第三話 運命的な邂逅
こいしは当てもなく旧都を歩いていた。特になにかあったわけでもないが、最近は(と言うよりも瞳を閉ざしてからは)いつもの事であった。
彼女は自分でもとある変化を自覚していた。
少しずつ他人に見られる機会が増えたのだ。原因は恐らく巫女と魔法使い。彼女達との邂逅だろう、と当たりを付けていた。
事実、彼女達と勝負してから感情の起伏が少しずつ大きくなっていた。それは無意識ではなくなる事、ひいては無意識下での行動が出来なくなっていると言う事でもあった。
こいしはまた誰かの前に出るのが怖かった。
こいしはさとりに甘えたかった。
でも、本人を前にすると姿を見せるのが怖くて、無意識に逃げてしまった。
「おや?こんなところに居るなんて。いや、あたしらの前に姿を見せてくれるなんて珍しいじゃないか」
「……?」
声をかけてきたのはヤマメだった。周りを見ると旧都のメンストからは少し外れた、外に向かう橋の近くの様だった。いつもなら勘づかれる前に回避するし、勘づかれたとしても姿を見せなかったつもりだった。でも今の台詞から類推するに、何度か見つかってはいたようだ。
「黒谷…ヤマメ…?」
「お?あたしの名前も知ってたのかい?…と言うよりそんなに可愛い声を出すんだね」
彼女は驚き半分、感慨半分と言った感じで答えた。そう言えば久しぶりに会話をした気がする。相手の名前を呼んだだけなのに少し喉がひりひりしている。この前巫女たちと戦った時は叫んでも大丈夫だったのに…。とそこまで考えて叫んだ所為で喉を痛めていたのかも知れない。と思った。
「……」(こく)
少し頷く。これは名前を知っていたことに対する肯定の意味で。
「逃げないのはあたしだからかい?それとも、何か変化でも?」
「……?」(そう言えば何故彼女と対話しているのかな…?)
「んー。自分でも分かってないのかい?」
「きっと、両方。」
「ん?」
「貴方は積極的だからってのもあるのかな?」
そう言って首を少しかしげる。少しずつ声を出しても痛くなくなってきた。
「…。随分と少女的な動きだね。あ…っと、名前で呼ぶよ?」
「うん」
「こいしはもともと明るい子なんじゃないかい?」
「昔は、そうだった」
「……。」
「話、聞いてくれる?」
「あたしでいいなら、いくらでも」
こいしは自分でも気が付かないうちに自分の過去を、自分が心を閉ざした訳を打ち明けていた。きっと少し心が開き気味だったところにヤマメが不躾でないように、こいしの内面と対話したからだろう。
「……それで、今こいしはどうしたいんだい?」
「どう…って…?」
「このままがいいのか、自分一人でこの旧都の中に溶け込みたいのか、地上に出たいのか、――元いた場所に帰りたいのか。それは自分で決める事じゃん?」
「私は…おねえちゃんと一緒にいたい…。」
「ん。分かった。あたしも協力するからさ、前みたいに一緒に居られるように頑張ろう!」
「うん…!」
こうしてこいしはヤマメと言う協力者を得て、「無意識から出る」決意をしたのだった。
どうも、みなさん。
四日ぶりにログインしました、紀璃人です。
作品には関係ないのですが、
依然として修羅場は(宿題は)終わりが見えません。
恋し。を更新するのは六日ぶり?でしょうか…。
宿題がかなり行き詰って、気分転換に小説を書こう。そう思ったんですが、書けませんでした。よく見たら恋し。の三話がそこそこ書いてあったので加筆修正して相まみえた次第です。
現在、ちょっと外出した隙に筆箱が無くなりまして、筆記用具がないです。大変に大変な事態です。
文法がおかしくなるぐらいに大変です。
…ホントに作品に関係なかったですね。
活動報告でやれよ。って感じではありますが(笑)
何はともあれ、弾丸と恋し。の二作品に次回更新は依然として未定です。
ご迷惑かけますが、必ず再開したいと思いますので、その時は再びご愛読いただければと思います。
あとがきで長文失礼しました。