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第3回

 まったく、俺は何だってこんなクソめんどくさい事に首を突っ込んじまったのか?人の感ってもんは時々マジで感心するよな。

 よくあるのがなんか嫌な感じがする時とか決まって嫌な事が起こるんだよな。俺は免許ないのだが詳しい事は解らんが、親父とかに聞いた話だとスピード違反とかで捕まる前とかって『これちょっとやばいよな』って思った瞬間、赤等が光ったりするらしいな。あ、チャリンコとかでこけたり、パンクする時も時々そんな感じがあるよな。

 で、つまりだ俺が言いたいのは…その日、俺は朝起きてなんか言葉では言い表せないような変な感情があった。俺は寝起きが悪いなという事で自己解決し、いつもとは違った服装と荷物で学校に行った。もし、この感情をコントロールできるようになれば、俺は超能力者の仲間入りか?ま、無理だろうがな。

 ともかく、俺は学校で決まった滅茶苦茶ダサいジャージを着て、チャリンコで学校に行く。なんだ、このさらし者の気分は?道行く人の視線が結構刺さるのだが。そんな俺の横を東高校の制服を着たバイクが疾走してる。明らかに制限速度オーバーしてるんじゃないか?じゃなくって、なんで制服着てるのよ!?今日は一日中ジャージで過ごすんじゃないの!?なんなんだ、これは……

 俺は現状を理解できないまま、学校へと急いだ。学校周辺で、松木、早田と合流。

二人とも俺と同じ格好。心なしかホッとした。

 よくあるだろう?なんか同士を見つけるまで不安な事が。そうだな、たとえば学校とかで授業変更になって移動教室になって一人早くその教室に来ちゃった時とか。委員会の会議場所に相方が来ないときとか。まぁ、二人と合流したところで俺の不安は消え去った。

 もうお決まりとなりつつある駐輪場の外れにマイフェラーリを止める。

「あ、そのチャリお前のだったか、結構目印になってるんだよな〜」

 松木がそう言って、自分のフェラーリの鍵を抜く。

「天気も良いみたいだから雨は降らないよね」

 俺と松木は空を見上げ、雲が多い空を見る。

 雨降らないか?

「ちはー」

 俺たち三人は教室の扉を開ける。…うおぉぉぉぉい!!皆なんで制服を着てるの!?

「ユーヒ、何アンタ、かなりやる気じゃない」

 俺の服装を見て奴は呆れた顔で俺を見る。ちょっと待て、そんな眼で俺を見ないで欲しい。俺たちは三人首をかしげて自分の席につく、さらし者のような気分リターンズ。

 結局、俺たちの同志は後四人ほど増えた。朝のHR終了後、皆戦闘服に着替え始めた。今なのね着替える時間。

 俺は『アンタ着替えるの早いわねー』と散々からかわれた、がしかし、俺には同志がいるから気にせんね。


「あー今日は天気もよく、新入生のあー……」

 俺たちはため息をつきたくなる話を聞きながら、空の機嫌を心配する。泣き出しそうだよ、おい。

「あー今日のこの行事であー、素晴らしい友人を見つけてください」

『あー』と間つなぎの多い教頭先生の話を聞く俺。俺たちからしてみればその間つなぎは怒りを身体の奥底から沸き立たせる話のテンポだが、実際人の前で話すとなるとそうなるだろう。

頭で考えながら口から言葉を出す。

 これは結構難しい事なのだ。何回か中学生の頃、委員会とかで前に立って話したことがあるのだが、口で話すスピードと頭で考えるスピードが違うもんだ。頭のストックと吐き出す弾丸の速度が違うから、リロードされるまでにその間をつながなければいけない。だから、やたらと間つなぎをする人がいても怒らないでやって欲しい。

 微妙な雲空の中、俺たち東高校生徒諸君は遥か彼方、十キロ…いや、二十キロほどあるだろうか……目的地まで。多分明日は筋肉が死ぬであろう。俺たちは列をなして歩き出した。

「じゃーんけーん」

 何分歩いただろうか?いつの間にか空を覆いかけていた雲は東高校生の行列を見てビックリしてどこかに行ってしまったのか、切れた雲の隙間から太陽がコンニチワしてる。その青空に奴、中留御氷雨の清々しくはないが、兎に角声が響き渡る。

「ぽん!!」

 その掛け声と共に、俺は反射的に指を二本立てて出す。つまりは、俗に言う『チョキ』というやつだ。って、なんでんな説明してんだよ、俺。

 俺の視界には三つの腕。一つは俺の腕。もう一つは俺と同じく『チョキ』の形をした腕。

最後の一つは手を差し伸べるように出された腕。一つだけ違う手の主を見ると……春日さん。

「あ、また!!」

 春日さんは自分の出した手の形を見て、激しく肩を落とす。

「三連敗ね、春日ちゃん」

 中留御は哀れむような言い方だが、顔は笑ってる。まぁそういう顔になるのは解らんでもない。電柱右側二本分の『楽』を手に入れたんだからな。

 だが、中留御はそんな顔してるが、俺は生憎、そんな顔をできやしない。なんか、三回連続荷物もたせちゃって申し訳ないです。春日さん、がんばって!

 俺は首に巻きつけていたタオルでデコを拭いた。タオル持ってきて良かったなぁ……もしタオル忘れてでもしたら、俺は多分目的地近くの路上で『天然の塩』を売っていたと思う。誰も買いやしないだろうが。

「ユーヒ、暇だからしりとり」

 そう言って中留御は『リンゴ』という。中留御、お前は『しりとりスタート』拒絶派か。

しりとりの始まりは『しりとり』からだろう。

「ゴマ」

 俺は頭に閃いた単語を口にする。

「ぶーーーー!!ユーヒの負け〜」

「何でよ!?」

 即座に俺は負けてしまった。いや、理解できん。ゴマの何処に『ん』が付いているんだ?

「ったく、なんだよ…じゃぁゴリラ」

「ぶーーー!!ユーヒ二連敗〜」

 また負けてしまった。いや待て、おかしい。ゴリラの何処に『ん』が付いているんだ?

「ちょっとまて中留御。お前の頭の中のしりとりって奴は何でもかんでも最後に『ん』をつけるのか?脳内で。だとしたらもう一度、幼稚園児からしりとりを習って来い」

 俺は中留御を指差して、適当な方向に指を持っていく。

「何よ、しりとりって言ったら前の人の答えを言って、自分の言わなきゃ負けに決まってるじゃない!」

 つまりは『記憶しりとり』か。それだったら最初から『記憶しりとりするわよ』とか『前の人の回答を言ってから』とか言え、このやろう。凡人は『しりとり』といったら次々に言葉を重ねていく奴だと理解するのが普通だと思うが。

「あーじゃぁさっきの負けはナシな。リンゴ、ゴマ」

「負けは負けよ。歴史でも『アレがなかったら』とか通用しないじゃない!」

 お前はそんなに俺との勝負の勝ち星が欲しいのか?というかジャンケンと歴史を一緒にするな。

「はい、次春日ちゃん」

 そう言って中留御は春日さんも巻き込む。

「え、ならリンゴ、ゴマ、マスカット」

 そんなこんなでしりとりは続いてゆく……

「リンゴ、ゴマ、マスカット、とうもろこし、しょうが、ガーナチョコ、ココア、あめ、めざし、獅子、醤油、ゆり、リンゴ、ゴリラ、ラッパ、パンダ、ダチョウ、海、ミント……」

 人の記憶って結構凄いよなぁ…自分で言っておきながら難だが。こういう無駄なところで頭の引き出しをフルに活用せず、もっと訳に立つ事で活用するべきだろう。明日…いや、終わって一時間もすれば忘れるのに。

 ん、何気にやってて思ったのだが、リンゴ二つないか?

「なぁ、リンゴってなんか二つあるような気がしてならないんだが……」

 俺は三人分の鞄を持ってそう言った。

「え、そうですか?」

 春日さんは肩を回しながら首を傾げた。

「ああ、じゃぁ皆で順番どおり言っていこう……」

「リンゴ、ゴマ、マスカット、とうもろこし、しょうが、ガーナチョコ、ココア、あめ、めざし、獅子、醤油、ゆり、リンゴ、ゴリラ……ほら、あった」

 俺は今までの単語を言いながら『禁』ワードを言った犯人も捜していた。中留御、俺、春日さんの順番で当てはめていくと……中留御、お前か。

 どうやら春日さんもそれに気が付いたようで、俺たちは中留御を見る。

「な、何よ……」

 中留御も自分のミスに気が付いたらしく、ちょっと挙動不審だ。普通なら『何やってんだよ〜馬っ鹿でぇ〜』と流すのだが、今回はそうはいかない。実は、ただの暇つぶしのようなこのしりとりも、途中で中留御の意見で、負けた奴が『右側電柱十本分』という恐怖の罰ゲームがもれなく用意されていた。市街での右側電柱十本なら長くても十分から二十分ぐらいで終わりそうなのだが、今歩いてる道は田舎道。トタン壁の農具用倉庫が懐かしい気分にさせてくれる道なのだ。電柱はあるのはあるのだが、一本一本の間隔が長く、市街と違って、右左、交互にジグザグに配置されてあって、この道での右側の電柱十本というのはきつい。しかも緩やかに、少しずつ急になっている道でもあるので、これはさらにきつい。

 よく言うよな『言いだしっぺがよく損をする』と。まさにその通り、ビバ、古代原理法則!!

「ちょっと、荷物そりゃ持つけど、この道で十本は何分かかると思ってるのよ!あんた達には慈悲の心はないの!?私になったつもりで考えてみなさいよ、きついでしょう、ストライキものでしょう!?」

 俺はそんな中留御にとびっきりの笑顔を見せて、親指を立てて『グッドラック』と呟いた。


 結局、中留御は三人分の荷物を持って一時間弱歩いたような気がする。電柱はあるのだが、全て左側だったりと……十本運び終えた中留御は満身創痍だった。

 例えて言うなら、腹痛…いや、腹を下した状態で、無理矢理登山に参加させられ、文字通り『いろんなモノと戦った』顔をしていた。

 始めの方は『やった、ラッキー』という感じで浮かれていたのだが、七本過ぎてからか地形の都合上、右側に電柱が消えた時からなんか可哀想になってきた。『左側もカウントしていいよ』という俺たちの心使いを中留御は見事に『それじゃ気がすまないわ』と女なのだが、男らしく答え、あくまでも右側の電柱のみにこだわった。八本目を過ぎたあたりからか、微妙な角度の坂を上る形になり、さらにきつくなった。俺たちの鞄は、おおよそ遠足には合わない手提げ鞄を三人とも持参してしまったため、肩に掛けたりすることが出来ない。つまりは、手で持つしかないわけで、普通に歩いててもきつかった道を、三人分の荷物、それプラス数を持ちにくい鞄を運んだ中留御にどれだけの負担があったか、想像だにするだけで恐ろしい。

 で、俺と春日さんは今にも疲労で倒れてしまいそうな中留御をいたわるために、右側二本ずつ、交代する形で計六回、十二本ぶん持ってやった。周りのやつ等も疲労がたまってきたのか、今にも倒れそうな顔をして歩いていたが、人の身体って不思議なもので、目的地まであと何キロって標識を見ると元気になるんだよなぁ。

 まぁ、なんとか目的地に着いて、先生の解散の合図を受けて俺は近くに居た松木と早田と昼飯を食うことにした。

「夕日、お前なんという羨ましい事をしてんだ、おい〜」

 そう言って松木は俺の肩を小突いてくる。

「そうだよねー皆可愛い子と歩きたいな〜って思いながら歩いていた中、夕日は堂々と両手に花の状態で歩いてきたんだからね」

 早田はコンビニのおにぎりセットのおにぎりにかぶりつきながらそう言った。そして、中の具が何だったかは解らないが、顔をしかめた。

「俺も『我こそは』って思うからあのクラブ入ろうかなぁ〜」

「おうおう、入ってくれ…というか俺の立場と変わってくれ」

 俺は松木にこの役割を押し付けようとしたが……

「はは、松木〜どうすんのさ、中学ン時の陸上の先輩が陸上部で待ってるんだよ〜」

 どうやら松木と早田は同じ中学、そして同じ部の出身みたいで、先輩がらみで入る部も半ば無理矢理決定しているようなものだった。実に残念だ。

 飯も食い終わって、テレビやゲームの話で盛り上がって居る時に、がさがさと横の茂みが音を立てた。

「こら、阿呆ユーヒ!!こんなとこで油売ってる時間はないわよ!!」

 茂みから出てきた熊…じゃなかった中留御は春日さんと、見知らぬ…いや顔は見たことあるが名前を知らない女の子を連れていた。

「…スマンな中留御。俺はこれから油じゃなくって塩を売る予定だからな」

 そう言って俺は足を伸ばし、そのまま倒れる。そしてタオルを顔に掛けて、いざ行かん、夢の世界へ!!

「何わけのわかんないこと言ってるのよ、さ、立って起きて、皆で付き鬼をするわよ!!」

「あだだだだ…耳を引っ張るな耳を!!」

 俺は夢の世界に旅立つことも許されず、松木早田を加えた六人で付き鬼をすることになった。最初は高校生にもなって付き鬼をするなんて馬鹿らしいと思っていたのだが……いやいや、案外楽しいね!!終いにゃ遊具使って遊んだりもしたさ!

 私用で公園とか広場、そういった所に行く必要がないぶん、こういった機会に思いっきり遊んでおくのも良いと思う。個人的に一人でこんな広場来て、一人で滑り台や雲悌で遊んだりしていると非常にアレだが、こういった学校行事で来て、友人等と童心に返って遊ぶのもなかなか悪くない。松木、早田の言葉を借りれば『オツ』なもんだ。

 帰りは多分この六人で帰るんだろうな。六人でやるかばん持ち、想像するだけで恐ろしいぜ。さて、帰りもあの間のゾーンで中留御に提案してみるか。『ここらで長距離、左側電柱十本分運ぼう』ってな。

時間が取れません〜

一日あと一時間あればなぁ…と切に思う水無月五日でございます!

一ヶ月一話のペースになって微妙に焦り気味です。

最低でも一ヶ月に二回……

って自分に何処までも甘いなぁ。

というわけで、今回も読んでいただきましてありがとうございます!!


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