーからその言葉を聞いて一瞬固まってしまった。世界最強だと?俺はこれからそんな人に戦いを教えてもらおうとしているのか?そう考えると、だんだん自分の行いが正しいか不安になってきた。もしかすると普通に修行するだけでも殺されてしまうかもしれない。


「心配しなくてもお前に合わせて戦いを教えてやる。人間がそれほど丈夫とは思っていないからな。」

「それは助かるよ。」


 とりあえず俺はその一言に救われた。しかしすぐに、なんとも言えない絶望感に襲われる事となる。


「俺って、どうやって拠点に戻ればいいんだ?」

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