1.突然の異世界転生
つい2作品目に手を出してしまいました。よければこの作品も読んで頂けると幸いです。
「……やっとだ。やっと成功した!」
薄暗い部屋の中、長い時間パソコンと見つめ合っていた俺は、喜びの声をあげた。
俺の名は空見聖大。人より少し運動が得意な25歳だ。顔は良いわけではないが、少しだけ自信がある。
学生時代は下の名前でよく、「せいた」と呼ばれていた。その当時の俺は超アウトドア派で、高校生になっても外で友達と鬼ごっこをしていたほどだ。そのせいか近所の子供達には大分舐められてしまったのを覚えている。
まあ、そんなことはどうでもいいんだ。高校を卒業してから大学へ入学しなかった俺は、生活をガラッと変えた。超インドア派になったんだ。
わざわざ生活を変えたのには理由がある。俺の夢を叶えたかったからだ。
ん?俺の夢が何か知りたいって?そうかそうか、そんなに知りたいなら教えてやろう。
俺の夢は……
異世界へ行くことだ!
………………コホン。
もちろんこんな馬鹿げた事を他の人に話すわけにもいかないので、俺の夢は誰にも言っていない。正直そんな夢を持っている自分自身の事を大分恥ずかしく感じている。
そんな俺の夢を叶える、と決意してから3年が経過した頃には、俺の学力がかなり上がっていた。もちろん願うだけでは夢が叶わないことが分かっていた俺は、研究を始めたのだ。
そしてその研究を始めてから、数年が経過した。
「あー、あれからどれ程の時間が過ぎたんだろ。てか今年は何年だ?」
あまりにも長い時間部屋に篭って研究をしていたため、今年の西暦すらまともに言えない。しかしそんな事よりも重要な事がある。
ついに異世界へ行く機械が完成したのだ。さらに、それは決して一方通行ではなく、ちゃんと地球に戻ってくる事もできる。そして何よりすごいのは、異世界での自分の身体能力を上げる事ができる、という点だ。
現実逃避して異世界へ行けるだけではなく、そこで俺TUEEEEってなれるのだ。我ながら天晴れとしか言いようがない。
「さて、では早速異世界へ行ってみるとするかな。」
そう言って俺は、目の前にあるゲートを見つめる。その様子はあまりにも異様で、この地球のものとは到底思えない。そんなゲートを目の前にした俺は、足が震えて中に入れなくなってしまった。
「お、おい、落ち着けよ、俺。ちょっと異世界に行ってくるだけだ。気分的にはコンビニへ行くのと同じだろ?すぐに戻ってくる事だってできる。それに俺が異世界へ行ったらこの機械は自動的にスリープモードになるから、地球にやばい影響を与える事もない。大丈夫だ。」
どうやらインドア派の俺が外へ出る、しかも異世界へ行く、という事に関して、思ったよりも俺は怖がっているようだ。しかし、自分自身にこの機械の安全性を説いた事により、なんとか足は動けるようになった。
「よし。Let's 異世界!」
覚悟を決めてゲートへ飛び込むと、俺は静かに意識を失った。
「………」
目を開けると、目の前には見知らぬ男と女がこちらを見つめていた。心なしか、その瞳は潤んでいるようにも見える。しかしそれは悲しみによるものではなく、喜びによるものだという事は、彼らの表情により明らかだった。
一体彼らは誰なのだろう。そして俺は今どこにいるのだろう。様々な疑問が思い浮かぶが、どれも今すぐ答えは出そうにない。よって彼らに話を聞いてみようと思った俺は、声を出そうとした。
「オ………オギャーーーー!」
しかし出たのはまるで赤ん坊のような泣き声だった。
なんだ?どういう事だ?ますます分からなくなってきた。目を覚ましてから少し時間が経った事により俺は幾分か冷静になれていたのだが、たった今その冷静という言葉は俺の辞書から消えて無くなった。
わけもわからず泣き続ける俺。しかしそれをただ見守るだけの彼ら。
あぁ、俺の異世界生活はどこへ行ったんだ?
そんな絶望を感じながら、俺はまた意識を失った。